週5で昼寝できるとか神?!
ある日の夜、2人はミナトの件でメッセージをやり取りしていた。
ツバサ(エンジニア):
(個別チャット)ミコト、やっぱりさ…ミナトの就職、そろそろ本気で考えなきゃヤバいと思わない?
ミコト(探偵):
(個別チャット)同意。就職しないと、生活も将来も詰むわ。恋愛とかの話にすらならない。
ツバサ:
(個別チャット)……でもあいつ、相変わらず脳天気すぎて、危機感ゼロなんだよね。
ミコト:
(個別チャット)まったく。むしろ、「週5で昼寝できるとか神」って昨日も言ってた。
ツバサ:
(個別チャット)もうダメだこの男…(笑)でも、就職すればちょっとは成長すると思わない?
私たちが導いてやるしかないか…
ミコト:
(個別チャット)私も同じこと考えてた。共同作戦ね。
ツバサ:
(個別チャット)了解。ミナト、社会復帰大作戦、始動!
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<グループ通話開始>
ミナト(無職):
「やっほー!今日もニート満喫中のミナトでーす!」
サクラ(アーティスト):
「いいなぁ、私も一週間くらい寝てたい…。でも昨日、紙粘土食べかけた…」
カナデ(アナリスト):
「サクラ、なんでそんなことになったの?」
サクラ:
「なんか、スイートポテトに見えたの…。甘くなかった…」
ミコト:
「本題に入るわ。ミナトさん、就職する気はある?」
ミナト:
「うーん。気はあるよ?でもさー、俺が働いたら、みんなと昼間話せなくなるじゃん?」
ツバサ:
「いや、働かないと普通に生活できないから。今も昼休みだしミナトと話せるの」
ミナト:
「でもなー、通勤電車とか、無理ゲーじゃない?人多すぎるし」
ミコト:
「ならリモートワーク可の職探せ。終わり」
カナデ:
「ミナト、あなたのスキルセットをベースに職種を分類してみたんだけど、ゲームテスターとか動画編集補助とかなら可能性あるわ」
ミナト:
「おおっ、なんか俺、ちょっとできそうな気がしてきた!」
サクラ:
「えらいっ!じゃあ今日はミナト、履歴書を書くの会?」
ミナト:
「や、やっぱ明日からにしよっか!」
ツバサ:
「逃げたな」
ミコト:
「またか」
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ツバサとミコトの作戦会議・再び(個別チャット)
ミコト:
(個別チャット)段階を踏もう。第一ステップは、職業意識の植え付け。
ツバサ:
(個別チャット)同感。じゃあ今日は、「働くことの素晴らしさ」プレゼン大会をやらせる?
ミコト:
(個別チャット)いいアイデア。本人にも何か話させることで、ちょっとでも考えるかも。
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<グループ通話・続き>
カナデ:
「ところでみんな、ミナトに『働くとは』をテーマに一人ずつスピーチしない?ゲーム感覚で」
サクラ:
「わー、やるやるー!」
ツバサ:
「よし、じゃあ順番決めようか」
ミナト:
「えっ、俺もやるの!?」
ツバサ:
「当然でしょ?」
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サクラ:
「はたらくとは……朝の電車にぎゅってされながら、パンをかじって、ついでに夢を追うことです!」
カナデ:
「現実的には、安定した生活を維持するための手段。自己実現とのバランスがカギね」
ミコト:
「社会的責任を果たしつつ、自分を強くするプロセス。働くことで、視野が広がる」
ツバサ:
「価値の交換。自分のスキルや時間を提供して、報酬を得る。それを自分や大事な人のために使える」
ミナト:
「うーん…働くとは…毎月ちゃんとお小遣いもらえる、いい感じのシステム…?」
全員:
「……はぁ~~~~~~~~~~」
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後日、カフェに集合。
ツバサ:
「というわけで、今日はミナトの履歴書チェック会です」
ミナト:
「ひぃぃ、ほんとにやるの?」
ミコト:
「逃げても意味ない。人生のためよ」
サクラ:
「がんばれー!チョコレートあげるから~!」
カナデ:
「じゃあまず、自己PRの欄を見せて」
ミナト:
「『人と話すのが好きです。昼寝も得意です』」
ツバサ:
「ふざけたら秒で落ちるからな?」
ミコト:
「『昼寝』は削除。それは特技じゃない」
ミナト:
「えー…じゃあ何書けばいいの?」
カナデ:
「高校の文化祭でイベント司会やったでしょ?あれ、対人スキルの実績として書ける」
サクラ:
「あとあと、私が寝坊したときにフォローしてくれたのも書こう!」
ミナト:
「なんか…みんな、俺のことちゃんと見てくれてんだなぁ…」
ツバサ:
「……あんたがちゃんとすれば、私たちもっと楽になるのよ」
ミコト:
(目を伏せながら)「…そう。あんたの将来、どうでもいいわけじゃないのよ」
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別れ際、ツバサとミコトの2人きり。
ツバサ:
「ねえ、ミコト…もしミナトが就職したらさ、私…気持ちに素直になろうと思うんだよね」
ミコト:
「……そっか。じゃあ、私も本気出すしかないわね」
ツバサ:
「…負けないよ」
ミコト:
「私も」
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数週間後、ミナトからのメッセージ。
ミナト:
「やったー!動画編集のアシスタント、採用された!!明日から初出勤だって!」
<全員集合:祝賀会>
サクラ:
「ミナト就職記念ケーキ!カナデがデータから最適な味を選んだよ!」
ミナト:
「ありがとうみんな!俺、ちょっと大人になった気がする!」
ミコト:
(ミナトの後ろ姿を見つめながら)「……まだ間に合うかな」
ツバサ:
(心の中で)「やっとスタートライン。ここから、勝負だよ」