歓迎会
私は白井音色
2年間、超絶ブラック企業に勤めてきた。
しかし、心身共に不調をきたしたため、退職を決意した。
私は、約1年間の療養期間を経て、ホワイト企業で有名な「真っ白カンパニー」に転職した。
「え、歓迎会ですか?」
「うん、今度の金曜日に、社のみんなで白井さんの歓迎会をしたいんだけど…… 予定はどうかな?」
私の指導を担当している渡辺さんが尋ねてきた。
(歓迎会かぁ~)
私は以前勤めていた会社の歓迎会を思い出していた。
……
……
……
『歓迎会は、君たちを歓迎する場ではない……』
私達を指導していた幹部社員が言った。
『新入社員は、全先輩社員にお酌をして回りなさい。社内の人間に顔を覚えてもらうこと、先輩社員の話を聞き学べることは学ぶこと、それがこの歓迎会で大切なことです』
(おお~、なるほど~)
当時の私は素直だったため、言われた通りに頑張った。
セクハラされたり、長話に付き合わされたりもしたが、自分の名前を覚えてもらうことが出来たと思っていた。
しかし、翌日会社に行くと、「お前」とか、「おい」とか、しか呼ばれなかった……。
また先輩社員の話も愚痴ばかりで、参考になるものは何もなかった。
……
……
……
(嫌な思い出しかないなあ~ 初めての週末だし、『予定があるので……』て断っちゃおう)
「すみません、その日は予定があって……」
すると、渡辺さんは険しい表情をして、社長室に向かった……。
(え、え…… 直接社長に報告!? もしかして、嘘がバレた……)
すると、社内SNS に社長から全社員向けに投稿があった。
社員の皆さん
金曜日に予定していた白井さんの歓迎会ですが、夜は白井さんのご都合が悪いようです。そのため、金曜日の業務はお昼までにし、みんなで高級お寿司を食べにいくことにしました。白井さんのご入社を盛大に歓迎しましょう。
社長
(え、え? 『歓迎会』が本当に『歓迎会』だ…… 私、歓迎されている……
ま、まさにホワイト!
いやいや、駄目! 音色、騙されてはダメ!! きっと、『高級寿司に払った分のお金はタダで働け!』って、言われるに決まっている……)
……高級寿司、おいしかった~
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