休憩
私は白井音色
2年間、超絶ブラック企業に勤めてきた。
しかし、心身共に不調をきたしたため、退職を決意した。
約1年間の療養期間を経て、私は「真っ白カンパニー」に転職した。
雇用契約書には、休憩1時間と書いてあった。
以前の会社では、休憩時間がほぼゼロだったため、私は「休憩1時間」を幻想だと思っていた。オフィス街でのランチなんて、どこの異世界の話だろうと思っていた。
……
……
……
『休憩入ります』
私は、ゼリー飲料の蓋を開け一気に飲み干す。
『休憩終わりました』
1分も無かっただろう……
それが、以前の会社での休憩だった。
長く休憩を取ろうものなら、上司から嫌味をいわれ続けた。
『あれ? 午前中に終わらなきゃいけない仕事も終わってないのに、休憩とるの?』
そう言って、大量の仕事を急がせた。
周りは自分のことで精一杯で、オフィスは孤独な戦場だった。倒れようものなら、その分の仕事が周りの負担になる。また、倒れたり気絶したりした時間は休憩時間として扱われる。
……
……
……
「じゃあ、白井さん。休憩にしましょうか」
私の教育担当の渡辺さんが言った。
「はい」
私はそう言って、鞄からゼリー飲料を取り出した。
「ちょっと!! 何、それ!?」
渡辺さんが眉間に皺を寄せながら言った。
(え、まだ駄目だった……? 午前中の業務は終わったはず……)
渡辺さんが急いで電話をかけた。
(え、え、何、何なの~?)
そして、私はビュッフェレストランに連れて行かれた。さっきの電話は、すぐに入れるかを確認してくれたものだったらしい。
「1時間あるから、好きなだけ食べなさい。若いんだから、しっかり栄養摂らなきゃ」
(しっかり休憩時間が取れるなんて……。しかも、幻の『オフィス街でのランチ』
ま、まさにホワイト!
いやいや、駄目! 音色、騙されてはダメ!! きっと、『食べた分は馬車馬のように働け!』って、言われるに決まっている……)
「それに、しっかり休憩を取らなきゃ、業務でのミスも増えるから……」
渡辺さんがそう言った。
「た、確かに……」
(『ミスが増えるから、他の人がフォローすることになり仕事が増える』 ブラック企業って、頑張ろうとするあまり悪循環を生んでたんだな……)
今更ながら、納得した。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
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