ノルマ
私は白井音色
2年間、超絶ブラック企業に勤めてきた。しかし、心身共に不調をきたしたため、ホワイト企業で有名な「真っ白カンパニー」に転職した。
転職してから数日後、私は気づいた。ホワイト企業では燃えられないということを……。だから、私がこの会社を立派なブラック企業にしてみせる!!
(あ~あ、中々、見つからないものね…… 『ブラック企業の種』が……)
私がそんなことを考えながら、会議室の前を通ると怒号のような声が聞こえた……。
「どういうことだ、中村君!? 今月の契約が10件じゃないか!!」
私は、会議室のドアをそっと開け、隙間から中を覗いた。すると、「中村君」という男性社員が上司から、叱責を受けているようだった。
(う~、来た、来た! 『ブラック企業の種』が……。 『ブラック企業あるある きついノルマ』だわ。以前の職場でもあったなぁ…… 『吊し上げ』が……)
私は以前の職場でのことを思い出していた……
……
……
……
『おい、田中!! どういうことだ、今月の契約が3件だなんて!?』
課長が田中さんという男性社員を叱責した。
『は、はい。すみません……』
田中さんが謝罪する。
『すみませんじゃあないんだよ!! 今月の目標契約件数、何件か分かってんのか!?』
『は、はい、20件です……』
『残り17件、どうすんだ!?』
『ど、どうすれば……?』
『そんなの自分で考えろ! 休日出勤だろうが、何だろうがして、目標契約件数を必ず達成しろ!! お前に足りないのは熱意だ。客にその熱意を伝えろ!』
具体的なアドバイスもなく、精神論で訴えかけていた……。
……
……
……
話は今に戻り、私はワクワクしながら、会議室内の様子を窺っていた。
「じゅ、10件も契約するなんて、スゴいじゃないか!」
(え?)
「おお~」
パチパチパチパチ……
周りにいた社員達が声を上げ拍手した……。
(え、何? 褒められてたの……)
「では、中村君から、みんなに具体的にどうやったかを共有してもらおう」
(な、中村さんを称賛する会議だったの…… ま、まさにホワイト!!)
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