面接
私は白井音色
2年間、超絶ブラック企業に勤めてきた。
しかし、心身共に不調をきたしたため、退職を決意した。
約1年間の療養期間を経て、私は1件の求人に応募した。
そこは、ホワイト企業で有名な「真っ白カンパニー」だった。
今日は、最終面接の日
役員の方々が直接面接を行う。
「うちは、アットホームな会社だから、社員のみんなは家族だと思っています。だから、困ったことがあったら、いつでも言ってください」
真っ白カンパニーの社長が言った。
(で、出た!『ブラック企業あるある』 アットホームを謳う会社は、絶対ブラックだ…… 以前の会社もそうだった……)
私は、以前の会社の採用面接を思い出していた。
……
……
……
『うちはアットホームだから、困ったことがあったら何でも言ってね』
面接でそう言われたことを覚えていたため、業務で分からないことがあって先輩に尋ねた。
『はぁ、そんなこと自分で考えろよ! 俺が新人の頃は……』
無駄に長い説教が始まった。
その上、自分で考えて行動すると
『何で、相談しなかったんだよ!?』
と怒られる始末……。
……
……
……
私がそんなことを考えていると、面接会場の扉が開き、若い男性社員が入ってきた。
「お父さん、あ、スミマセン。部長……」
(あ、アットホームだ…… 上司を『お父さん』と呼び間違えるくらい、アットホームだ…… いやいや、音色…… 騙されては駄目!)
その若い社員が続けて言った。
「この書類の書き方が分からないんです」
(え? 今、面接中だよ? この人、何を考えてるんだ……。さすがに、これは怒られるでしょ)
「ああ、この書類はね……」
部長と呼ばれた男性が書類の書き方を教え始めた。
社長が強張った顔をしている……。
(で、ですよね……、さすがに怒りますよね)
私がそう考えていると
「広島君、一体、君は何をしているんだ……」
社長が若い社員(広島君)に言った。
(や、やっぱり、怒鳴っちゃう? きゃー、『広島君』かわいそう……)
私は、固唾を飲んで見守った……
「手書きの書類なんて、大変じゃないか! 部長、すぐに電子化にしましょう!」
社長が言った。
「ありがとうございます、お爺ちゃん……あ、社長」
広島さんが言った。
(『アットホーム』&『分からないことがあったら、いつでも言って』は、本当だった……
ま、まさに、ホワイト!
いやいや、ダメダメ!! 音色、騙されてはダメ。会社って、そんなに甘いものではない!)
後日、私の元に無事採用通知が届いた。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
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