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フォニィ 8話 




結局。何でも屋の骸骨ジジからも魚屋の叔母さんからも

大した情報は得られなかった。


ますますフォニィはどうしていいものか分からなくなった。

そして再び一人になる。


ジジは飯も飲み物もくれなかったので腹は減ったままだし

喉がカラカラで一刻も早く何か飲んで喉を潤したくて仕方なかった。

リュックの中の水筒を見ると空だった。


近くの商業区画まで足を伸ばす。


日はまだ高い。朝はひんやりとしていたが、

歩いていると陽射しが強くなって来て額にじんわり汗が浮かび始めた。

それが玉のような汗になって鼻の上にも浮かび始めた時に

サンドイッチや飲み物が売っている商店を見つけた。


ほんの少しだけどお金はある。

あの「ドブ穴」から持ち出した現金も。少しくらい使っちゃおう。

店に入る前に横のタバコ屋の壁に貼られている掲示板に目がいった。


張り紙が貼ってある。


人の絵。

見覚えのある顔。姿。


==

カーキ色のインバネスコートを着た少年。

殺人の罪で指名手配。異名あり【ホームレス殺し】----dead or alive

==


驚愕。思わず声が出そうなほどだった。

まるで時が止まったようで現実味が無い。

指名手配? 殺人?


何を言ってるんだよ!

意味が分からない。意味がわからない!

何で僕が……


記憶がふと呼びが得って来る。あの時アイツが何処かに連絡していた。

宝石屋の男が… 警察に? 

あいつが警察に僕がやったと言ったの? ふざけるな! 

アイツこそ絶対悪い奴なのに!


あまりの理不尽さに怒りが湧く。


警察は何をやってるんだよ! 

この街の警察は本当に全くあてにならない!


それに昨日教会で見た男。そうだ! 神父といた男は警察の偉いやつかも!

汚職警官と話してるところを見た事がある! 汚職警官がおべっかを使ってた。

アイツがおべっか使うなら偉いはずだ。


でも意味がわかんない。何で僕が指名手配されてるんだ。


濡れ衣を着せられた? クミ爺の殺人の?

いや違う。クミ爺は病死だって警官達は言ってた。

途中から殺人に変えるなんてさすがに無いだろう。

他のホームレスも殺されてる? それの濡れ衣を着せられてる?


それに【ホームレス殺し】と呼ばれてるだって!? 何を言ってるんだ…

そんな異名なんて僕にあるわけない。誰がそんなの作ったんだ。

誰かが僕の異名をわざわざ作った?


やっぱり意図的に濡れ衣を着せたんだ……

いよいよ警察は信用できないぞ! アイツらは僕に異名なんて無いのを知ってる…

わざわざ警察が作ったんだ……


にわかにフォニィの脚はガクガクと震えそれは腕にまで伝染した。

恐る恐る周囲を行き交う人々を見る。


気づいていないよね?

多分… 気付かれたらヤバい。特にdead or aliveなんて。

懸賞金が出るやつ。街の不良連中だって賞金目当てに何をしてくるか分からないぞ。


アイツらこそヤバい奴らだ。


ここから離れなきゃいけない…

買い物なんかしている場合じゃないぞ。

入店し急いで飲み物を買って踵を返し店を後にする。



+++++++++


街を歩いていると通行人が気になって仕方なかった。

特にキョロキョロしてる人間を見ると

自分を探してるんじゃないかという気がしてしまう。


先ほどから不良たちや警官達をよく目に入って来て安心できない。


どうしよう。南地区から離れたほうが良いかも。

一度ここから離れて東地区にまで足を運ぶ。

少し汗ばんでいた肌はノーホープ・(イースト)駅前に着くころには

流れ出るように汗を噴き出していて着替えたいくらいだった。


途中コンビニでサングラスを買おうか迷った。

が、その前に張り紙などが無いか注意してみる。

特に無かった。



そう思った時。15歳の僕が心の中に

突然出て来て近くで(たむろ)している若者の手元を見ろと言う風に指を差す。


愚連隊のような奴らが紙切れを手に持っている。

あの掲示板に貼られていたのと同じものだった。

お尋ね者の【ホームレス殺し】


僕を探してる? 嘘だろ? なんで!?

今までこの街で殺人犯を捕らえるのに

ここまで躍起になる事なんて見た事ないのに。



あまり人気が多い場所にこれ以上いたくなかった。

新しい住処を探しに行こう。夜寝泊まりする場所が必要だ。


南の山の麓まで行かないくらいの所にある廃墟。

幽霊が出る噂のある廃墟に向かう。


あまり長いこと住処を探していられないし

最悪ここに寝泊まりするかもしれない。

まずは住処に出来そうか確認しなきゃ。


徒歩で1時間ほど歩いただろうか。廃墟近くの公園についた。


もうすぐ夕方だ。

水道でのどを潤しリュックの中から水筒も取り出して

水を汲んでいると妙な匂いが漂ってきた。


公園のベンチの辺りに何人かいた。

フォニィよりも少し年上だろう不良少年たちだった。

大体18歳くらいだろうか。フォニィからすれば立派な大人だ。

3人いる。


逃げやすく動きやすそうなジャージに

武器を隠し持つのに適していそうな上着。

刃渡りの長いナイフを持っていそうだった。


ここの住人何て大体皆武器を持っているけれど…

こいつら普通より準備万端って感じだ。


何か独特な匂いのする煙草を吹かしていた。良く知らないが薬物だろう。

よくみるジャンキーもこんな匂いのモノを吹かしている時がある。

暗黒街の端っこの方であるここにも不良少年たちはいる。


クミ爺はノーホープ中央繁華街よりも威勢がいいのが

ちょこちょこ郊外には居ると言っていたことを思い出す。


フォニィの方を彼らは見ていないが警戒した。

自分は今一人。それに体格だって大したことは無い。

そもそも暗黒街の不良などはフェアプレイな精神などないので

体格など気にする奴はいないけれど。


数と武器と報復の可能性だ。彼らが気にするのは……


勿論彼らは化け物でも人食いのお化けでもない。

姿を見られたら問答無用でカモにされるわけでは無い。

ただ気分とタイミング次第では稀にそのようなことも起こるだけだ。


そしてフォニィはいつになく緊張していた。


お化け廃墟の背の低いビル群の状態を確認したいけど。

あの不良少年たちの横を通り過ぎないと遠回りしなければならない。

引き返して回り込んでいこうと思ったがもう勝手に足が歩き出していた。


もう、仕方ない。そのまま突っ切ろう。


そして横切って歩いていくと背後のベンチから人が立ち上がったような音がした。







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