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フォニィ 7話



よし! これで今までの自分とは印象が違う姿に成った!


次は何をすればいい? 決まってる。犯人捜しだ。 


クミ爺を殺した奴を見つけて…

見つけてどうするんだよ。

それに怪しい奴はもう見つけて。

その上そいつに見つかっちゃったんじゃないか! 

挙句の果てに形見の本まで盗まれて!


            

あの男… 宝石店の男。

何時も宝石店が角にある交差点で店外で人と話してるのをよく見かけた。

昔あそこの交差点の近くで配達の手伝いをさせられたことがあったから

よく覚えてる。


しかしあの男が本当に犯人なのか?

あの化け物の死体と何か関係してるのは間違いなさそう。

あの建物もアイツの持ち物? 神父は何故か自分を犯人だと言っていた。

噂の出どころはアイツ?


何も分からない。

ただ漠然と捜査を続行しなければならないと思った。

やるべきことは…


*姿を変えること。見つからないように。ーーDONE!完了!

*犯人を見つける。

*本を取り返す、クミ爺の形見。


服の問題は解決。住処と食事。犯人探しをしながらその二つの問題も解決しなければ…

食事は今までと同じ場所ではもらえない。

良く通っていた物乞いスポットは嫌でも顔見知りが多い。

服装を変えて殆ど会話はしなくともフォニィだと気付かれるかも。


もういつもの場所には戻らないほうが良い。

だから物乞い以外の方法が必要なのだ。


住処はどうするか。正直近場で似たような暮らしはしたくない。

あの財宝の場所「ドブ穴」、山の麓にある防空壕、もしくはその近くの廃墟にいこうか。

廃墟は幽霊が出るって噂があった。正直怖いし行きたくないけど。

防空壕の所はもっと怖い雰囲気だし。


そこまで考えた時に少年のお腹がグゥと鳴った。


やばい、そういえばもう半日近く食べてない。


昔フォニィは栄養失調になって大変だった。

自分で調子が悪くとも本格的にマズイと思った時にはもう遅かったりするのだ。

あの時はクミ爺が助けてくれた。食べ物のことも。

そして筋トレや陽の光をちゃんと浴びることの重要性もクミ爺が教えてくれた。


思い返すと自分が知っていることはクミ爺が教えてくれたことだらけで

感謝の気持ちが沸き上がって来た。思わず涙が溢れてきたが泣いてても仕方ない。


どうしよう。もう物乞いはやらないほうが良いかも。

フォニィはそれ以外の食べ物の得方をほぼ知らなかったので困ってしまった。


そうだ。クミ爺の知り合い。

山の麓の方に何でも屋の爺さんがいたはずだ!

まずは爺さんを探して交渉してみよう。




「何でも屋のジジ」


骸骨に人の皮を張り付けたような痩せぎすのアジア人の爺さん。

年齢は不明。70ほどだろうか。

肌は日に焼けていて恐ろしく黒い。

表情は常に陰鬱としておりこの世を呪っているかの様だった。

それが何でも屋のジジに対しての印象。


クミ爺は骸骨ジジイと彼を呼んでいた。会話しているところは何度か見たけれど

何でも屋のジジは恐ろしく無口な人でフォニィは会話したことは無い。

凡そ必要なこと以外喋る口を持ち合わせていない爺さん…



暗黒街市の端っこを徒歩で南方面と急ぐ。

南のスーパーの近くの駐車場で

丁度清掃用具を片手に歩いているジジを路上で見つけた。


この近くの寂れた商店街を掃除しに行くのだろう。

このジジは定期的にいくつかの場所の清掃をしてる。


相変わらず恐ろしく話しかけづらい。何を話しかけても平気で無視されそうな感じ。

断られたり無視されたりしたらどうしよう…

やっぱり怖いな。と少年は思って少し胃が痛くなった。


「あ、あの…」


無視。


「あの、あの!」


無視。


「すいません!!」


一気に声のボリュームを上げてジジの前に立ちふさがると

ジジは眉を片方だけ上げて


ーあん?


とだけ言った。もしも下らない話だったら呪ってやるぞ! 

と言い出しそうな顔。


どうしよう。本当の事を言ったほうが良いだろうか。

いやこの爺に話かける大人などクミ爺以外見た事がない。

話してしまおう。


「あの、クミ爺の知り合いなんですけど。」

「……」

「えーと…」

「そっちいくぞ。」


クミ爺の名を出すと近くの家を指さしジジが動き出す。

ついて行くとどうやらジジの家らしい。

手入れのされていない庭は雑草がぼうぼうであったが日当たりは良くて暖かかった。

白いボロボロのテーブルがありそこに腰を降ろす。


「アイツがどうした…」

「死んだ。知ってる?」

「ああ… そんで?」

「えっと、爺が殺された場所、テントの近くで男に追いかけられた。

そいつが関係してるかもしれないけど。警察に行っても守ってくれるか分からなくて。」

「無理だな、ここの警察は何も守らない。

目の前で起きた事には対処するかもしれんが。追いかけられたって、どういう奴だ…」

「中央の街の交差点の宝石屋の辺りで見る男。いい服をバシッと着てる奴。」

「……あいつか。何も通報するな。大人しくしとけば問題ねぇ。」

「でも追いかけられちゃったしアイツの仲間みたいなのに僕の格好とか教えてたんだ!」

「……何でだ。お前何した。」


ギクッとした。

ジジは憎しみが込められているように

見えるような泥のような目でこちらを睨む。

そこでクミ爺が殺された場所の裏の建物の中に入ったら化け物のミイラがあったこと。

音を立てたらそいつが入って来てナイフを抜いて追いかけてきた事を何でも屋のジジに言った。



「いいか。アイツは多分人攫いだ。アイツが人攫いと一緒にいるのを何度も見た。」

「人攫い……」

「全て忘れて生きろ。お前姿をちょっと変えたな。

それならあっちも躍起になっていつまでも探さんだろ。離れたところで口をつぐんで生きろ。」


この話は終わりだ、そう言って何でも屋のジジが立ち上がった。


「ちょっと待って、なんでクミ爺が殺されなきゃいけなかったんだよ。

攫われてないだろ? 人攫いは路上生活の老人なんて狙わないだろ?」


ー事情何て知らねぇ。攫う場合も殺す場合もあるかもしれねぇ。それにクミの死体は何処だ?

ただクミは殺される理由は十分あるやつだ。


殺される理由がある? 初耳だった。そんな話は。

その言葉に反応し理由を尋ねてもそれ以上骸骨ジジイは何も答えてくれなかった。


「面倒ごとを持ち込むなら帰れ。俺を巻き込むな。」


陰険な顔つきは更に不機嫌さを増しているように歪んでいた、


「待って! あの化け物の死体は? アレは一体何だったの!」

「知らんわ、もしかしたら悪魔かもな… 」

「悪魔?」


ーこの街はなぁ、悪魔が住む街なんだよ。今日の事はいわんどいてやる。

ここに二度と来るなよ。


そこからはジジは帰れの一点張り。

結局帰るしかなかった。だけど

ジジの家を出てまず思ったのは何処に帰ればいいんだよ! だった。



ジジの家から途方に暮れながら出ていくと、近くの魚屋の店員の叔母さんが話しかけてきた。

ジジに早く魚屋の壊れた冷蔵庫を取りに来て欲しいとのこと。

知らないし、ジジとは親しくないと言うと、何故か呆れられた。


そんなことも出来ないの? と言う具合に。

うん、ちょっと元気ないんだ。と言うと何故か納得してくれた。

元気が無い時を経験したことが無い人はいないからかもしれない。

逆にちょっとこに人に聞いてみようか。


「あの、気になる噂があるんだけど。」

「ん、何?」

「ここは悪魔の住む街って……」


魚屋の叔母さんの雰囲気が変わった。

人の良さそうな恰幅の良い叔母さんだと思ったが蛇のように冷たい眼をする。


「それ、誰から聞いた?」

「え、何で?」

「ん、いや。別に大したことじゃないよ。」

「知りたいんだ。」



叔母さんはその話には興味なさそうにして、


「いい? アンタよそ者じゃないだろう? 

もしさっきジジにその噂を吹き込まれたなら信じないほうが良いよ。」

「…別にジジじゃないけど。」

「どちらにせよ、あのジジの話は何も信じちゃだめよ。」


どういう事? と聞くとここだけの話と言いながら。

年寄りたちの間では有名だよ。あの爺さんは頭が狂ってるってね。


僕からすれば、この街の住人の殆どが狂ってるよ!

そう叫んでやりたかったが、そんな元気は自分には無かった。




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