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フォニィ 13話 終話 PHONY



なんでアイツがここで縛られてるんだよ!


「くそ!」


つい言葉にしてしまった!

が、男は此方を向かない。意識が朦朧としているようだった。

どうする? やばい、良い考えが全然浮かばない。


偽物? こいつはアイツの? それとも…


どうする?


少しの間立ち尽くして。

ナイフを内ポケットから取り出して男の拘束を解いていく。


ーあ、う… 誰だ…


どうしよう。会話したくない。見られたくない。

無言で拘束を解いて目隠しだけそのままにしてここから出て行こう。

最後に耳元で。


ー早く逃げろ


とだけ言い放って母屋から出ていく。

母屋の玄関から出た時。敷地に車が入って来てしまった。


アイツが帰ってきちゃった!


急いで物陰に身を隠すが、見られた?

……分からない。

どうする? やばいやばい。


ここから何処かに移動して…


ていうか、あの男はどうなるんだ。

目隠しも取ってないし、弱ってる。直ぐに掴まっちゃうだろう。

それに誰かが忍び込んでアイツを助けたのは絶対ばれちゃう。


乱暴に車が停車して男が出た瞬間

怒声を上げた。こっちを見てる!


ー出てこい、糞餓鬼。何してる!


その時、上空から殺し屋店主の頭に翼で打つようにカラスが襲い掛かった。


鴉だ! あの時の!


僕を助けてくれてる? 

男が空から襲ってくるカラスを追い払うために

上を向きながらくるくると回る。


鴉が飛んでくる方向を探している。


今のうちに男の足を【見えない手】で引っ張る!

男の足が一気に頭の位置まで持ち上げられ

男が倒れ込んで地面にしたたかに頭を打ちつけた。


カラスに親指を立てながら逃げ出す。

カラスは一瞬カァと鳴いて空からついて来る。


「でかしたぞ!」


あとでまた何か上げなきゃ! 

と思いながらもあの男が気になった。


今のうちにさっさと逃げろ!

手のひら大の石を放り投げて

母屋の窓ガラスを割る。


ガシャンと音がした後すぐにその場を離れる。

キャンディ家の1階が見える場所に行きたい。

坂の上のアパートの屋上へ上る。


カラスが肩に乗って来た。頭を撫でてから一緒に見守る。


転倒した男は気を失っているのか、中々起きてこなかった。


母屋の玄関の扉が開き、アイツが出てきた!

かなりフラついてる。

朦朧としながら外へ出てきて倒れている

殺し屋店主に気が付いた。


奴のベルトを取って手を拘束しだした。

車の窓ガラスを石で割って中から携帯を取り出し

何処かへ連絡し始める。


何処へ駆けてるんだ? 警察?


暫くすると、黒い車が3台も来て店主を車に入れて何処かへ行った。

男は入れ替わるようにその場からふらつきながら立ち去った。

どうしよう。アイツを追うか。

ここでこの大人達が何するか見守るか。どちらも気になるけど…


宝石屋の仲間らしき他の大人達は家の中へ入り込み始めた。

警察みたいな雰囲気だが服装は作業服みたいな感じ。

何のグループなのかが分からない。

でもハッキリとしてるのは汚職警官達と全然表情が違うことだった。





結局、あの大人たちは何だったのか分からず

カラスと共に宝石屋に向かった。


宝石屋とレストランがある交差点。やはり霧が少しでているからか

店の外には人気自体が無い。


横断歩道の前で信号が青に変わるのを待っていると

女の人が歩いて来て自分の横に立った。

何となく横を見ると目が合う。


赤毛を纏めていてキャップを被ってる。

緑のジャンパーを着たお姉さんだった。

目が合うとニカッと余裕を感じさせる笑み。


ネコのような顔。いや豹みたいといってもいいかも。

アーモンドの形の眼が綺麗で

猫ぽさのある顔立ちに良く似合っていた。


僕を見る表情は

年上の兄弟などが弟をよくやった!

と言う時の表情の様にも見えた。


少しおどおどしながら目を逸らす。

はやくここにいたはずの宝石屋の男を確認したいんだ。


ーおい、少年。面白いもの見に行こうとしてない?


「え? いやしてないけど……」

「本当に? 今から大捕り物が見れるよ?」


「大捕り物?」

「まったく! アンタがやったんでしょ? 

丁度キャンディ屋から出て来る所見てたからね。」


え? このお姉さん誰?

何時からつけられてた? 動揺して足がガクガクする。

もし悪い奴の仲間だったら…


「大丈夫。心配しなくていい。ほらアレ。アンタが助けた男。」


女が目を向けたほうを見ると、宝石屋の前に例の男がいて。

先ほどよりも足取りが確かになっているあの

「助け出した宝石屋の男」がもう一人の「そいつに似た男」の

前までぐんぐんと歩いて行って思い切り顔面に拳を放り込む所だった。


凄いパンチだった。偽物が吹っ飛んで転がる。


ーアレ、アタシの知り合いで元同僚。今は帝都公安委員会のやつ。


殴られた偽物の顔が崩れ、何か少し人間離れした顔に。

シャァ! という動物のような声を上げて

飛び起きようとするが、宝石屋の男は意に介せず

金属製の注射器のようなものをポケットからだして偽物に突き刺す。


偽物の身体に変化が起こり歪な人間ではないナニカへと変わって動かなくなった。


「なにあれ……」


「それが知りたいのならあたしと契約しなきゃならないけど?」

「契約? なんだよそれ。」


「ここは悪魔が住む街。危険極まりない霧が解決されない街。

あたしは今奇怪な連続殺人事件の捜査の為にここに滞在してる。協力者が欲しい。

特に超能の力をもった協力者は喉から手が出る程にね。」

「……」

「アンタホームレス殺しね? 指名手配されてる路上生活の少年。」

「…違うと言ったら?」


「……欲しいものを言いな。あたしが用意してあげる。」


「僕が欲しいもの…」

「何かあるの?」


「僕が欲しいのは……

健康的な生活とクミ爺の事件の真相と犯人! それにアイツが盗んだ形見の本だ!」



15歳の僕と30歳の僕が心の中でGOサインを出してるのが分かる。


今人生が大きく変わろうとしていた。




「僕はフォニィ。お姉さんの名前は?」









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