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フォニィ 12話 続・キャンディショップ



あぶなかった。生きた心地がしなかった!

暫し放心状態になった。車庫の扉の前へ行って聞き耳を立てると

母屋の扉が乱暴に開く音がして心臓が飛び出そうになる。


アイツがまた車庫に来る!?

急いで身を隠す。じっとしていると

車のドアの開閉音からエンジンがかかった音。


奴が出て行ったんだ!

今がチャンスかもしれない。車庫から出て車が居なくなったのを確認してから

電気をつけて車庫を見渡す。

中身が見えない包装された大きな箱が車の周りにいくつもある。


どうしよう、これ破ったら機械の誤作動じゃなかったってなるよね?

気になるけど。止めといたほうがいいかも。


車の中。後部座席に布がかけられている何かが寝かせられている。

嫌な予感がした。この形。人みたいだ……

車のロックを「見えない手」で内側から開錠。


人間大の何かにかけられた布を取ると

車内には木のようなミイラのような女の死体。

あの時見た化け物に少し似ていた。頭から少しだけ角のような物。

これも乾いた木のような質感だった。


なんだ、これ。あの時もあったやつだ。


30歳の自分が

----助手席とトランク、ダッシュボードのグローブボックスも見ろ

といった気がする。

グローブボックスってなんだよ。

どうやら助手席前の収納みたいだ。


収納を開けると、よく分からない書類がたくさん。

こんなの読む気になれない。

見ても難しくて自分にはよくわからなかった。

車の説明書? 他には保険課か何かの書類に。


ん、ID? あの殺し屋のIDがある。

しかも免許証が3つも? 全部名前が違う。フェイクIDか。

不良少年でも持っているようなものだけど、

パスポートとかよりは偽造しやすいんだろう。


何方もこの街で必要なものかは怪しいところだった。

IDなんてチェックする街だろうか。


あの殺し屋この街だけじゃなく、

もっと広範囲で何か悪さしているのかも。


カップホルダーの中には汚い紙ナプキン。

ファストフードでも買ってここで食べたのかも。

口を拭いた紙をそのままにしていれてる。


運転席と助手席の間のセンターコンソール(収納)

を開けて一瞬フリーズした。


お金だ! 凄い額のお金…

現金でいくらあるだろう。


コーラのビンよりも厚みのある札束だった。

こんなの見た事ないよ! これがあればどんな暮らしが出来る? 

何が買える?分からないけど。

今よりも全てがずっとマシになるんじゃ…


持っていきたい!お金は欲しい! ホームレスなんだぞ! 

もう指名手配までされて! 生死問わずで、濡れ衣だって着せられて!

盗みぐらいどうでもいいだろ。

ちょっとくらい悪い奴から盗ったっていいじゃないか。

ちょっとくらい人生でいいことが起こってほしい。

僕だっていい目にあいたいんだ!


……


その時、心の中で15歳の自分が抱きしめてくれたのを感じた。

お金が欲しいとか、報われたいだとか全てを認めてくれた気がした。

むず痒い気持ちになる。くそ! このお金欲しいのに!


……


でも… 今じゃない、そういうことだよね。

この気持ちを否定しないでいい。認めていい。でも…

金には手を付けない。だって痕跡を残すべきじゃないんだ。


クミ爺を殺した犯人の手掛かりとあの本を取り返すために調査してるんだ。

だからさっきも気になったけど箱の包装を破らなかった。


トランクの中を開けて中を見ると後部座席に会ったのと同じような死体。

やはりこれも木製のミイラみたいだった。これも女性だ。


それ以外にも同じようになった人間の頭部が

プチプチに包まれていくつか転がっていた。

包装が箱の包装と似ている。やっぱりこの車の周りの箱…


全てこのミイラ? 何体ある? 5体くらいか。

この連中いったい何してるんだ……

意味不明だった。この馬鹿な犯罪者たちのやっていることは

自分の理解の許容量を軽く超えていて、しかも

もしかしたらもの凄く下らない理由で

このような行動をしているんじゃ… という気さえしてきていた。



……ここはもういい。

母屋に行こう。車庫を出る。母屋からはラジオの音がする。

アイツがつけっぱなしで出て行ったんだ。


母屋の戸へ行って見えない手で開錠する。

中へ入ると左右に扉が2つ。全てのドアを開けていく。


右手はバスルームとトイレ。左手は寝室と物置だった。

つけっぱなしのラジオは寝室か、物置だろう、左手から聞こえて来る。

廊下を進むと階段。上に上がれば店内カウンターの奥。


バスルームをみると人間の死体。さっきみたいにミイラのような感じではない。

なんなんだよ! ここは! 


点滴のようなものが寝かせた死体に繋がっている。

黄色い液体が容器の中に入っていて…

触らないほうが良いかも知れない。


アイツら完全に狂ってる! 今更ながら恐怖が押し寄せてきた。

見つかったら自分もこうされるのかな…

15歳の自分も緊張しているのが伝わって来た。


余計な考えを振り払うように寝室へ。


机の引き出しなどを開けていく。ラジオはここじゃなかった。

ていう事は物置か。

引き出しにはまた現金があった。

先ほどの札束よりかは薄いが十分な額。


それ以外には処方箋と様々なカプセルの入った薬。

ビンに入っているのもある。

ビニール袋に入っている粉末などもある。薬物かもしれない。


PCがあった。立ち上げてみるとロックがかかってる。

だめだ、パスワードが分からない。


次に物置の方へ行く。やはりラジオがある。扉を開けると思ったよりも音量は大きかった。

段ボールやカラーボックスが部屋中にある。


部屋を見渡すと信じられないものが目に飛び込んできた。


あの男だ……

宝石屋に行ったはずの男。


ロープとテープで縛られて口にもダクトテープ。目隠しもされている。

憔悴しきってる。意味がわからない!

なんで宝石屋にいるはずのアイツがここで縛られてるんだ……



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