女子柔道部始動編 序章 入学式前日
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
高嶺学園高等部校舎。
入学式前日の夕刻。
当校の教師である、神谷弦は北校舎の廊下を歩いていた。
「後は、理科室の施錠の確認だけだな」
ボソッと、つぶやきながら神谷は理科室の扉に手を掛けた。
「!?」
今日は、使用されていないはずの理科室の引き戸が、開いた。
「・・・・・・」
理科室の中には・・・誰もいない。
「・・・・・・」
だとすれば・・・思い当たる場所は・・・
ガラッ!
準備室の、引き戸を開ける。
そこには・・・
照明の点いていない暗い室内に、座敷童・・・ではなく、制服の上から黒いフード付きのマントを羽織り、オカルト感丸出しの、牛乳瓶の底のような分厚いレンズの眼鏡を掛けた女生徒がいた。
「エロイムエッサイム・・・エロイムエッサイム・・・我は求め、訴えたり・・・」
不気味な声が、響いている。
「・・・越智・・・」
神谷は、ため息を付き照明のスイッチを入れた。
「今日は、臨時休校だぞ。勝手に、理科準備室を使用するな」
人体模型やら何やらが置かれている準備室は、それなりに不気味であり、雰囲気も中々である。
そんな中、一心不乱に水晶球に見入っている少女。
この学園の2年生であり、オカルト研究部の部長である越智密である。
話し方も雰囲気も個性が強く、風変りなところがある生徒だが、西洋東洋を問わず、様々な占いに精通しているそうで、生徒たちから恋愛や悩み事等を相談され、占いが良く当たるという噂があるそうだ。
因みに、彼女の実家は寺である。
「今朝~・・・何か、ビビッとくるものがあったから~・・・」
まったく抑揚のない一本調子で、越智は理由を述べる。
その理由も、まったく説明になっていない。
神谷は、ため息を付いて首を横に振った。
「・・・越智。どうして今日学校が、臨時休校になったのか、知っているだろう?」
「知ってる~・・・昨夜、高嶺市内で起こった、一家惨殺事件の被害者家族の1人が、ウチの新入生だから~・・・マスコミが押し寄せて騒ぎになるかもしれないから~・・・て、臨時休校になる~・・・て、連絡が来た~・・・」
「・・・・・・」
再び神谷は、ため息を付いた。
「・・・それを知っていて、何でここにいる?」
「ここが、一番精神が落ち着く~・・・」
「いや、お前の家は寺だろう?家の方が、雑念を払って占いに集中出来るだろう?」
当然、もっともらしい事を突っ込んだ。
「家は、昼夜問わず騒々しいから~・・・ここが、一番集中出来る~・・・だって、鬼門だし~・・・」
何が、騒々しいのかという疑問は置いておく。
確かに、この準備室は校舎の北東に位置するが・・・
水晶占いに、風水の方位が関係するのかという疑問があるが、それを問えば、さらに訳の解らない屁理屈を延々と聞かされそうだ。
「・・・で、水晶占いで、どんな卦が出たんだ?」
ため息を付きつつ、早々に、この生徒を帰らせなくてはならない。
「・・・明日の入学式は、嵐が起こる~・・・楽しみ~・・・グッシッシシシ~・・・」
不気味な笑い声を上げながら、越智は楽しそうに口角を上げている。
「・・・だろうな・・・」
今日は、臨時休校にして凌いだが、あの猟奇事件に関して、朝からマスコミからの問い合わせや、取材の申し込みの電話が鳴り止まなかった。
取り敢えず、警察からの正式な発表がされていないという事で、お茶を濁しているものの、明日は入学式である。
数多くの新入生や、その保護者、来賓が来るという絶好のチャンスを、マスコミは虎視眈々と狙っているだろう。
ハイエナや、ハゲタカの様に・・・
「いや・・・あんなのと同類にされては、ハイエナやハゲタカが怒るだろう。失礼極まりないな・・・」
取り敢えず、学園からは大事な式典であるため、学生や保護者への取材は自粛して欲しいという旨をマスコミ関係には申し入れているが・・・
素直に聞き入れられるとは、到底思えない。
女子柔道部始動編 序章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は10月5日を予定しています。