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第0.5章 新たなミッション

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 東京都内某所。





 一見すると、どこにでもある雑居ビル・・・


 そこに、国家治安維持局外部局の拠点の1つがある。





 その中の、平凡な事務所の一室の、応接室で桐生は、ソファーにチョコンと座っていた。


 時刻は、午後5時を回っている。


 コーヒーカップに残ったコーヒーは、すっかり冷めてしまっている。


 点けっぱなしになっている、テレビからはニュースが流れていた。





『昨夜未明。高嶺市で起こった殺人事件に付いて、続報が入りました。高嶺警察署の捜査本部の発表では、殺害されたのは・・・』




 

 朝のニュースから、あまり進展は見られないようだ。


「・・・まあ、高嶺市は都内でも比較的治安が良い地域だったから・・・こんな、猟奇的な事件が起こったら、精神ぬるま湯状態の警察官たちでは、ちょっと荷が重いかも・・・ドリちゃんが、どこまで締められるかが、鍵かな・・・」


 ボソッと、つぶやく。


 まぁ・・・遠藤は、それなりに出来る女性だ。


 事件解決のために必要と思える手段は、躊躇う事無くジャンジャンと投入するだろう。


「待たせて、すまない」


 ノックの音と共に、1人の学生服に身を包んだ少年が入室して来た。


「遅いですよ~もう!帰っちゃおうかと思いました~」


 ムスッとした顔で、桐生は応対する。


「早く帰って、隼也と遊ぶ予定だったのに・・・2時間待ちですよ。2時間!貴重な時間を無駄にしちゃいました!」


「そうだね。それは申し訳なかった。情報担当の外部2班から、別件の情報が入ったのでね」


「別件?」


 別件なら、関係無いじゃんという表情を露骨に浮かべる桐生の目の前に、分厚い資料が差し出された。


「別件と言えば、別件だが。関係が無いとは、強ち言えない」


「・・・・・・」


 素早く、資料に目を通した桐生が顔を上げた。


「その、資料に添付した写真の人物たちに、見覚えは?」


「悠太ってコを追いかけていた人達が何人か入っているね。この2人は、私が投げ飛ばしたのと、殴り倒したのだよ」


 桐生は、2枚の資料を抜き出して、テーブルに並べる。


「それと・・・」

 

 かなりの枚数がある資料を、桐生は眺めて、それを左右に分ける。


「こっちの資料にある方は、昨夜見かけた。後は知らない」


「そうか。その資料に添付されている写真の学生たちは、全員都内の私公立の高校に在籍する学生たちだ。それと・・・ここ数日で全員が死亡している」


「へっ?」


 突然の言葉に、桐生は間の抜けた声を出した。


「死因については、事故や自殺だね。君が手に掛けた2人は、今朝、電車に飛び込んでいる。管轄の警察は、学校での成績不振を苦にしての自殺と見ている。昼間のニュースで流れていたが・・・まぁ・・・君は、昼間は取り込み中だったから、仕方が無いか」


「他の者は?」


「交通事故、その他色々な事故、首吊り、飛び降り等様々だね。まぁ、異常と言えば異常だが、都内各所に分散されているし、特に不審な点も無い事から、関係各所は、偶然に起こった事故や自殺として見ているようだ」


「・・・口封じでは?」


 昨夜、見崎悠太を襲おうとしていた学生たちが、翌日には全員死亡している。


 口封じに、自殺や事故に見せかけて殺害されたかも・・・しかし、それらを関連付ける確証は何もない。


「もちろん、その可能性は無いとは言えない。が・・・まずは、その証明が出来なければ警察も動けない」


「・・・・・・」


「その件に付いては、外部1班と2班が、共同で捜査をする事が決定した。我々、外部0班には待機指示が出された」


「えぇ~!?私は、蚊帳の外!?」


 途端に桐生は、不平を鳴らす。


「外部局長からの指示だ。それと・・・自分の情報を、不用意に流すなと苦言を言っていた」


「そうそう!あの人たち、何か言っていた?」


 あの、取っ捕まえた連中から何か聞き出せたかもしれない。


「ちょっと脅したら、簡単に口を割ったそうだ。反社団体経由で、前金を含めて報酬50万で、君の拉致を引き受けたそうだ。連中に依頼した反社の摘発に当たった3班の話では、その反社も、幾つかの反社を経由して依頼を受けたそうだ」


「・・・何だか、ムカつく。私の価値って、たった50万ぽっちって・・・」


「腹を立てるのが、ソコ!?」


 憤慨する桐生に、呆れたように少年は突っ込む。


「だってぇ~」


「それよりも・・・君には、重大なミッションがある」


「?」


 コホン!と、咳払いをして少年は話を続ける。


「君は、高嶺学園に入学したら、柔道部に入部する予定だろう?」


「そのつもり。今は、部員がいないから休部扱いだけれど、最低6人の部員が確保出来れば、正式に部活動として認められる訳だよね。私を含めて5人は確保出来ている訳だし、後1人を勧誘出来れば、許可が出る訳だし、問題は無いんじゃ?」


「いや、大ありだね。女子柔道部が復活すれば、当然、練習の場所が必要だ。休部する前は、男子の柔道部と柔道場を共有していたが、現在は男子が独占している。使用するには、男子柔道部員の許可が必要になる。交渉は、かなり難航する事が予想される」


「何で?学校や生徒会が、一言言えばOKじゃないの?」


「休部になる以前から、女子柔道部は公式戦で成果を出していない。 対して男子は全国大会等で上位の成績を修めている。柔道部OBや理事会でも、女子柔道部を無理に復活させる必要が無いという意見も出ている。学校側も、それらの意見を無視出来ない所があるからね」


「生徒会は?」


「生徒会は、あくまでも中立だ」


「ケチ!」


 条件反射で答えてから、桐生は軽く首を振った。


「まぁ、仕方ないかな。それよりも、外部0班班長としては、他の外部班に仕事を持って行かれてどうなの?」


「それは、仕方ない事だ。外部0班は、他の外部班からしたら正規の班ではないからね。まぁ、そのうち何だかの任務が回ってくるだろう。今は待ちの状態だ」


 班長から、そう言われれば、一介の班員でしかない桐生も、大人しくするしかない。


「わかった。でも、捜査の進捗報告くらいは欲しいかな。それを教えてくれるなら、大人しく、女子柔道部復活のミッションに勤しむよ」


「そうしてくれ。あっ、0班班長としてではなく、高嶺学園高等部生徒会の生徒会長として言わせてもらえば、くれぐれも穏便に頼むよ」


「はいはい」

 第0.5章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は7月6日を予定しています。

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