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22話 目には目を、召喚魔法には召喚魔法を

「次、ジーク・スノーフィールドの番なのじゃ!」


 リーゼロッテの合図で前に出る。


「スノーフィールド君、がんばってください!」

「ああ」


 きちんと応援してくれるネコネに頷きつつ、魔法人形と向き合う。

 すると、リーゼロッテが近寄ってきて、小声で言う。


「……お主、ちゃんと手加減をするのじゃぞ? この前みたいに、校庭に大きな穴を空けるでないぞ?」

「……努力はする」

「……おい、確約せぬか」

「……アリンの実力は相当なものだ。下手に加減をしたら負けるかもしれない。そうなると任務失敗だ」

「……むう」

「……気をつけるが、調整が難しい。いざという時は諦めてくれ」

「……うぅ、上からどやされるのが辛いのじゃ。胃が痛いのじゃ。でも、ちゃんと努力はするように」


 リーゼロッテは諦めた様子で戻っていった。

 管理職というのも大変だな。

 いくらか同情してしまう。


 とはいえ、手を抜くことはしないのだが。


「さて」


 使う魔法はすでに決めている。

 アリンが召喚魔法を使ったのなら……


「トランス」


 魔力を増幅。

 そして、構造式を練り上げる。


「サモン、バハムート!」


 漆黒の竜が降臨した。


 その瞳は全てを見通す。

 その牙は全てを噛み砕く。

 その翼は空を支配する。


 最強の名を持つ召喚獣。

 神獣バハムート。


「なっ……!? これは、もしかして伝説の……!?」


 ネコネは驚愕して、


「あぁ……こんなものを呼び出すなんて。もう、妾、始末書確定ではないか……」


 リーゼロッテは嘆いて、


「そ、そんな……こんなことが……あ、ありえない……」


 アリンは全身を震わせて、目を大きくして驚いていた。

 目の前の光景が信じられない様子で、意味をなさない言葉を繰り返している。

 それだけ衝撃が大きいのだろう。


「あんた、どうして!?」


 我に返った様子で、アリンが鋭い声を飛ばしてきた。


 ただ、震えは止まっていない。

 むしろ、さきほどよりも大きくなっているようだ。


 警戒するように。

 そして、怯えを含ませつつ、こちらをじっと見る。


「召喚獣の頂点に立つバハムート……単騎で軍を退けるだけじゃなくて、国を滅ぼすこともできる。圧倒的な力を持つ、まさに神のような存在……」

「詳しいな」

「それなのに、どうして……どうして、あんたなんかがバハムートを使役しているのよ!?」


 餌をあげる。

 友好的に接する。

 力を示す。


 召喚獣と契約する方法は色々とあるが……

 上位の存在になるほど、その方法は絞られていく。


 力を示し、従うにふさわしい相手と教えること。

 大抵、その一択となる。


 もちろん、バハムートも例外ではない。

 ヤツと契約を交わすには、戦い、勝利をもぎとらないといけない。


 シンプルな方法ではあるが、それ故に、成し遂げた者は数えるほどしかいない。

 バハムートに力で勝つ。

 それは、神を打ち負かすのと同意義なのだ。


「いったい、どうやって……!!!?」

「決まっているだろう」


 アリンがそうしたように、俺は笑いつつ応える。


「力を示したんだ」

「なっ……」


 バハムートを力で従えた。

 つまり、俺はバハムートよりも上だ。


 その意味を理解したらしく、アリンは顔を青くして震えた。


「よし。バハムート、あの魔法人形を……」

「待て待て待てぇえええええーーーいっ!!!」


 慌てた様子でリーゼロッテが割り込んできた。


「お主、正気か!? 戦場でもないのに、バハムートに攻撃命令を出すでない!」

「俺、使える召喚魔法はこれだけなんだよ」

「極端すぎるわ!」

「不器用なんで」

「不器用すぎるわ!」


 ぜいぜい、と肩で息をするリーゼロッテ。


 はて?

 なにをそんなに疲れているのやら。


「とにかく、バハムートを引っ込めるのじゃ。バハムートが攻撃なんぞしたら、魔法人形だけではなくて、この訓練場……いや。学院がまとめて吹き飛んでしまう」

「しかし、それでは勝負が……」

「お主の勝ちじゃ! 妾が認める!」

「ふむ……アリンは、それで納得できるのか?」

「……ええ」


 問いかけると、非常に苦い顔をしつつも、アリンは小さく頷くのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・・・・、召喚したバハムート、まさか、ユスティーナの世界にいたドラゴンじゃないでしょうね?
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