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本と少年

 「あーどうしよう。」


 彼は森の中で沈んだ表情をうかべながら呟いた。


 


     遡ること数分前


 彼、風袖式凪(かざそでしきな)高校1年でバスケ部に入っている。しきなと聞いて女性かと思ったかもしれないが彼は男性である。式凪の母親は、アメリカ人である。そのため式奈はハーフであり、髪は金色である。その日式奈は土曜日で部活の練習に行くために家を出て学校目指して歩いていた。赤信号なので立ち止まりボーと車が前を通るのを見ていると隣にいたサラリーマンが蹲った。俺は大丈夫か聞くためにサラリーマンに話しかけた。


 「あの、大丈夫ですか?救急車呼びましょうか?」


するとサラリーマンは、小声でボソボソと喋り出した。


 「モッ………カ………テ……。」


「え?なんですか?」


 なんて言っているのか聞き取れないので俺は、顔を近づける。

 

 「もっと近づいて。」


 「は?」


 もっと近づいて?どういうことだ?訳がわからずにボーとしていると物凄い勢いでサラリーマンが俺に抱きついてきた。凄まじい勢いだったので俺は反応できず抱きしめられた。脱出しようにも万力か何かに挟まれたかのようで脱出出来なかった。そして次には、俺を抱えたまま道路に飛び出し、俺は死んだ。

 …死ぬのは一瞬だった。死ぬ間際に俺はサラリーマンの顔を見た。サラリーマンは不気味な笑みを浮かべていた。

 

 



  「…てください。起きてください。」


 目を覚ました。俺は周りを見渡す。そこは、何もないずっと先まで続く何もないただの白い空間だった。


 「どこだよ…ここ。」


 「あ、起きましたね。」


 「ん?」


 声の聞こえる方を向く。そこには綺麗な白髪の翼の生えた美少女がいた。天使?いや、女神か!?そのあまりの綺麗さに思わず言葉を失い只々黙って女神と思われる美少女を見る。

 すると女神は、優しく微笑みながら喋りかけてきた。


 「初めまして。風袖式凪(かざそでしきな)さん。」


 「…は、はしゅみまひて。」


 やべ。かんじまった。恥ずかし。


 「私の名前は、×××××××です。今回は貴方に世界を救っていただいてほしくてこの場に呼ばせて頂きました。」


 「世界を救ってほしくて?」


 思わず質問する。どうゆうこと?てかここどこだよ。俺どうなるんだよ。…あれそういえばこの人の名前なんて言うんだ?名前の部分だけ聞き取れなかった。


 「はい。式凪様が住んでおられた場所とは別の世界で魔王が復活しその世界を破壊しようとしているのです。」


 俺が住んでいない?どういうことだ?


 「すいません。いくつか質問に答えてもらえますか?」


 「はい。構いません。」


 「じゃあまず1つ目、ここはどこですか?」


 「ここは天界です。死んだ者の魂を裁く場所です。」


 死んだ者を裁く?つまり…


 「俺は死んだのか?」


 女神は黙って頷いた。まじか…。あっけねーな俺。寿命でぽっくり死ぬと思ってたけどな…。20(はたち)になって友達(あいつら)と酒飲んで、結婚して子供と奥さんと一緒に幸せな日々を過ごしていこうと思ってたんだけどな…。こんなにはやく死にたくなかったな…。

 

 「あの…俺が住んでいたところに戻れますか?」


 「ごめんなさい。それは出来ません。戻る為には式凪様の肉体が必要なんです。ですが式凪様の肉体は、車に轢かれてぐちゃぐちゃに…。」


 「あ…分かりました。」


 そうか…もう戻れないのか…。もう友達にも家族にも会えないのか。みんな俺が死んで泣いてくれるかな…。


 「式凪様こちらをご覧ください。」


 どこから出したのか大きな鏡があった。俺は鏡を覗き込み涙を流した。鏡には俺の葬式が映し出されていた。家族も友人も先輩もみんな泣いていた。こんな俺のために泣いてくれたるんだ…。涙が止まらなかった。もう会えないけど、ありがとう…俺は周りの人達に恵まれてるんだ。

 …ってあれだ。質問がまだあるんだ。涙を腕で拭い去り質問した。

 

 「あの…俺に抱きついてきたサラリーマンは、なんなんですか?」


 「…分かりません。調べてみたのですが全く分かりませんでした。出身地も名前も…。」


 分からないか…。まあ、あんな頭のおかしいやつのことなんてどうでもいいか…。


 「貴方の名前をもう一度教えてください!」


 「私の名前は、×××××××ですよ。」


 笑顔でそう答えてくれた。可愛い…じゃない。やっぱり聞こえない。名前の部分だけ聞こえない。なにかに邪魔されているかのように…。聞こえないものはしょうがないな。


 「俺がその魔王がいる世界に行かない場合はどうなるんですか?」


 「行かない場合は記憶を全て消して、新たな人生を歩むことになります。新たな人生とは人間としてかもしれませんし、人間としてではなく動物として生きていくかもしれません。」


 「分かりました…。」


 どうする?決めるのは俺だ。でも魔王って奴のせいで困ってる人がいるかもしれない。困ってる人がいるかもしれないなら助けるべきだ。


 「俺の行く世界は、魔法とか剣とかがある世界なんですか?」


 「はい、そうです。その世界は魔力に満ちていてどんな生き物も魔力をもっています。」


 …冷静に考えてみよう。今俺には、2つの選択が迫られている。魔法がある世界に転移して、魔王を倒しに行くか、もとの世界で新しい人生を歩むかの2つの選択が迫られている。…もとにいた世界には帰れない。

 正直にいうともう決まっている。俺だって男だ。魔法を使ってみたいと思ったことはある。魔法を使えるのなら…行きたい異世界に!!俺は決心した。


 「分かりました…女神様。もう思い残すことはありません。俺を異世界に飛ばしてください!!」


 「お待ちください!異世界に飛ばす前に式凪様にスキルを授けます。」


そう言うとどこからか本が飛んできて、本が俺の体に入っていった。


 「スキルとはスキルを使える人専用の魔法です。スキルの名前は、マジックスターターです。マジックスターターと叫ぶと使えますよ。マジックスターターは学習する魔導書です。異世界の言語の読み聞きはできるようにしましたので安心してくださいね。それでは…式凪様ご武運を…。」


 光に包まれて目を開けると森の中だった。そして今に至る…

 まさに右も左も分からない場所に今自分がいると思うと不安になる。持ち物は何もない。服は黄色の練習着と黒いズボンとリストバンドだ。


 「どうすっかなー。とりあえずスキルってやつを使ってみよ!」


 折角魔法がある世界に来たんだなら魔法を使わなきゃやってらんないな!スキルを使うにはスキル名を叫ぶんだよな。スキルの名前は…


 「でろ!!マジックスターター!!」


 体から本が出てきた。おおーすげー!!本当に魔法が使えるんだ。本を拾い上げてページを捲る。日本語じゃないのか…でも読めるぞ。えーなになに…魔法を使うにはこの本に記された魔法名を唱えることにより魔法が使えるようになる。なるほどな。魔法使う為には魔法の名前を言わなきゃだめなんだな。ページを捲る。

 …あれ?なんて書いてあるのかわからない…。なんで?読めるページと読めないページがある。まあ…いっかそれよりも読めるページを見て魔法を唱える。


 「えーなになに…。えあ、ういんど?」


 そう言うと開いた本から物凄い勢いで風が流れてきた。


 「いて!!!」


 凄まじい勢いの風に俺は5メートルほど飛ばされた。そして俺は木にぶつかった。余りの勢いでマジックスターターを手放してしまった。


 「す、すげー!今のが魔法か。俺が今唱えたのか…。」


 俺は立ち上がりマジックスターターを拾い上げた。


 「他の呪文も唱えてみよ!次は…これだ!エアフロート!」


 するとマジックスターターが宙に浮いた。おおー…って感動してる場合じゃない止まれ!3メートルほどのところでマジックスターターは止まった。


 「止まった…。」


 俺は猛烈に感動した。なぜなら実際に自分が魔法が使えてさらにコントロールできていると思ったからだ。


 「戻れ!!マジックスターター!!」


 宙に浮いた本が俺の腕に沈み消えた。出し入れ可能な便利なスキルなんだな。

 さて、どうすっかな…。とりあえず街を探そう。人に会ってこの世界のことを色々知らないと。

 俺は歩き出した。目標が決まったおかげか、魔法が使えるようになったからなのか、それとも異世界に来て興奮しているのか分からなかったが足が軽かった。




 

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