名伏密 その家族
母は俺が生まれて間もなく死んだ。だから母方の祖父母が親代わりだった。父はというと、祖母の言を借りるなら、とんだ放蕩野郎であり、母がこの世を去ったことでたがが外れたのか、放蕩野郎はいよいよ放蕩の限りを尽くして蒸発したらしい。
でも、俺自身は父に対して悪い感情を持っていない。そもそも嫌うほど父のことをよく知らないし、俺の名前である「密」は父が決めたということ、そしてその由来を知ったことで、父という存在を少しだけ特別なものに感じている。
俺の今の姓は「名伏」だ。「名伏」に「密」なんてどれほど隠しておきたい存在なのだと思う人がいるかもしれないけど、俺が強く主張したいのは、「密」は「秘密」の「密」ではないということ。祖父母が由来を教えてくれたのだけど、「密」の字は建物の中を表す「宀」に、締め付けている状態を意味する「必」、そして「山」という文字でできている。仕事の事情でよく家を留守にしていた父は、大事な家族だから「宀」を、いつも抱き締められない代わりに「必」を、山ほどの愛情として「山」を「密」という字に込めた。読みこそ「ひそか」だけど、少なくとも俺が生まれたときには、ひそやかにするつもりなど微塵もない親心に任せ、「密」という名を付けたんだ。
そんな名前をくれた父が、なぜ俺を残して蒸発したのかは未だにわからない。まだ俺が幼い頃、「お母さんがいなくなって、悲しくてどうしようもないからお父さんもどこかに行っちゃったのかな。可哀想だね」と何の気なしに祖母に話したら、「お母さんがいなくなったのはそもそもあいつのせいみたいなもんさ。可哀想なことなんかこれっぽっちもありゃしない」とぴしゃりと言われた。祖父はなんだか居心地悪そうに庭へ逃げた。
それから祖父母の前では父の話はしないようになった。
祖母は母親の代わりという気負いもあってか、厳しい人だった。普通、孫にとっての祖母とは、優しくて、何をしても笑って、もしくは困った顔で許してくれる砂糖菓子のように甘い存在のはずなのだけど。
いかんせん贅沢は己から遠ざけて、清貧こそ美徳と教わってきた世代だ。例えば、テレビやゲームは一日一時間。俺が小学生になってようやく勝ち取った権利だった。目が悪くなる、性格が凶暴になるなんて眉唾な理由で遠ざけられていたけど、俺だけ奇面ライダーを知らないからいつもごっこ遊びについていけない、今時テレビもゲームもしたことないなんて周りから馬鹿にされるし話に入れない、このまま俺は文明から置き去りにされて現代の生きる化石よろしく云々かんぬん、さんざっぱら泣き喚いて主張した末、気の毒に思った祖父が、祖母を説得してくれたのだった。
おやつにしても友達がうらやましくて仕方なかった。友達の家に遊びに行けば、ケーキや品のいい焼き菓子、そうでなくてもスナック菓子やジュースがおもてなしとして出された。一方、名伏家ではどうだ。石垣餅ややせうまといった、なんとも野暮ったく冴えないおやつが常であり(俺にとってはだけど)、お菓子カーストの最下層に位置するそうした野暮ったいおやつを、カースト中位以上にランキングされているスナック菓子やケーキを食べ慣れているであろう友達に出すのは、恐怖と羞恥以外のなにものでもなかった。せめて友達が来た時だけでも普通のお菓子、ケーキとまでは言わないから例えばポテトチップスなんかを出してくれと訴えても、やれ添加物がどうだのあたしの手作りが恥ずかしいとは不孝者だの言われ退けられた。
挙句の果てには料理の手伝いだ。餃子の餡を皮に包む作業が面白そうで祖母に手伝いを申し出たことが間違いの始まりだった。それからというもの、これからの男は料理くらいできなきゃつまらない、もしあたしが倒れたらどうすんだ、なんて言われながら夕飯を作る手伝いをさせられた。夕方五時のチャイムとともに遊びを切り上げて夕飯の支度のために飛んで帰る小学生なんて俺くらいだった(でも、帰り際に友達の母親にそう断ると必ずと言ってよいほど称賛されるので、その瞬間はまんざらでもなかった。褒められたいがために、友達の部屋から玄関に直行はせず、台所もしくはリビングにいる友達の母親にわざわざ挨拶をして帰ったものだ)。
そんな祖母がルールの名伏家だったけど、パソコンに関しては話は別だった。パソコンこそ有害サイトやらフィッシング詐欺やらで子供から遠ざけてしかるべきものなのだけど、祖父が元システムエンジニアで、かつ機械オタクだったこともあり、家には多様な情報機器や得体の知れないガラクタがあふれていた。これからの時代は自分で情報の取捨選択をしていく能力がなければ、あっという間に情報の波に押し流されて自分で考えることのできない大人になってしまう、というのが祖父の主張だった。だから母なる情報の海に触れて己の情報リテラシーをしっかり高めよと、俺は子供アカウント付きのパソコンを渡されていた。知者不惑とは祖父のための言葉だ。
目に忌まわしい力を宿した日、祖父はガラクタ作りのための資材を買いにでかけ、祖母は手芸教室に出ていたため俺は一人だった。友達と遊びに行くこともできたが、あえて一人で家に居ることを選んだ。子供ながら抱いてしまった生々しい桃色の欲望を、誰にも見とがめられずに解き放つための壮大かつ卑猥な計画があったのだ。
祖父から渡されたパソコンには、祖父が以前使っていたアカウントも残っていた。そして計画の数日前、偶然にもそのパスワードを書いたメモを発見したんだ。いかな知者とてミスは犯す。
メモを見つけたとき、俺は気持ちの昂ぶりを抑えるために黙々と部屋で一人、ヒンズースクワットをした。そうでもしないと内に込み上げてくるめくるめく卑猥世界への期待と興奮に頭がふやけて、まだ見ぬ卑猥美女たちを本当に見ないまま、妄想を思うさま弄び昇天する羽目になりそうだったからだ。そのメモは俺にとっての鍵、自分の性を誰の目も気にすることなく世界に解き放つ自由の鍵だった。そう、子供アカウントではエッチなサイトを見ることができない。
扉を開く検索ワードは、「エロ動画 無修正」。エンターキーを押す瞬間、衝動的にパウッと短く奇声を発した。発した瞬間に浮かれている自分を恥ずかしく思ったが、パソコンの画面を埋め尽くす卑猥な検索結果の群れがそんなもの、消し飛ばした。じいちゃん、俺はこの母なる情報の海を見事泳ぎ切り、その母たる部分を曇りなき眼にしっかり焼きつけます。
そうして数々のフィッシングサイトをやりすごし、これだ、という動画に行き着いた時には、すでに俺の俺自身はぱんぱんになっていた。
逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ。逃げるつもりなんて露ほどもないけれど、はやる気持ちを落ち着かせるためにアニメのセリフを真似てみた。心を落ち着かせ一拍間を開けてから、勢いよく動画の再生ボタンを押した。もちろん、押す瞬間にはパウッと鳴いた。
そこには、おっぱいがあった。今まで祖母のものしか見たことがなかった俺にとって、それは衝撃そのものだった。まるでハムとステーキほどの違いだ。
画面に映ったそれは、おっぱいという名のひとつの完成された世界。天然でいて完璧に形作られた曲線に、儚くも全ての罪を許すかのような慈愛に満ちた白。その白を引き立たせるようにうっすら浮かび上がった青い血管は、神秘的な生命力を感じさせた。そして青に導かれた頂には、柔らかくも緊張をはらんだ桃色が凛とたたずんでいた。それは宇宙だった。女性が宿す神秘の小宇宙。それに触れたならば、男と名のつく者は万人がうちに秘めた母性への郷愁にむせび泣くことだろう。
当時の俺はそんなことを感覚的に悟ったのだった。
おっぱいに感動する間にも動画はどんどん先へと進み、画面には動物界軟体動物門腹足網原始腹足目ミミガイ科アワビ属、いわゆるアワビ、に似た何かがどアップで表示された。
ショックを受けた。おっぱいの神々しさとは対をなす妖艶怪奇なブラックホールが、退避不可能な異界へと手招きしていた。衝撃を受けつつも、その深紅の闇が放つ引力に逆らうことができず、目が釘付けになった。魅惑の夜闇は突っつかれたりくすぐられたりする度に甘い音を放ち、俺の頭蓋の中で延々反響しながら音量を増していった。女性には神と悪魔が同居しているらしい。もちろん俺は悪魔が魚介類だなんて知らなかった。
そこにでろんとトラウツボが現れた。トラウツボは気性が荒く鋭い牙も持っていて大変危険な海のギャングだ。いかに悪魔であってもトラウツボに噛まれたらひとたまりもないはずだ。アワビが危ない、がんばれアワビと胸をはらはらさせながら声にならない声援を送った。でもどうしたことだろう、魚介同士なにか通じるところがあったらしく、二つは仲良く踊り始めたのだ。なるほど、ここは生きとし生きる海の生物が仲良く暮らすといわれる竜宮城か。じいちゃん、見事母なる海を泳ぎ切ったと思っていたけれど、その深淵に俺は遠く及びません。
とにかく、加工処理されていないアワビとトラウツボの竜宮ダンスに俺が凄絶な衝撃を受けたことは言わずもがなだ。
パソコンを凝視する目の奥が熱を帯び、次第にその熱が体中に伝播していった。続いて頭が痺れ視界が揺れだした。エロ動画を見ただけなのに、この体の異変はどうしたことか。動揺をよそに体はどんどん熱くなっていく。まさか俺の俺自身が興奮するあまり、体中の欲望があふれ出し血の巡りが暴走してしまったのではないか。もしくは、さきほどの竜宮ダンスは黒魔術の儀式に類するような、見たものに呪いを与える危険極まりないものだったのか。汗がナイアガラのように溢れ出て、体は悪寒でガタガタ震えた。
ああ、罰が当たった、じいちゃんの好意をこんな破廉恥なことに利用するなんて。
熱かったり寒かったりで指を動かすことすら苦痛だったけれど、意志の力でどうにかパソコンの検索履歴や閲覧履歴を消して電源を落とした。いつ帰ってくるかわからない祖父母に、卑猥世界の痕跡など見せられるはずがない。
エロ動画ではしゃいでいたさっきまでの自分と、今の苦しんでいる現状とのギャップに呆れつつも、呆れる余裕があるのかと今度は自分に感心し、ついには床に突っ伏した。
一時間、はたまた一分か。視界が戻るにつれだんだんと熱も悪寒も引いていった。でも、目だけはいつまでも熱っぽい。俺は目を冷やそうと洗面所へ行き冷たい水で顔をごしごし洗った。
そのとき玄関から施錠が外れドアが開く音がした。「あら、いたのかい」祖母が帰ってきたのだ。
「ばあちゃん、なんか目が熱い」
もしタイムマシンでこの瞬間に戻れるのなら、俺はしたたかに小学生の己の頭を打ち据え、可及的速やかに意識を断つだろう。実際そんな虚しい空想を何度もした。
「目? あんた隠れてずっとゲームでもしてたんじゃないのかい。どれ」目と目が合った。祖母の動きが止まり、頬がみるみる上気していく。その目が、何かを求めるように熱っぽく俺を見た。そうかと思うとぎゅっと瞼を閉じ頭を振った。
得体のしれない不安が俺の胸を満たしていった。
祖母は熱に浮かされ彷徨うような表情で、また俺をぼうっと見る。恐る恐るといった感じで俺の方に手を伸ばし、両肩を強く掴み、続いて顔を近づけた。
唇が迫る。祖母のすえた口臭がした。
その瞬間、気が付いたら反射的に祖母を突き飛ばしていた。
どうしてよいかわからず、とにかく外へ駆け出しだ。ひどく混乱していた。それはそうだろう。育ての親である祖母から、突然キスを迫られたのだ。陰毛が一本生えたくらいの小学生の処世術では、どうしたって上手く切り抜けられない。そもそもそのような処世術は存在しない。
混乱にまかせ外へ飛び出したが、特に行くあてはなかった。かといって、近くの公園なんかにいたのでは、すぐに祖母に見つかってしまうかもしれない。
探しに来てくれたらだけど。
そう思うと、急に祖母を突き飛ばした感触が手に蘇り、心細くなった。今のような状況で祖母にどう接してよいのかわからないし、帰るタイミングも難しい。家に戻るのが怖いとも思った。
とぼとぼ歩きながら、混乱が収まってきた頭で祖母の行動を考えた。途中まではいつもの祖母だった。目の異常を訴えたら、少し小言を言いながらも目の様子を確かめようとしてくれた。冷静になって振り返ると、目があった直後から急に様子が変になったように感じた。頭を振って何かに必死に耐えている様子だったし、突き飛ばされた後の表情は急に夢から醒めたようで、それからみるみる顔が青ざめていった。きっと玄関から飛び出す前に見たのはいつもの祖母のはずだ。
竜宮ダンスの呪いか。そのときの俺は本気でそうかもしれないと考えた。でないと祖母がキスを迫るなど、到底考えられない。
(ばあちゃん、今どうしているのかな。きっと自分を責めに責めて、寝込んでいる)
俺はエロ動画に浮かれて奇声を上げる小学生ながら、それなりに物事を考え、それなりに素直でもあった。
家に帰る踏ん切りがつかず歩いていると、道路の側溝に捨てられたポテトチップスの袋が目に留まった。祖母はポテチをねだった次の日に、じゃがいもを薄く切って素揚げしたものに控えめに塩を降った手作りのおやつを用意してくれた。お店のポテチがいいのにと思いながらも、俺はそれに伸びる手を止めることができなかった。祖母は祖母なりのやり方で、目一杯愛してくれていた。
(ああ、家に帰りたい)
思わず涙で目がにじんだ。溢れ出そうになる切なさをこぼすまいと目を見開き、空の上にいるらしい母を見上げた。
(ねえ、俺はどうしたらいい?)
オレンジとベージュと紺色の綺麗なグラデーションに絶望しながら、ただ空を睨んだ。すると溜まった涙であやふやになった視界に、移動する黒い点が映った。カラスだろうか? でも羽ばたいている様子はない。俺は大事な何かを見落とすまいと、目を皿にした。人影のように見えた。いや、確かに人影だった。誰かが身一つで、夕方と夜の狭間を飛んでいた。
俺の頭の中で記憶が跳ねて、唐突にテレビのCMを思い出す。「マレビトとわかったら今すぐ近くの内務局へ行こう!」そうだった。この世界には、マレビトという不思議がある。
空飛ぶ人影を見た途端、俺は理解した。自分もきっとそうなのだと。すると自然に帰る決意が固まった。帰ってばあちゃんに言わなければ。俺、マレビトだったみたいって。異能が覚醒したせいで変なことになったんだって。だからばあちゃんは何も気にすることはないんだって。
俺は、祖母の意味不明な行動の原因が自分にあるかもしれないということに思い至り、もやもやした気持ちが晴れていった。
体の異変は目から始まり目で終わった。異能は目に関係するものなのかもしれない。
確かめるため、家に帰る途中に出くわした猫に向かって焼けつくような熱視線を浴びせてみた。すると、猫は辛抱たまらんといった様子で俺のすねに飛びつき体をすりつけてきた。これは決定的だ。でもまさか人間以外にも通用するとは。俺は覚醒したばかりの異能の節操のなさを恥じた。
家に戻ると、思った通り祖母は寝込み、祖父は訳が分からずただおろおろしていた。でも、祖母は俺を見るなり急に布団から飛び起き夕飯の支度をし始めた。
祖母は床に伏せる間、自分の中に突然沸き起こった許されざる感情を恐れ、嫌悪した。自責の念で死んでしまおうかとさえ考えたらしい。しかし、俺の顔を確認した途端、彼女は孫に食べさせる夕飯を作っていなかったことを思い出したのだ。
恐るべき母性。いや、習慣のなせる技だろうか。それほどにこの祖母の人生の中心には俺がいたのだ。
俺は突然台所に立った祖母のそばで、祖父には聞こえないよう自身に起こったであろうことを説明した。祖母が気にすることは何もないということも精一杯伝えた。
祖母は途中から米をとぐ手を止め、俺をじっと見つめていた。
「お前も異能を手に入れちまったのかい」
寂しそうに、そう言った。
俺が生まれてしばらく後、この国ではHR因子を持っているかどうか、すなわちマレビトかどうかの検査が生後すぐの赤ん坊に義務付けられた。検査でマレビトと判定されたときは、マレビトを管轄する国の機関――内務局のリストに登録される。産まれてすぐに異能を身につけているようなマレビトはまずいない。いたとしても、どんな異能か赤ん坊が説明できるはずもなく、だから生後すぐのリストには、住所、氏名、生年月日、性別くらいの情報しか記載されない。その代わり、成長過程に合わせて定期的にリストの更新が義務付けられている。特に異能を覚醒したときには、定期更新の時期に関係なく必ず内務局へ届け出なければならなかった。
でも、運用され始めたばかりのリストは体裁だけの制度に留まり、なかなかスムーズに機能しなかったようだ。登録・更新はマレビトの義務とされているが、律儀に守る者は決して多くなかった。自らマレビトであることやその異能を公にすることは、マレビト本人にとってのメリットが少なかったからだ。仕事として公的に異能を使う者や国のマレビト優遇施策を受けたい者達以外は、わざわざマレビトだと判明した時点で登録したり異能の開花にあわせて更新したりしなかった。
近年になってようやく、様々なインセンティブとなる仕組みができ、リストの登録件数や更新件数が伸びてきているという話だ。ガーデンもその一つで、入学にはリストへの登録が必要だ。
まだリストが体裁だけの制度だった時代にも関わらず、当時の俺はリストの登録のために内務局へ行った。この国の仕組みを義理堅く守ろうとして、というわけでは決してない。
手続きの最中、「他に書きようがないもんかね、欲情させる能力だなんて」と、祖母はため息交じりにぼやいた。祖母はリストの登録に反対だったんだ。
登録した情報は、マレビトが進学や就職など、そういう人生のなにかしらのイベントで必要となることが多々ある。そんなものに欲情させる目を持っているなどと記載されていたら、俺の人間性とかいう以前に、否応なく好奇の目に晒される。そして晒されるだけならまだしも、偏見と悪意をその身に引き寄せること必至である。それを心配する祖母からリストに登録しないように何度も諭されたが、俺も頑固だった。
公的なものに自身の異能が登録されることで、祖母の痴態を公然と異能のせいにできる。俺としては、それは祖母の身の潔白をこの上なく完璧に証明する必要不可欠な行為だった。
いかんせん世のルールでは俺の主張が正しかったため、最後には祖母が折れた。
そうしてめでたく俺のリストには「色眼――目の合った生物を自分の思うままに欲情させる」という破廉恥極まりないセンテンスが加わった。登録を受けつけた職員が吹き出したのは言わずもがなだ。
そうして俺なりのやり方でその身の潔白を証明した祖母も、俺がガーデンに入学する前に死んでしまった。