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第50話 仕上げ

「パーラの奴は本当に人が良いと言うかなんと言うか……」 


 かなめの苦笑いに誠もうなづくより他になかった。深夜、もうすぐ日付が変わろうとしている。サラ達運用艦『ふさ』のブリッジクルーの女性隊員達はただ一人酒を飲めなかったパーラの運転するマイクロバスで誠の実家の道場を出て行った。


 かなめとアメリア、そして誠が見送る。カウラは今は道場の床を薫と一緒に掃除している。


「おい、神前。いいのか?明日だぞ」 


 かなめのタレ目が誠に向かう。満面の笑みに誠は酒を出来るだけ控えていた理由を思い出した。


「大丈夫よねえ。その為にあまり飲まなかったんだから」 


 そう言うアメリアに誠は自信を持ってうなづいた。さすがに冬の晴れた日。日が落ちてからはどんどん気温が下がる。暖房といえば煮えたぎる鍋が有った先ほどの宴は過ぎて、羽織るどてらに冷たい風がまとわり付く。


 三人はさっさと玄関に向かい、引き戸を開いてあがりこんだ。


「じゃあ、僕は作業があるんで」 


 そう言い残して誠は階段を駆け上がって自分の部屋に入った。邪魔するものも無く机の上にはカウラへのプレゼントのイラストが乗っていた。


「ふう」 


 ため息をついた後、そのまま机に向かう。実はカウラのドレス姿は細かい修正が残っているだけで、すでにほぼ完成していると言ってもいい状況だった。


 いつものポニーテールを解いたエメラルドグリーンの髪、その額の赤い石の輝くようなティアラ。胸のネックレスにも同じような赤い石が光る。まっ平らな胸が少し増量されているように見えるのはご愛嬌だと誠は思わず笑みがこぼれる。


 しばらく誠はじっとその絵に見入っていた。表情はいつもの緊張したカウラのものではなく、少しばかりやわらかくアレンジしてみた。


 めったに見ることが出来ない安心したような笑顔。かなめなら『こんな顔か?こいつ』とか言われるかもしれない。そう思いながらとりあえず首飾りの輪郭などにペンを入れる作業を始める。


 師走だというのに静かな夜だった。下町の繁華街と住宅街が入り組んだ町には似つかわしくないほどの沈黙。誠はそんな中で静かに作業を続けていた。


 ふすまの外でごそごそと音がして振り返る。


「じゃあ、私達は寝るけどがんばってね」 


 アメリアがささやくように告げて立ち去る。少しはあの人も気を遣うのかと失礼なことを考えながら誠は細かい部分にペンを走らせる。


「喜んでくれればいいんだけど」 


 そう思いながら誠は休まずに一気に仕上げようとペンを持つ左手に集中した。




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