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第5話 警察の本気

「15日ねえ……」 


「なんだよ言いたいことがあればはっきり言え」 


 かなめはアメリアの思わせぶりな態度に苛立っている。カウラと言えば二人にあきれて詰め所に帰るタイミングを計っている。だが彼女達より圧倒的に階級が低い誠はただ黙って彼女達が次の行動を決めるのを待つしかなかった。


「この前の同盟厚生局のはねっかえりを潰した件のおかげで今回のライブはルカが仕切ってくれることになってたし……まあ総舵手のルカは『ふさ』が動かない限り出番も無いものね」 


「マジかよ。おい、サラ。最後の仕事だそうだぞ」 


 かなめがコンピュータ端末の画面から伸び上がり目をやった先には死にそうな表情のパーラが台本の下書きを手に取っている様が見えた。


「わかったー……」 


 ドリンク剤の効果もないというように半開きの目が痛々しいサラがそれを受け取ってしばらく呆然と天井を見上げているのが見える。


「つまり……私と誠ちゃんはフリーなのよ!」 


「何を言い出すんだ?」 


「病気だ。ほっとけ。詰め所に帰るぞ」 


 突然力強く叫ぶアメリアだが、サラ達の疲労が伝染したと言うような疲れた顔をしてかなめは誠の隣に来て肩を叩く。一方、明らかに胡散臭そうなアメリアの言葉にカウラは無視を決め込もうとする。二人に連れられて誠は修羅場から立ち去ろうとした。


「ちょっと待ってよ!これはいい企画が……」 


「私の誕生会でもやろうって言うのか?素直にクリスマスがしたいって言え」 


 カウラの一言にアメリアはまるで衝撃を受けたようによろめく。いつものように芝居がかった動きでそのまま原稿の仕上げをしているサラの隣の机に突っ伏した。


「アメリア。みんな呆れてるわよ」 


 そう言ってサラは誠達に目もくれずにもくもくと作業を続けている。


「サラまで……」 


「私もルカの手伝いをしろって言ったのアメリアじゃないの」 


 明らかに不機嫌そうにそう言うとサラはアメリアを無視する体制に入った。


「まあそうね」 


 サラが構ってくれないことで芝居をやめてアメリアは立ち上がった。


「じゃあサラ達を排除したクリスマスの企画。これを考えてくる。ハイ! みんな。これ、宿題だから」 


 そう言うといつものように急な思い付きを誠達に押し付けて颯爽とアメリアは部屋を出て行った。


「何が宿題だよ……どうせ待機だよ。アタシ等が休んで良いわけねえだろうが」 


 吐き捨てるようにそう言って歩き出すかなめだが、彼女についていこうとした誠の顔を心配そうに見つめているカウラを見つけて振り向いた。


「カウラさん……何か?」 


 思わず誠は不安そうな顔のカウラに声をかけた。そこで一度頭を整理するように天井を見上げたカウラが覚悟を決めたと言うような表情で口を開いた。


「それなんだがな。何でも……東都警察の法術部隊が本稼働するんだそうだ」 


 突然のカウラの言葉に誠は呆然とする。


「法術部隊が本稼働?」 


「それが突然隊長に連絡があったそうだ……上からはしばらくはうちは動くなって言う命令が来ているそうだ」 


「でも……なんでですか?」 


 カウラの言葉に意味が分からず誠は聞き返した。


「金星を挙げたいんだろうな……法術対策は司法局の専権事項じゃないという所を見せたいんだろう」 


 そう言うとカウラはとぼとぼと歩き出した。


「これで法術がらみはすべて司法局って話も無くなるわけだ」


 かなめはそう言って腕組みをする。


「でも……そうするとますますうちの存在理由って無くなりません?」


 戸惑った表情を浮かべてつぶやく誠をカウラは呆れたように見つめる。


「警察は地方自治体を超えて活動するには制約がある……それに法術が軍事転用されたら当然うちの出番となる訳だ」


「軍事転用……そんなことこの前の同盟会議の声明で法術の軍事利用の停止が宣言されたばかりじゃないですか」


 正論のつもりでそう言った誠の肩をかなめが軽くたたいた。


「そんな声明なんぞ誰でも無視できるぞ。あくまで口だけは軍事転用しませんよと言っただけだ。この前の厚生局の暴走を見てみろ。どこもかしこも隠れて強力な法術師を養成してるに決まってるんだ」


 かなめのうがった見方に厚生局本局前での市街戦を経験した誠はうなづかざるを得なかった。


「というわけだが、どこもすぐに馬脚を現すようなへまはしてくれないだろうがな……うちが動くのはまだ先になるだろうな」


 カウラはそう言って誠達を従えて廊下を歩きだした。



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