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ひぃちゃん、つれづれ  作者: メラニー
9/25

ひぃちゃんの思う私

 私の事も心残りがあると言っていた。


 私と会話をすると、時々私のトラウマを感じるというのだ。

 感じるのだけど、踏み込んでいいのかどうかわからなくてずっと、聞けないでいると。

 でも私が、そのトラウマを聞いて欲しがっているように感じるというのだ。


 でも、私には何も思い当たるトラウマが無くて。


 以前の話。

 ひぃちゃんは私に対して「キャラ設定」があると感じる事があった。

 しかし後日それは、説明不足による勘違いであることはわかったのだが、実際のところその一つの会話から感じたわけではなく、時々感じていた事でもあった。


 というのも、私は未婚者なのだけど、ひぃちゃんは私に結婚して欲しかったんだと思う。

 「姉妹の上二人は結婚して子供もいるから、もう私くらいは結婚しなくても問題ないでしょう」とひぃちゃんは言っていたし、結婚のデメリットの話もよくしていたけれど(私も賛同していたけれど)、本当は一度は(経験として)したかったんだろうなぁと。

 そして、それを同級生の私に投影していたのではないだろうか。


 結婚に対して及び腰であるけれど、深層心理では結婚したいのではないだろうか、という投影。


 それに付随して、……まぁね、これを読んでくれている奇特な方も、それなりの年齢なら若気の至りという名の黒歴史の一つや二つはあるだろう。

 私たちは、その黒歴史の大半をお互い知っている仲なのだ。

 分厚い歴史がフィルターとなって、現在の私という存在を見る時、時々歪んだり盛ったりしてしまう部分もあったのかもしれない。

 私も、ひぃちゃんをそういうフィルターで見ることは多々あったし、笑いの神フィルターはひぃちゃんを知る色んな人が持っていたと思うから……そういうキャラ付けがあるのも仕方がない事だ。それが歴史だ。



 でも、どうしてもトラウマがあるというので、ひねり出したのが「疎外感」だった。


 私は物心ついた時から、何の根拠もないのに世の中から仲間はずれにされているような疎外感を感じていた。

 別に虐待をされて来たわけでもなく、家族に問題があるわけでもなく。


 だから物心ついた時から、自殺願望がある。しかし、同じだけの力でそれはいけないと押さえつける何かも飼っている。

 でも確かに、消えたいとは常に思ってきた。

 それらは全く根拠が無いし、誰しもがそういう時もあるのだろうと納得して解決していた。

 もうずいぶん前の話。子供の頃の話。


 人からとか、学校や友達から、社会からというよりも、全てから疎外感を感じていて、例えば、森の中に一人で居たとしても、森から疎外されていると感じる。

 勿論、友達たちと遊んでいても感じている。(友達に失礼だから言ったことは無いけれど)

 そういった類の。


 小学校の頃に塾の先生の雑談に出てきた「被害妄想」という言葉を知って以来、それだな、と当てはめた。

 私の中ではそれで解決しているのだ。


 解決はすれども、疎外感を感じたくて感じているわけではないので、呼吸や心臓を動かしているのと、食べたものを消化しているのと等しく勝手に感じているから、消し去ることは無理なのだ。


 でも友達と一緒に居て楽しいとか、そういう気持ちも確かにあるのだから問題ない。

 私はそう思って、ずっと生きてきた。


 これで、ひぃちやんは一応納得したとは言ってくれたけれど、心底納得はしていないようだった。


 私もあれから、ひぃちゃんがそこまで引っかかるトラウマとは何だろう、私は一体どんな禍々しいオーラを纏っているんだろう(言い過ぎ・笑)と考え続けている。

 ここには書けないが、誰が聞いても、同情してくれるような、かつ、馬鹿だなぁと蔑まれるような過去も持ち合わせてはいるけれども、もうトラウマは過ぎた。

 納得しているし平気だ。



 ──(この部分は本文と関係ないから飛ばして問題ないです)────




 そうやって色々と考えて、別件なんだろうか?思い当たった事がある。


 自分語りになるけれども、恥ずかしすぎて誰にも言って事の無い話。



 私は「疎外感」と同じだけずっと心の中に持っている気持ちがある。

 「疎外感」の傍らにずっと居た。

 それが「会いたい」という気持ち。

 物心ついた時から、ずっと持っていた。


 まだ保育園にも行っていない頃の記憶。


 たまたまテレビから流れて来きた、中島みゆきさんの「旅人」を聞いて「会いたい」と思って泣いてた。

 誰に会いたいとかは無くて、もちろん中島みゆきさんにではない。

 親に泣いている事を見つかりたくないから、誰よりもテレビの前に行って黙っていた。


 それからずいぶん時が流れて、友達が日渡さきさんの「ボクの地球を守って」を貸してくれた。

 前世という概念を知って、とにかく泣いた。

 私が一般的に厨二思想を持つ年齢に達する前の話。(歳がばれそうだ……)


 自分に前世があると信じているわけでもないし、前世自体があると声高に言うつもりもないのだけど、巷にあふれる前世もののお話に、たまたまブチ当たって読んでしまうと、光の速さで泣いてしまう事は変わっていない。


 もちろんそんな時は、いつも以上に「会いたい」と思う。そして、思うだけで泣いてしまう。

 どこからその感情が来るのか謎だ。

 私が今までかかわった、本当に実在する人や、元カレと交際していた頃の気持ちや、星になってしまった親族やペットなどへの気持ちが刷り込まれて脳が勘違いをして、そういう気持ちがねつ造されているんだろうと思うのだけど、消えない。


 忘れたのに残った。


 憧れなんだろうか。

 そういうものに。

 誰か、まだ私に巡り合ってくれていないのだろうか?

 もし私が深層心理で心底そう思っているのなら、私はひぃちゃんの言う通り、かなりの乙女なんだな、と思ったりもする。


 しかし、私は結婚はしないだろう。がっかりしたくないし、がっかりさせたくない。

 あの頃はまだ子供で、今は少し大人になった。その分だけATフィールドが分厚くなった。

 今よりもっと大人になれば変わるのかもしれないけれど。

 すまんな、ひぃちゃん。


 あー、はずかし。




─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─



 しかし、ひぃちゃんはずっとそういう目で私を観察し、感じて、時に気を付けながら接してくれていたんだなぁと、不思議な気分になった。


 こんな会話も、コロナ下の入院患者と友達だから、ラインで行うしかなかったのだけど、もし会ってお泊りなんかでしゃべっていたらまた変わったのだろうか。

 少しでも、心残りが減っただろうか。



 ラインでのやり取りはほぼ毎日続いた。

 食べられた病院食の報告やら、癌を発見してくれた主治医が転勤して離れていたのだけど、たまたま同室の患者さんの主治医として再会しそうな話。これは、多分再会したと思うけれど、昔の主治医を病室で見た、という所で話が途切れたまま、ひぃちゃんはいってしまったのだ。

 他にも病室の誰の興味もない昔の人脈自慢おばあちゃんの話や、ブラック会社社長に共依存で大変な状態の悲劇のヒロイン女性の話し、あーちゃんがみちょぱになりたい話、あーちゃんの作品が売れている話、宝石の話、体臭の話、もちろん病状の話。


 ひぃちゃんの知識量はすごく、うんちくの精度がすごい。

 どこの国のとか、何年のとか、別名がとか、そんな話をしながら毎日が過ぎていた。

 取り留めも無い、後から読み返さないと思い出さないような話し。


 3月25日も例外では無かった。というよりも、この日は特に長いあいだラインで話したと思う。

 主に、例の昔の主治医を見つけた話と、その主治医の担当している患者さんが(性格的に)かなり大変そうで、声がかけにくいという話。

 いつもより長く話をしたような印象で残っている。


 26日、日付が変わった頃、私がまた何でもない話をしようと画像をトークルームに上げた。

 私とあーちゃんがスタンプ合戦をして、朝にひぃちゃんが「ごめん、寝落ちしてた。」と。


 その夜に、あーちゃんが「無事か?」とメッセージした。

 その時はすぐにひぃちゃんからスタンプが届いた。



 27日は、翌日に病院へ会えないことを前提に、差し入れを病院に持っていく予定にしていた日で、明日行くという事を伝えたり、無駄にスタンプを送ったりしたが、既読になるだけだった。



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