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ひぃちゃん、つれづれ  作者: メラニー
8/25

ひぃちゃんとあーちゃん

 2021年の元旦。ひぃちゃんは確か入院していたと思う。


 寿司同好会でお茶をした数日後に入院して、そこから2月まで入院していただろうか。

 その間も仕事はしていた。定かでは無いけれど、確実に12月の末ごろまでは仕事をしていた。

 ひぃちゃんが最後まで仕事をしていたクライアントさんは一体どうしただろうと、いまだに心配になる。

 そりゃ、どうにかなっているんだろうけれど。


 やっと退院出来たのは2月中頃。

 これでまた食事に行けると、寿司同好会でライン会議を開始した。

 いつもの流れならお寿司だけれど、病院食が長かったひぃちゃんはガツンとしたものが食べたいようで、インドカレーが食べたいとリクエスト。

 そこから、電動車いす又は私の車で向かうなら手押しの車いすで行ける店のリサーチを開始した。


 もともとカレーが苦手で食べなかったひぃちゃんにインドカレーを食べさせたのは、私だった。

 カレーが苦手だったことを失念していて、何か食べて帰ろうっという時にカレーを提案してしまい、いつも食べないし食べてみるか、という気持ちになったのがきっかけだった。

 確かに、学食でカレーを食べているところを見たことが無いかも。(欧風は特に苦手だと思う)


 そこから、スパイスや辛いものにも興味が出て来て、一緒に出かけたついでにスパイスを買いに行ったこともある。

 でも、外でカレーを食べたいというのは、とても珍しい事なのだ。


 しかし退院したものの、なかなか食べる力が回復しないので、実行には移せなかった。

 お粥なんかも血糖値が上がり過ぎて、頭痛の上気絶すると言っていたし。

 そんな中、私が牡蠣をお取り寄せしたという話から、あーちゃんもひぃちゃんもお取り寄せをして、私たちの中で第二期牡蠣ブーム到来。

 (牡蠣ブームは前年にもあって、私は3回ほどお取り寄せをしている)


 なのに、なぜかあーちゃんには速攻届いたのに、ひぃちゃんにはなかなか発送されないという、またもや笑いの神の寵愛が発動して、ひぃちゃんに届いたのは3月7日だった。

 ご家族にソテーにしてもらって1個食べて、体がだるくなって一時間休憩したのちに、また1個食べて……といった状況。

 ご家族もそんなに精のあるもの食べて大丈夫か心配したらしいけれど、本人が食べたいのだから仕方がない。

 美味しかったと言っているから、本当に良かった。



 退院してからは体の浮腫みがひどく、体力も無い状態で階段を上がる事が出来ず、2階にある仕事部屋兼アトリエに行くことは到底無理だった。

 (原因は体力が無い事と思われがちだが、身体に溜まった水の重みで、筋力も無いので動けないのだ。脚も上がらない。何リットルも体に巻き付いている状態。)

 体力が無いのは食べれないのもそうなんだけれど、12月にはお寿司とチョコレートケーキを食べていたし、そもそもお出かけが出来ていたのに、こんな短期間で体の状況が急変しているんだな、と改めて癌の恐ろしさを感じる。

 それでも、ラインで毎日のように会話をしている私は、まだここから頑張って食べてある程度回復をするものだと思っていたのだ。


 だって、私は知っていたから。

 中学の頃でも高校の頃でも、あの足首をボロボロに骨折した時だって、全部笑い事にしてよみがえっていた。

 いつでもどんなケガをしても病気をしても、最終的に針に糸を通すような、そんな方法があったの?そんな事あるの?という笑い話にしかならないような状況で復活してきたのだ。



 それからすぐだった。

 3月10日にひぃちゃんは再入院をした。


 後から聞いた話、どうしてもアトリエに行きたいと言ったひぃちゃんをご両親がどうにかこうにか、アトリエのある2階に上げたらしい。


 すごく悔しかったんだろうと思う。私たちに見せない姿だけど。

 その気持ちを私たちにも、すごくマイルドにして伝えてくれてはいたけれど。

 目の前にあるのに、すごくこだわって設計してもらった部屋なのに自分が使えない。

 大切なもの、大好きなものを詰め込んだ部屋なのに、行くことすらできない。

 それがどれだけ悔しかっただろうと。

 しかし、そこから降りるのも一苦労で、降りた時には救急車を呼ばないといけない状況になっていたらしい。


 その日の夜、ラインで話した時には、マイルドひぃちゃんに戻っていたというか……その状態を保っていてくれたけれど。

 その時は透析の要領で体にたまった水を抜く施術を始めることになったと、少し希望ができたのかな、という話をしてくれた。



 しかし、すぐに状況が変わってしまった。

 19日には、今すぐにどうにかなってもおかしくない状況だと告白してくれた。

 もし「そう」なったら、延命治療をしないことを医師と相談したことも。


 なので、次の退院が帰宅できる最後のチャンスで、一度帰ってみて、やはり自宅介護は無理だという事ならホスピスに入るという予定も話してくれた。

 本当に強い人だ。


 私はひぃちゃんの話す内容を、いつものフィルターを通して読み取ってしまい、「一番良く行けば」の状況で理解してしまう。けれど今、それを読み直すと「今心臓が止まってもおかしくない状況」という一文が一番正しかったのだなぁとわかる。



 この頃から……いや、そうでもないか。もう少し前には予兆はあった。

 でも、この頃から如実に、ひぃちゃんはやり残した事というか、聞きそびれた事、伝えてなかった事、心配な事を話題に織り交ぜるようになった気がする。



 ひぃちゃんが、あーちゃん本人にはずっと言っていなかったけれど、私には時々言ってた事。

 「あんなにまっすぐでいい子はいない」と言っていたのと同時に、あーちゃんの一生懸命に気遣いをする性格を、ひぃちゃんはずっと心配していた。


 「人に気遣いして、それを一所懸命に伝えたり、相手の不自由だったり不快に思っているかもしれない事を解消しようとする人はいない。本当に疲れて壊れてしまわないか心配」と言っていた。


 確かに、あーちゃんはとても優しく、自分にできない事を人にやってもらうような場面で、やる側は何とも思っていないくても、それに対して、とても申し訳ないという気持ちと感謝の気持ちを、言葉と行動で示してくれる。


 例えば、車の運転にしても、全く私たちは(遊び始めた頃はひぃちゃんも運転していたから)何とも思っていないのだけど、すごく申し訳なさそうにしてくれるし、運転中、盛り上げてくれたり頻繁におかしとかを出してくれる(笑)

 そういう小さい事から始まって、ひぃちゃんの癌や余命カミングアウトにしてもそう。


 私は「本人がそう考えて、そうすると言っているのだからな、」とただそのまま受け入れるようなことを、あーちゃんは一つ一つかみ砕いて、自分が出来ることは無いかと丁寧に聞いてくれるのだ。


 最後の入院に入ってからのある日、あーちゃんがとある霊験あらたかなお寺でご祈祷してもらってくると言った。

 病気平癒では全国的に有名なお寺。

 それをひぃちゃんに伝えるとひぃちゃんはとても喜んだ。

 有言実行。後日ご祈祷におもむき、あーちゃんは燻製の様に燻され、火であぶられたらしい。(笑ってはいけないけれど、そこだけ切り取るとめちゃくちゃ面白い)


 本当に自分にできることは無いかと、探して実行する、そういう人。

 ひぃちゃんは心から嬉しかったと思う。

 (私は以前食べたいと言っていたフレンチおでんを持っていくわ、と言ったくらいだしな……、)


 ひぃちゃんは、そんなあーちゃんの事を尊敬していたし、好きだったのだ。

 他の人にはやろうと思っては出来ないくらいの気遣いのプロ。

 そんな事もちらっと会話に織り交ぜていた。



少し長くなるので、今日はここまで。

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