表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひぃちゃん、つれづれ  作者: メラニー
19/25

スタンプ二つ

注:今回は、私とあーちゃんのネックレスのオーダーがメイン回です。

なんじゃそりゃ、かもしれません……

 私たちの行動は早かった。

 というのは、例のベリルのお仕立ての話。


 すぐさまお仕立てできそうなところを調べて、でもその辺りはまだ全く明るくなかったので、間違いのないところを選んだ。

 日本のオーダーメイドジュエリーでは一番の大手だと思う。ショップに行けるのもいいし。

 コロナの事もあり、予約を入れて、お店に二人で行ったのは4月9日の事だった。


 せっかく街に出るのだから(コロナ下で全く街に出なくなっているので)ひぃちゃんと行くかも知れなかったカレー屋さんでお昼を食べることにした。

 お店に行ってみて、階段の段数が予想以上で、これはあの状態のままだったらひぃちゃんは無理だったなぁと思ったり。

 もちろんカレーはおいしかった。

 ここも、いろんな友達と来て思い出のあるお店なんだけど、ひぃちゃんとも来たかったなぁと思う。


 肩幅くらいあるナンは、到底ひぃちゃんは食べきることができなかっただろうな(笑)

 私も無理だった← (お持ち帰りさせていただきました)



 街に行くと、寄ってはいないのだけど、ひぃちゃんとの思い出があるお店ばかりなんだなぁ、と改めて実感した。

 高校の時に新しく出来て寄り道をしたアクセサリー屋さんだったり、社会人になってから北欧系の雑貨屋さんに初めて訪れた時は「基本カラフルでポップなゴミしか売ってないね、」と二人で結論したお店だったり。


 思えば高校の頃、制服でフラフラと寄り道をして帰るのって、あの頃はお金も今よりないし、世の中の事を何でも分かっている気でいるのに何も知らなかったり。

 意味も無く川沿いを歩いたり、安いコーヒー屋さんに入ってフライドポテトを食べたり……

 その頃にしかできない事だなぁと、すごくノスタルジックな気分になる。


 あの頃はあの頃で辛いことがあったりもしたから、戻りたいとは言わないけれど、数日は体験しなおしてみたい気分になる。

 大人になると、誰しもがそんな事を感じる瞬間ってあるのではないだろうか。

 何を辛がっていたんだうな。その先、もっと辛い事なんていっぱいあるのに。

 それでも、その時はそれが辛かったんだから仕方ないか。

 でも、ひぃちゃんはいつも達観しているのに、ちゃんと一つ一つに向き合っていたなぁと思い出す。



 オーダーメイドジュエリーは、あーちゃんと私が最初から作りたいと思っていたイメージは「普段使いができるシンプルなもの」だった。

 私は最初からネックレスと決めていたんだけれど、あーちゃんはリングかネックレスで少し迷っているようだった。

 色々と話を聞き、商品やスタッフの方々の私物の拘りジュエリーを見せてもらったりして、結局は2人ともネックレスに。

 というのもやはり指輪は貴金属で作ると高い……


 私のイメージはブラウスでもTシャツでもマッチするシンプルなもの。

 そういう意味で、結果的に無色に近いベリルは大正解だった。

 しかもスクエアであることも大正解。

 カジュアルでもあるし、どフォーマルとまでは行かないまでも、オフィカジくらいまでは通用する。


 ひぃちゃん、すごいね!


 これが色付きの石だったり、特殊カットだと何にでも合うとまでは行かない。

 そりゃ、ひぃちゃんがタンザナイトが好きという記憶が強烈にあるから、タンザナイトだったら嬉しかったのは嬉しかったけど、何を着てもタンザナイトが主役になってしまう気がする。

 (タンザナイトは、ティファニーが当時、見向きもされなかった石に「タンザニアの夜空の色」という、産地への敬意も含めタンザナイトと命名し売り出したことにより、知名度と人気が出た宝石。青とも紫ともつかない、透き通った群青色なので、一気に主役になってしまうくらい存在感のある石なんです)


 そういった意味で本当にベリルは正解。主役には躍り出ないけど、輝きがすごい。

 どんだけ徳を積んだら、死後に奇跡をコントロールできるようになるんだろう。


 私たちは、お互いに3パターンくらいデザインをしてもらった。

 元々私はシンプルなのもがいいと言っていたし、半貴石やレトロでクラシックなデザインで有名な某ブランドが好きだと言っていたのもあって、その辺りのデザインでスタートした。

 ミル打ちで石留めをしたもの、爪で石留めしたもの、香水瓶のように装飾をしたもの、それらの組み合わせ……みたいな感じだった。

 香水瓶のデザインは宝石部分を瓶に見立てて、その上に小さな瓶の蓋的な装飾を置いたものだ。蓋の形を六角形だったりひし形だったりで、2人のデザインも被らないようにしてくれた。

 シンプルなものを所望している私たちにも、華美に見えることは無いとても素敵なデザインだった。

 ひぃちゃんなら、絶対このデザインにしただろうな。

 「すてき!すてき!」って言いながら。


 最終のオーダーは、私は香水瓶にするのは、高くて断念。

 ネックレス部分をボールチェーンにしたのだけど、このボールチェーンが高いのだ。

 いや、わかってはいたんだけれど。ボールチェーンはシンプルに金属の総量が多くなるし技術的にも手間がかかる。

 でも、ミラーカットされたボールチェーンが好きなのだ。

 ペンダントトップの部分は、石の周りをミル打ちで石留め。

 ストンと重みのある落ち方が良いと思って、別でバチカンを付けないけれど、ペンダントトップの裏に作った穴にチェーンを通すタイプ。

 色はピンクゴールドにした。

 イエローゴールドが好きなんだけど、ネックレスは顔に近いから、肌になじむ色の方がいいかと思って。


 あーちゃんは香水瓶型で、蓋部分を六角形でタンザナイトのメレ一粒追加で。タンザナイトはミル打ちで石留め。

 メインのベリルは爪で四点留め。

 チェーンは一般的なあずき型で両引き(チェーンにペンダントトップを固定する)にした。

 色は私と一緒のピンクゴールド。


 爪で留めるのは私のようなミル打ちよりも技術料が高い。

 あーちゃんあっぱれ!


 爪での石留めは彫金をしていたひぃちゃんの当面の目標でもあったようだ。

 覆輪止めは嫌いって言っていた(笑)

 美的な問題により彼女の拘りがあるようだ。

(柔らかい石は覆輪止めが良いんだけれど)

 

 ひぃちゃんがこんなことにならなかったら、このオーダーも無かったんだろうけれど、出来ればひぃちゃんも交えて三人でオーダーしに来たかった。

 そんな事を何度も思ったし、担当のスタッフさんからしたら耳にタコができるくらい二人ともつぶやいていたと思う(笑)

 そしてスタッフさんも、想像通りの石好きだったから、きっと4人できゃっきゃ出来たのに。



 でもこれで、ひぃちゃんのやり残した(であろう)事のスタンプ帳はやっと一つ……いや、カレーも食べたいから二つか。押せたと思う。

 ネックレスが出来上がるまでの1か月半ほど。

 長いようで短かった。

 その間に私とあーちゃんは、どっぷりと石沼へ引きずり込まれることになる。


 沼からひぃちゃんの手が確実に見えていた(笑)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ