TANAKA
『神のほかに神はなし』
「わたしはたなか、あなたは?」
「わたしは田中、あなたは?」
「私は田中、貴方は?」
たなか。田中。これがわたしのなまえ。
おもいだしてきた。なのに、
くらい。こわい。ぶきみ。
あたまが、いたい。われるように、いたい。
てをみると、まっかっか。
「あなたは、だぁれ?」
こえがする。振り向くとヒトがいた。
だぁれ?そうだ。なまえをいおう。
わたしのなまえは。えーと。えーっと。
あれ?おもいだせない。でも、
いたみひいた。うれしい。
あのひとのおかげかな。ありがとうしなきゃ。
「ありがと。」
「そうかそうか。それはよかった。」
「なんであなたはここにいるの?」
なんでだろ。おもいだせない。おもいだそうとすると、また、あたまいたい。
いたいのは、や。
「うふふ。」
なんであのヒトわらってるの。ぼくくるしいのに、なんでなの?なんで?なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
………
きがつくと。ひとりになってた。
またひとりになっちゃった。
でも、きぶんがいい。
いっぱいきぶんがいいひは。
いっぱいお話したくなる。
「ぼく、いまとーっても気分がいいんだ!」
「……」
「爽快って感じ。ねぇ聞いてる?」
「……」
舌打ちした。いっぱい気分がいいのに、
台無しだ。残骸を蹴って先へ進む。
薄暗いし、鉄くさいし、気味悪い。
早く家に帰ろう。
でも、何だか眠たくなってきた。
一眠りしてから動こう。そう思い、座り込み、瞼を閉じる。
瞼を開けると、無数の刃が向けられていた。
動こうとしても、動けない。
見渡すと人が沢山いた。
みんなケラケラ笑っている。
まるで見せものみたいだ。でも、不思議と何も湧いてこなかった。
じっとしていると、一本の刃がこちらに向かってきた。
痛いのはいやだなぁ。
足に突き刺さった。痛い。痛い。___
瞼を開ける。夢だった。とても怖い夢。
ふと足を見る。なんとも無い。
よかった。立ち上がろうとしたとき、
衝撃とともに視界を奪われる。
「え。」
顔を上げて、手を、ある場所にかざす。
ない。おかしい。そこにあるはずのものが、ない。
「wzrsぃxwでslxjl。」
「や、やだ……」
必死に這いずる。捕まったら終わりだ。
嫌だ嫌だいやだいやだいやだ。
手に伝わる感触が気持ち悪い。
鼻に伝わる匂いが気持ち悪い。
気持ち悪い、こんな所、早く抜け出して。
抜け出して……
「抜け出してどうするんだ?」
全て、思い出した。