3.勇者会議
《勇者視点》
「悪く思うなよ!!シュン」
俺はシュウをぶん殴った。
勇者に選ばれた俺の拳は、一般人より遥かに強いのは、当然なのだが、俺は手加減など一切せずに殴った。
魔術師のシュンが耐えれるわけもないが知ったことか。
「リヒト先輩!!さすがにやりすぎですよ!!」
慌ててシュンの方へ向かうアイリス。
リヒトはそんなアイリスを横目に椅子に座った。
「エアリス……説明して貰っていいか??」
「そうですね……。とりあえずみなさん座りましょう」
シュンに毛布をかけていたアイリスが座り話が始まる。
「私が幻術魔法に気づいたのは、本当に最近なんです」
「最近か……」
「はい……数日前にお休みをいただいた時に、私はランクアップをしてきました」
「ランクアップですか!?」
ミランダが驚きの声を上げた。
「ランク6へのランクアップに成功したのか??」
ランク5以上の存在は歴史上数名しか確認されておらず、ランク6は神の領域だと言われているほどである。
そのランク6にエアリスがなったっという事実に俺は驚きを隠せないでいた。
「私はランク5の聖女のランク6になりました。しかし前例がないランク6なので、いろいろ決まるまで皆さんにお伝えするのを控えていました」
ランク6になったことで職業名が変わったり、世界の個人ランキングなどの更新などいろいろバタバタしているのだとエアリスは説明を続けた。
「ランク6とか凄すぎですよ!!エアリス先輩」
興奮したアイリスがエアリスに抱きつく。
アイリスに抱きつかれながらエアリスは話を続けた。
「最初はランク6の力に慣れていなかったからだと思いますが、特にいつもと変わらないダンジョン攻略でした。でもある時、前で戦うシュンに違和感を感じ始めました。そこから数回行ったダンジョン攻略の後に、ランクアップした力に慣れてきたからでしょう。シュンの幻術魔法に気づいたのです。前で戦っているはずのシュンは現影……辺りを見回すと後方の方で横になり、指示をしているシュンを見つけた時はとても驚きました」
エアリスがシュンを見ながら告げた。
「シュン先輩はいつからそんなことを……」
「わかりません」
アイリスとミランダが呟いた。
「村に居た時には習得してたはずだ」
「ならシュン先輩はずっと騙してたってことですか!?」
アイリスが机を叩き立ち上がる。
「その可能性は高いと思いますよ」
ミランダが呟く。
「リヒト……これからどうしますか??」
エアリスが俺に問いかけてきた。
数分の沈黙の後俺は立ち上がり宣言した。
「シュンをパーティーから追放をしようと思う」
「「「追放!?」」」
皆が驚きの声を上げる、俺はさらにある決意を告げた。
「そして……勇者パーティーの解散、再結成をしようと思う」
「解散……」
「再結成……」
ミランダとアイリスが絶望した顔で呟いた。
「リヒト……その判断は早計だと思いますが」
エアリスも戸惑いながら告げた。
「この決断は揺るがない……それに理由もある」
「理由ですか……」
「あまり言うことではないが……俺の固有スキルに関係するんだ」
「固有スキルですか……」
固有スキルは個人が特別なスキルを持つことで、1つとして同じスキルがないスキルのことをいう。
個人スキルとか隠しスキルとも呼ばれたりし、そのスキルはくだらない物からものすごく強いスキルなど数多くある。
そして固有スキルは、なるべく効果や発動条件などを外部に漏らさないようにするのが良いとされている。
発動条件や効果を知られることで、対策されたり、発動してない時を狙われるなどのデメリットが多いからだ。
「俺の固有スキルのこともあるが、シュンを追放することでパーティー人数が4人になる、このままダンジョンに向かうのは無謀だと判断したからだ」
「確かに、後方の防御の要であるシュンが抜けるから、後方の私達はかなり不安です……でも解散まではやりすぎではないかと思います。人員を補充してこれからのダンジョンに挑めば良くないですか??」
俺の言葉を聞き、ミランダが意見した。
「戦場の把握やボス戦での召喚魔法、後方の守りと前衛サブタンクの動き、バフ・デバフの管理などの多方面の仕事を1人でこなしてたシュンの穴が大きすぎるってことだと思います。パーティーは最大6人ですから新しい人を2人参加して貰えたとして、連携などができるか不安ですからね」
「今さらですが……シュン先輩の異常なスペックにびっくりですね」
エアリスが考えを言い、アイリスが呆れ顔でシュンをみていた。
「エアリスとアイリスの言う通り、シュンの存在は大きい!!それに幻術魔法のせいで俺はシュンが信じれなくなってしまったんだ……もしかしたらダンジョンを攻略してきたことも夢かも知れない」
そう…………俺はシュンを信頼できなくなってしまった。
その証拠に俺の固有スキルである『信頼できる仲間』の効果が発動しなくなり俺のステータスが大きく下がってしまっていた。
「さすがにそれはないですよリヒト先輩!!だってダンジョン攻略の紋章はあるし、今まで倒した魔物は確実に素材になり、そして私達の装備になってるじゃないですか!!」
アイリスが装備や紋章を指差しながら言った。
「さすがに全部が幻術だとは思わないが……これから起こることが幻術かもしれない、なんて思いながら過ごすのは嫌だろ??」
「たしかにそうですね、今日のダンジョンでもシュンが敵の攻撃を受けて怪我をした姿をみましたが。それは幻術で嘘でした。仲間に騙されて信頼できる仲間だとは言えないですね」
シュンがいることで何も信じれなくなる可能性がある以上、俺の固有スキルはまず発動しない。
「ミランダの言う通りで、信頼して背中を預けれる仲間とは言えない、信頼できないんだシュンを……だから俺達は1からやり直し本当に信頼できるパーティーにするべきだと思っている」
そう言いながら俺はダンジョン攻略の証である紋章を砕いた。
1からダンジョン攻略をし、今度こそ新たな仲間と信頼し合える勇者パーティーになるために……。