表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

エアコンが無い

私の職場には、エアコンがありませんでした。

建物も半世紀以上前の鉄骨スレートむき出しで、天井裏も無いので晴れている日は屋根の輻射熱が来てもの凄く暑い。

もちろん食品会社としてはこの状態はアウトなんですが、法律が適用されるのは建てる時であって、この建物ができた時は合法だったのです。


もちろん、毎年来る保健所の職員には改装しなさいと指示を受けるのですが、それをしようと思うと結局建て替えになるんですよね。


バウムの所も調理場、つまり生地を作る所は建屋の中に6坪ほどのプレハブを作って、その中で作っていたし。

この中は一応エアコンが付いてたのですが、まさかの家庭用でタマゴを湯せんする時の湯気のせいで全く効いていませんでした。


カマの方にいたっては夏は気温40度オーバーの中、顔面も50度オーバーという地獄。

もちろん、もっと凄い職場の人もいるのでしょうが、私が言いたいのは人間が働く環境がどうかとか言うのではなく、生地や材料の温度の問題なのである。


お菓子をうまく作る鉄則として分量、行程、温度が最も重要とされていますよね。


そう、温度。


みなさんは40度の中で作る生地と、5度の中で作る生地が同じだと思いますか?。

確かに他社も夏と冬では分量を変えたりしているのでしょうが、うちにいたってはそんなもんではない!。

もちろん水分を変えるのが一番簡単なやりかたで、他の部署はそうしてました。

しかしうちは水分が多いと焼き上がりが弱くなってすぐ落ちてしまうし、少ないとドロドロで厚く巻き生っぽくなってやっぱり落ちる…。

なので水分量は変えられない、もちろん味も変わるし。


なので最初の3年くらいは色々な工夫をして実験してました。

生地の温度が高いと完成品がしわしわになったり、低いと火ぶくれが凄いので、温度を安定させるために温めていい材料や冷やしてもいい材料の選別したり、混ぜ方や行程を変えたりとあらゆることをやってみた。(出荷しながら)


何が正解か全くわからないまま…。


そしてやっと夏の焼き方、冬の焼き方がわかって来て、安定して焼けるようになって来たころカマのメーカーの人がやって来てこう言いました。


「エアコンも無い所で、よくこんなにキレイにやけるるなぁ」と。

 

なんですと?。


よその会社ってエアコンあるの?。

えっ、ここのメーカーのカマを使ってる会社で無いのはうちだけ…。

マジですか。


スパイの時もエアコンまでは見て無かったので知りませんでした。

春でしたし。

もう一度聞きます、マジですか…。


じゃあよそは生地を入れるタンクに断熱材を貼り付けて、下からスポットクーラーやドライヤー(手作り)で温度管理なんてしてないんですね。


まして夏は背中汗だくで一日2ℓの水を飲んだり、気が遠くなると冷蔵庫に転がりこんだり、冬は上半身と下半身の温度差ですぐ風邪を引いたりしてないんですね。


社長、エアコン付けてもらえませんか?。

無理ですか、そうですよね…。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ