表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

三、和葉と一ノ瀬君、二人きりの教室

 男子と二人きりの教室。

 初めてのことだから、どうしたらいいのかわからない。

 とりあえず、自分の席にただ、座る。


「教室で何をしようとしてたの?」


 私の左隣の席に座った一ノ瀬君。

 夕日が眩しいのと、顔を見まいと、下を向き、答える。


「えっと。ちょっと、答えにくいことを」


 何言ってるの、私!?


「何それ~!! まさか、校則を破るとか? 優等生の二木さんが」

「違う。その、なんて言ったらいいのかわからなくて。趣味を」


 しどろもどろ。

 絶対に、趣味を聞かれるやつじゃん!


「趣味? 二木さんの趣味って何? 俺はね~、女の子と遊ぶこと!」


 やっぱり、聞かれた。

 しかも、一ノ瀬君、自分の趣味を暴露。


「それ、言って大丈夫なんですか?」

「うん。二木さんでも、そのくらいは知ってるでしょ。何気に有名だからさ、俺」

「今日は、女の子と遊ばないんですか?」

「みんな部活やらバイトやらで、遊べないんだよ~。それに、今は、二木さんとお話し中だから、いいの」

「そうですか……」

「それより、二木さんの趣味! 教えて」


 話を逸らそうと思ったのに。

 ダメだった。


「小説を、書いてます。ネットで」


 聞こえないだろう小さな声。


「小説書いてるの!? スゲーじゃん! うん。とにかくスゲー!」

「あ、ありがとう」

「じゃあ、プロなの?」

「アマチュアです。プロになりたいけど、難しくて」

「へぇ~。二木さんは苦労してるねぇ。俺と大違い」


 帰りたい。

 一刻も早く帰りたいんだけど、一ノ瀬君は続ける。


「読んでみたい! 二木さんの小説!」

「えっと、それなら。このIDを、このサイトで検索してください。そうすれば、読めます」


 鞄からメモ帳とペンケースを取り出し、サイト名とIDを書いて、メモ用紙を渡す。


「ありがとー」

「いえ。読者さんが増えるのは、嬉しいから」

「そうだ! 連絡先交換しようよ。感想とか送りたいし」

「あ、はい」


 もう、言われるがまま。

 スマホを取り出して、連絡先を交換。


「あの。帰っても、いいですか?」

「やっぱり、俺とじゃ嫌?」


 首を横に振って、否定。


「一ノ瀬君、先に教室にいたから、ひとりのところを邪魔するわけにはいかない」

「女の子に邪魔されるなら、本望だよ。書きなよ、小説」

「でも、一ノ瀬君が」


 見られていると、書きにくいから。


「お構い無く。二木さんの小説読んでるから、気にしないで」

「はぁ。そうですか」

「それにさ。二木さんと二人きりは、初めてだしね!」


 気づいていたけれど、この教室には私と一ノ瀬君しかいない。

 つまり、二人きりということ。

 扉はしまっているから、『密室』。

 鍵は掛かっていないから、ここは『不完全密室』なのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ