十二、GO! IN!
カフェで『KiRa』のこと、お互いに執筆している小説のことを、思う存分話した。
お店が混んできた頃、一ノ瀬君の提案で店を出て、駅に向かい、一ノ瀬君の家へ向かう。
「強引に誘っちゃったよね。ゴメンね、二木さん」
「全然、そんなことないよ。ただ、男の子の家は、何て言うか、初めてで」
内心、帰りたいと思ったけれど、一ノ瀬君と一緒にいることが、嫌だと思わなくなったせいだろうか。
足取りは重たくも、一ノ瀬君とより親密になれたらと、思ってしまっている。
「ここだよ」
最寄り駅は同じだけれど、一ノ瀬君の家は、駅のすぐ側。
「おっきいね。一ノ瀬君家」
「そんなに大きくないと思うけど。まぁ、この辺だと、一番大きいかも」
何部屋あるのかは不明だけれど、一般的な一軒家より大きいのは明らか。
お庭もあるようで、片隅に犬小屋がある。
「犬、飼ってるの?」
「昔ね。今はもういないんだ」
「なんか、変なことを聞いちゃって。ごめんなさい」
「いいよいいよ。犬を飼っていたのは、保育園の頃だし、あんまり覚えてないんだよ」
玄関のドアを開け入っていく一ノ瀬君。
そのあとを追うように、私も入る。
「おじゃましまーす」
「あ、今誰もいないから、自由に入って」
「出掛けてるの? それなら、一ノ瀬君、お留守番してなきゃ」
「そんな年じゃないでしょ。こっち、俺の部屋」
玄関を入って右側にある廊下を渡る。
少し行くと、右側にドアがあって、そこが一ノ瀬君の部屋らしい。
「どうぞ~」
「お、おじゃまします……」
緊張する。
男の子の家に、更には部屋まで。
「適当にくつろいでて」
「はいぃ」
一ノ瀬君の部屋は、中央に丸いテーブルが置かれ、アニメ等で見たような清潔感のある、シンプルな部屋。
机の上には、『KiRa』のインディーズCDと、メジャーアルバムの初回限定版が置かれている。
「座りなよ。立ったままだと疲れるでしょ」
もうすでに座っている一ノ瀬君に促されるまま、テーブルを挟んで一ノ瀬君の向かいに座った。
「インディーズCDも持っているんだね」
「通販で買った。初々しい二人の曲が聴けるんだよ~」
「いいなぁ。私、メジャーアルバムしか買ってないから、聴いたことなくて」
「貸そうか? 最近、動画でしか聴いてないから、いいよ」
「お借りしても、いいですか?」
「ぜひ! 二木さんと話せることが増えるから」
「ありがとう。一ノ瀬君」
お互いに『KiRa』好きで、仲良くなった私たち。
同じサイトで、ネット小説を書いていたり、共通点がいくつかある。
「二木さんはさ、好きな人、いたりするの?」
「えっ!? それは……」
一ノ瀬君のスマッシュ攻撃から、私は逃げられそうにない。