断罪
アーロンがライトを痛めつけていた頃、村長は焦っていた。
事前に領主が来ることは聞いていたが領主だけではなかったのだ。
いつもなら10人程度の人数しかこないのに村長の目の前には数え切れないほどの兵がいた。
「これはこれは領主様。随分と物々しい。一体何の御用ですかな?」
「やぁ村長。久しぶりだ。驚かせてすまないね。今日は私ではなく、この方々が用があるんだ。私はただの道案内さ」
直接面識のある領主が代表して話す。
「見て分かると思うが神教会の方々だ。粗相のないように」
神教会に神子殺しがバレると厄介である。
村長は必死に言葉を選んだ
「それでどのような御用で」
領主の横にいた兵士。装備からして隊長であろう男が答える
「我が国の神子様に神託が下ってな。せっかく見つかったべラルダの神子様が殺されそうになっていると」
「私もまさかとは思いましたが他ならぬ神のお言葉。急ぎ確認しに来た次第です」
兵隊長の言葉をサマリー神官が続ける。ライトの神託の儀を執り行った神官だ。
「それでライト様はどちらに?」
有無を言わせぬ表情でサマリーが問いかける
下手な嘘は通じそうにない
「実は・・・昨日から行方不明でしてな。村の者が総出で探しておる次第でして」
とりあえず嘘はついていない。
「それは大変だ!幸いここには100を越える者達が集まっています。手分けして探しましょう」
「い、いえ!ここは村の者が責任を持って」
村長が必死に兵たちを村に入れまいとしている中、図太い声が響く
「おーい!親父!仕留めたぞー!」
やり遂げた笑顔を浮かべた息子アーロンが事切れたライトを引きづりながらこちらに来てしまった。
「貴様ァ!!」
豹変したサマリーが村長を全力で殴る。村長は吹き飛んだ。
「親父!?てめぇ何しやがる!うっ」
目の前で父親を殴られたアーロンが飛びかかろうとするも、居並ぶ大量の兵士と怒り狂う神官に尻込みする
「アスト様!セイラ様!」
神官がアーロンからライトを引ったくり豪華な馬車へと連れて走る。そこから精悍な男と美しい女が降りてきた。
「これは・・・ひどいな」
「これはもう・・・」
ライトを見た2人が顔をしかめる。
誰が見ても既に手遅れだった。
「もしかしたらまだ間に合うかもしれない。セイラ、君は全力でリザレクションを掛けるんだ。俺も神力を注いでフォローする」
「分かりました。やれるだけのことはしましょう」
2人がライトを治療するのを見てアーロンがキレる
「おい!何する気だよ!俺の手柄だぞ!」
「黙りなさい。殺しますよ」
サマリー神官が威圧するとアーロンはたじろいだ。
「神子様に手を出すことがどういうことかご存知ですよね」
「いや、でもそいつは敵国の神子だぞ!」
焦りながらアーロンが答える
「国同士の争いなど神には関係ありません。神子様を害することは神を害すると同じ。誰が首謀者ですか?」
アーロンはチラリと村長を見る
「なるほど。あの男ですか」
サマリーは倒れている村長に近付くと顔面を蹴り上げて起こす
「良いですか?今から貴方を尋問します。答えによってはその場で首を切ります。心して答えてください」
村長は呻きながら答える
「ワシはただ・・・国の為を思って・・・」
「国の為?バカですか?神は全てを見ています。貴方たちの目論見も全部ね」
だから全て正直に話しなさい。
正直に話せば神はきっとお許しになります。
神官が先程までの荒々しさとは反対に優しく諭すように声を掛ける。
村長は語る
神子を殺せば休戦が続くと思ったこと。
ライトを殺せば英雄になれると思ったこと。
邪魔な両親も殺したこと。
全てを聞き終えた神官は分かりましたと言うと後ろの兵に声を掛ける
「情状酌量の余地なし。殺しなさい」
兵士が剣を携えて村長に近付く
「お、お待ち下され!全て話せば許すと」
「神が許しても私が許しません。やれ!」
兵士の鋭い一撃に村長の首が飛ぶ。
「親父ぃ!」
アーロンが村長の元に駆け寄る
「てめぇらよくも!」
「やれ」
アーロンの首も飛ぶ
「この村の人間全てが共犯者だ。徹底的にやりなさい。ただしライト君の両親の遺体は丁重に弔いますので傷付けないように」
「はっ!かしこまりました!」
兵士たちがぞろぞろと村に入っていく
しばらくするとあちこちで断末魔の悲鳴が上がった
「ライト君・・・私が付いていればこんなことには・・・いえ、今は神の奇跡を信じましょう」
断末魔の悲鳴が響き渡る中、必死にライトを治療する2人を見てサマリーは神に祈った
グロ終わり!