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べラルダの神子  作者: マウンテンブック
序章
4/8

悲劇

ちょっとだけグロいです。





「お待たせしました。うちの旦那が大変と聞きましたが」


ガチャリとドアを開けて出てきたトーニアをニヤニヤとした笑いで見る3人組。真ん中の男が1歩前に出る。


「おう。これを見てくれりゃ分かるぜ」


そう言うと男は脇に抱えていた丸いものを下投げでトーニアの方に放り投げた

攻撃の意志を感じなかったトーニアは思わず受け取るとズッシリとした重みが伝わってきた。

布が幾重にも巻かれていて中身は分からない。いや何となく嫌な予感がしていた。しかしそれは考えないようにした。


「これは?」


トーニアが尋ねると男はニヤニヤ笑いながら良いから開けてみろと言う


クルクルと布を解いていくトーニア。ある程度解けたところで布が赤黒く濡れていることに気付いた。嫌な予感が加速する。

恐る恐るトーニアは布を解いていく。中身を確信したものの、もしかしたらという淡い希望を抱きながら最後まで布を解いた。

それは生首だった。それもトーニアがよく知る人物の。数時間前まで普通に会話していた相手。愛しい夫。その変わり果てた姿がそこにはあった。


「あ、ああああ」


トーニアは愕然としてライエルを抱えたまま膝を着いた。捕らえられているかもしれないとは思った。殺されているかもなど考えもしなかった。前もって覚悟を決めていればこの後の悲劇は回避出来たかもしれない。しかし現実てしてトーニアは膝をついて嗚咽した。してしまったのだ。敵の目の前で。


スコッ という子気味の良い音が耳に響いた。音と同時に強い衝撃が額を襲い、トーニアは仰向けに倒れた。額には矢が突き刺さっている。即死だ。


「はっ!魔法使いってのも大したことねぇな。これならもっと早くに襲っとくんだったぜ」


3人組の男は槍と弓で武装していた。トーニアも見ていたはずだ。しかしライエルの生首を見た衝撃が大き過ぎて警戒を怠ってしまった。その瞬間矢が放たれたのである。普段から動物を狩って生活している村人は至近距離なら外すことは無い。


真ん中の男はトーニアを引きずり家の中に入っていく。2人も後に続いた。


「おう。お前ら家の中探してこい。俺はちょっと遊んでっからよ」


トーニアの遺体を乱暴にベッドに放り投げるとビリビリと服をやぶきだした。


「まじっすか。アーロンさん。それ死んでますぜ?」


「馬鹿野郎。まだ暖っけぇから大丈夫だよ」


真ん中の男はアーロンという。村長の息子だ。アーロンは依頼で初めて村に来た冒険者時代のトーニアに恋心を抱いた。その恋は叶わなかったがずっと邪な欲望を抱いていた。ライエルもトーニアも強く襲うことは諦めていたが、ようやくこうしてチャンスが巡って来たのだ。生きているかどうかなどどうでもよかった。


「へーい。ってもう始めちゃってるよ。おいトンタコ行こうぜ」


「・・・アーロンさん後で俺にも使わせてくだせぇ」


「まじかよ。トンタコお前もか」


槍を持った男トンタコは夢中で腰を振るアーロンに声を掛けるとライトを探すためその場を離れた。

部屋にはアーロンの腰を振る音だけが響いていた。




「げっ!もうこんな時間だ。親父に怒られちまう」


結局家にライトは居らず、すぐに村長である父親に報告しなければならなかったがアーロンはまだトーニアの死体を貪っていた。

トンタコはもちろんのこと、最初は引いていたもう1人も混ざり3人仲良くトーニアの死体を弄んだ。

段々と死後硬直によりトーニアの身体が硬くなり、快感が得られなくなって初めて時間のことに気付いたのだ。


「結局家には居なかったっすね」


「まぁ出入口には門番を立ててある。村の外には出れねぇよ。でもまぁ急いだ方が良いわな」


3人は急いで衣服を整えると駆け足でライエルの家を後にした。

しかし家を出たアーロンが何かに躓き転倒する。


「いってぇな!何だよ!」


見るとライエルの生首があった。アーロンは生首に躓いたのだ。

ライエルの生首はアーロンを睨み付けているようだった。


「ちっ! 邪魔なんだよ!」


アーロンはライエルの頭を全力で踏み潰した。何度も何度も。

脳漿が飛び散るそれを改めて蹴り飛ばすと息を整えた後アーロンは自宅へと急いだ。


この時ライエルとトーニアが死してなお時間を稼いだことが、この先のライトの明暗を分けることなる。それが分かるのはもう少し先の話だ。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「親父!」


バーン!と激しく扉を開けアーロンは帰宅した。


「おお、遅かったのう。ライトはおったかの?」


ここで言う居たか?というのは殺したか?という意味だ。

自分の息子は身体はデカいが小心者だ。村のためとはいえ小さな子供を殺すのに手間取ったのかもしれない。村長はそう思っていた。


「いや、それが居なかったんだよ。まぁ村の外には出てねぇと思うけどよ」


「なんじゃと?ならばお前は何に手間取ったのだ?まさかわざと逃がしたのではあるまいな」


息子は口調は乱暴だが優しい子だ(と村長は思っている)もしや幼子に情を掛けて逃がしたのではないか?


「んなことしねぇよ。ちょっとトーニアと遊んでただけさ」


村長は息子の言葉である程度察するとそれ以上なにも言わなかった


「んでどうする親父」


「まぁ外には出れんからの。逃がしたとしたら森じゃろうな」


森と言ってもそこまで広大な面積ではない。村人総出で捜せばすぐに見つかるだろう。


「そんなら他の奴に声掛けて行ってくるわ。説明はしといたんだろ?」


「うむ。みな村のためならと理解してくれたわい」


アーロンがライエルの家に向かった後、村長は村人を集めて説明をしていた。ライエル夫妻はしょせんは余所者だ。付き合いも精々6年ほど。村のために犠牲になるのが彼らなら問題はないと考えたものは多かった。


「急ぐのじゃぞアーロン。先程伝令が来ての。領主様が明日おいでになるそうじゃ」


「領主が?税はまだ先だろ?」


「恐らく目的はライトじゃろう。ワシらの手柄を横取りするつもりなのじゃ」


「それはまずいな。急ぐわ」


村長の言葉を聞きアーロンは家を出る。

ライトを殺し、アルタイル王にその首を捧げることで自国を救った英雄の村として祭りあげられ贅沢な暮らしをする。それが村長の計画だった。村人もそれを聞いて今回のことを協力してくれることになったのだ。


「ライトよ。可哀想じゃが村のためじゃ。せめて墓くらいは作ってやるからの。くふふふふ」


村長は1人になった家で不気味な笑みを浮かべ自らの未来を夢想した。





日が空いて申し訳ありません。辺境の老騎士という作品を見つけてハマってしまい書くのが遅れました。バルドさんカッコイイ

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