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べラルダの神子  作者: マウンテンブック
序章
2/8

ベラルダの神子


その変化に気付いたのは神官のサマリーだけだった。元々魔法陣は常にうっすら光っているし、彼以外は色が多少変わろうが気にも止めていない


(これはもしかすると・・・もしかするかも知れませんね)


神官がじっと見守る中、特に気負いもせずライトが柱に手を置く。

すると先程までとは比べ物にならない強い紫の光が部屋を染めあげる。


「うわわわわっ」


いきなりの強い光に思わず驚いて慌てるライト


「ライト!?」


父親のライエルも目が眩んでいたが、ただならぬ様子に瞬時に息子の元に駆け寄ると息子を抱いたまま、ろくに見えぬ目で周囲を警戒した


「・・・素晴らしい」


慌てる親子を前に1人恍惚の表情を浮かべる神官。傍から見ると不審者そのものだが彼がそんな表情をするに足る理由がある


「ああ!なんと素晴らしい!人生で2度も神子様の神託に立ち会えるなんて! なんと素晴らしいのだ!」


ライトと父が視力を取り戻し最初に見たのものは、素晴らしい素晴らしいと繰り返しながら恍惚とした表情で呟く怪しい神官の姿だった



「こほん。失礼。先程は取り乱しました」


しばらくして気持ちが落ち着いたのか取り繕った様子で話し始める神官。だがもう遅い。既にライトたちの中で彼は《茶目っ気のある好々爺》から、《不審者》にランクダウンしてしまっている


「まずはおめでとうございます。ライト君は戦女神ベラ様の神子様であることが判明しました。ベラ様を崇めているのは隣国のベラルダですね。はい才能証明書です」


ライトが神官を警戒しながら恐る恐るカードを受け取ると、そこには名前と才能《近接戦闘Lv3》《魔法Lv3》の他に戦女神ベラの神子と書かれていた

ポカーンとした様子でカードを眺める親子を他所に1人で神官は話し続ける


「いやー神子様ってだけでも驚きですがLv3が2つも!素晴らしいですな!」


もはや口調まで変わった神官が得意げに説明し始める


「Lv1ならその道のプロ。Lv2なら国を代表するレベル。Lv3なんて世界で1人か2人いるかどうか。それが2つも!いやもちろん努力は必要ですがね?それでも素晴らしい」


説明中にヒートアップしライトの手を両手で握り締めブンブン振りながら再び興奮しだす神官。ライトは怯えながら父親に助けを求めるが当の父親は


「ライトが・・・神子。うちの子が神子様・・・しかも敵国の神子」


とブツブツ呟いており役に立たない。


「ベラルダの神官には私から連絡を入れましょう。向こうは長いこと神子様がいらっしゃいませんからな。恐らく飛んでくることでしょう」


「しかし・・・ベラルダは敵国で。ライトがどんな目に合うか」


我に返ったライエルが心配そうに尋ねる


「問題ありませぬ。神子様を害するなど我ら神教会の者が絶対に許しません故。それにようやく見つかった自分の国が崇める神の神子様を害そうなど思うはずもありません」


神教会は五大国全て存在する。そのため権力、武力、情報。あらゆる力を持ち、敵に回すと厄介極まりない。


「まぁ少し距離がありますからな。隣国から迎えが来るまで一月は掛かるでしょう。その間にライエル君も身の振り方を考えるといいでしょう」


「そうですね・・・帰って妻とも相談してみます」


息子と共に隣国に移るか、息子と共に国に残るか、息子だけを隣国に向かわせるか。どうするのが一番良いのかライエルは頭を悩ませていた。


「おとうさん見て見て。ね?すごい?すごい?」


無邪気にカードを見せて笑う息子を見てライエルは(とりあえず1人で隣国に行かせるってのは無しだな)と思いながら愛息子の頭を撫でた。・・・その後ろで


「・・・なんでアイツばっかり」


「弱虫ライトのクセに」


不満そうに呟くアロウスとグラン。その2人の呟きに気付いたものはいなかった。






「・・・ということなんだ。お前の意見を聞きたい」


村に戻ったライエルが妻トーニアに今日あったことを相談していた。村に着いたのが深夜といって差し支えない時間だったためライトはすでに眠っている


「どうすればって・・・私たちも一緒に行くに決まってるじゃない。他に選択肢はないでしょう?」


「しかしだな・・・最近は落ち着いているとはいえベラルダは長年の敵国だ。神子様の身内として向こうに行くのは問題ないだろうが、恐らく帰ってくるのは難しいぞ」


二人ともアルタイル王国で生まれ育った。当然肉親も友人もアルタイル王国にいる。向こうに行けばもう会えなくなるかもしれないのだ。


「でもライトを1人で行かせる訳にはいかないでしょう?私はね、親よりも友達よりもライトが大事。みんなだって分かってくれるわ」


あなたは違うの?とライエル に問いかける


「そりゃ俺だってそうさ。君とライトが一番大切だよ」


「だったら良いじゃない。それに向こうに行っても死ぬわけじゃないんだし、いつか戻ってくることだって出来るわよ」


難しく考えすぎよと笑うトーニアをみてライエルの気持ちも落ち着いてきた。


「そうだよな。それに大変なのはライトだ。俺達が支えてやらないと。明日村長に報告してくるよ。今まで世話になってきたしな」


若くして授かったライトを養うため仕事を探していたライエルを村の用心棒として雇ってくれたのがラウムの村長だった。家を用意してくれたり、村人との仲を取り持ってくれたり、ライトを可愛がって貰ったりと散々世話になってきた


「そうね。沢山お世話になったもの。みんなにもちゃんとお別れを言いたいわ」


「事情が事情だ。とりあえず村長には先に報告して、みんなに伝えるか決めて貰おう。」


「ええ、分かったわ。それじゃおやすみなさい」


ライエルの頬に軽くキスをするとトーニアはライトが寝ている部屋へと向かう。

トーニアを見送ったライエルは1人酒を飲みながら呟く


「俺がしっかり家族を守らなくっちゃな」



少し短いですが区切りが良いのと仕事しなくちゃなので今日はここまで!

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