はじまり
初めて書きました。拙い文章ですが宜しく御願いしますm(_ _)m
パカパカ ガタッ パカパカ
道は一応の舗装はされているものの小石が多く、時折ガタガタと荒い音を立てながら馬車が進んでいる
長く続く一本道。変わり映えしない景色。欠伸を噛み殺しながら御者は馬を走らせる。
馬車の中には1人の男と3人の子供が乗っている。男は眠気に抗うこともせず船を漕ぎ、子供たちは生まれて初めての馬車旅ということもあり飽きること無く外を眺めていた。
「おとうさん!おとうさん!すごいね!はやいね!」
外を眺めていた子供の1人が男に興奮した様子で話しかける。
「・・・ああ、そうだな。落ちるなよ」
男は半分眠りながらも何とか返事をし、再び眠りに落ちる。
子供はそれをつまらなさそうに見た後、再び馬車の外を眺める。
これから訪れる初めての王都に思いを馳せながら。
「おい。ライト起きろ。着いたぞ」
男が眠っている自分の息子を揺すり起こす。
「うむぅ・・・あっ!もう着いちゃったの!?」
慌てて跳ね起きる少年。道中はしゃぎすぎて他の子と同様、ぐっすり寝てしまったようだ。
「門はいる所みたかったなぁ」
「帰りにも見れるだろう?とりあえずご飯でも食べよう」
男は不機嫌な息子とまた寝ぼけている他の少年2人にも声を掛ける。
「ごはん!」「おなかすいた!」「おいしいのたべたい!」
子供たちは現金なもので食事と聞いた瞬間元気になる。
それに苦笑しながら男は業者に金を払うと子供たちを連れて街中へと向かう。今日は何を食べようかなとワクワクしながら。
村では食べることが出来ない美味しい料理を堪能した4人は教会へ向かう。
村は裕福ではなく、食事代はともかく宿泊費までは出してくれない。用事が済み次第また村に帰らねばならない。そのため時間に余裕がなく、早目に用事を済ます必要があった。
「ぼくは何の才能があるのかなぁ。おかあさんみたいに魔法つかえるかなぁ」
「オレはきっと弓の才能だな!弓の上達が早いって父ちゃんも言ってたし」
「だったらオレは剣の才能が良い!ライトの父ちゃんみたいに村を守るんだ!」
子供たちがワイワイと話しながら歩いている。楽しみで仕方ないようだ。
「お前ら前見て歩けよ? あとな、教会の中に入ったら大人しくしとくんだぞ」
「「「はーい!」」」
元気よく返事する子供たちを見てライトの父ライエルは苦笑する。
(自分も若い頃はこうだったなぁ、とか思ったらオッサンになった証拠だよな)
しばらく歩いて教会に着く。ライエルは毎年村の子供を王都に連れてくる役割をしているため迷うことはない。
「すみません。オラウの村のライエルです。 神託を授かりに参りました」
教会の中に入り、ライエルが神官に声を掛ける。
「ようこそいらっしゃいました。シリウス担当の神教官サマリーです。今年は3人ですね。さぁ奥へ」
人の良さそうな年配の神官に促され4人は奥へと向かう。
そこには大きな魔法陣。その中心には白い柱が立っており神聖な空気で満ちていた。
「すでにご存知かと思いますが説明させて頂きます。退屈かもしれませんが規則なので我慢してくださいね」
少し茶目っ気を出しながら神官がそう言うと緊張した子供たちの表情もほぐれてきた。
「まずあなた方が受ける神託の儀とはこの国だけでなく世界中の国で行われています。概ね5歳前後で受ける事が多いですね」
ここまではよろしいですか?と神託が尋ねると元気に「「「はい!」」」と返事が返ってくる
「元気があってよろしい。神託の儀の目的は進むべき道を示す為、本人の持つ才能を把握する為に行われます。ですが本来の目的は別にあります。わかりますか?」
「神子様をみつけるためです!」
ライトが元気に答える
「よく勉強してますね。そうですね。神子様を見付けるために神託の儀は行われます。才能が判明するのはあくまで二次的なものなのです」
「神子様とは5人の神の意志を人に伝え、導く尊い存在です。50年に1度それぞれの神を崇める5つの大国で産まれるとされています。しかしどこで産まれるか分からない為、こうして全国民を調べているわけです」
「アルタイルでは既に2人の神子様がいらっしゃるので、しばらくはアルタイルの神子様は現れないでしょう。しかし他国の神子様が産まれる可能性も僅かですがありますので神託の儀が変わらず行われているわけです」
子供たちはソワソワした様子で説明を聞いていた。早く神託を受けたくて仕方ないようだ。
「では待ちきれないようなので神託の儀を執り行いますね順番に魔法陣の中に入り、柱に手を置いてください。では右端の子から」
神官も毎日の様に子供相手に神託の儀を行っているためソワソワした様子の子供たちのことも特に気にせず淡々と進めていく
「ラウムの村のアロウスです!よろしくお願いします!」
子供たちの中でも身体が大きくケンカも強いガキ大将な少年がハッキリとした声で名前を告げる
「はい。アロウス君ですね。魔法陣へどうぞ」
さすがにドキドキした様子で進み柱に手をおくアロウス。
「うわぁっ!?」
彼が手を置いた瞬間、白い光が柱から放たれ思わず目をつぶる。
「なんだこれ、どうなったんだ?」
「おめでとうございます。裁縫のLv1ですね。こちら才能証明書になります。身分証も兼ねてますので無くさないように」
白い光りが放たれた後、神官の手元に2枚のカードが現れた。それを読み上げながら1枚をアロウスに渡す。
この世界では神託の儀を受けると名前と才能が記載されたカードが現れる。そしてそのカードは身分証も兼ねている。
1つは教会に保存されるため、紛失時には教会に赴き多額の寄附をして複製してもらわなければならない。
「えー、裁縫かよ・・・ダサいな。もっと男らしいのがよかったなー」
「才能は選べませんからねぇ。それに才能が無くても努力すれば他のことも上達しますよ。パン屋がみんなパン作りの才能を持ってる訳ではないでしょう?」
優しく諭すように神官が話し掛ける。納得はしてない様子だが渋々といった感じでアロウスが魔法陣から出てくる
「はい。ではアロウス君の隣の君。前へ」
「はい!ラウムの村のグランです。よろしくお願いします」
アロウスのことは気にせず淡々と進行して行く。
「・・・はい。弓術Lv1ですね。はいカード。無くさないようにね」
「よっしゃ!やっぱり弓術だった!」
ホクホク顔で戻ってくるグラン。それを悔しそうな顔で見詰めるアロウス。
「はい。では最後にライト君。前へ」
「僕のこと知ってるんですか?」
「ライエル君は毎年来てますからね。去年来た時に来年は息子を連れてくると言ってましたから」
彼はよく息子自慢をしてくるので覚えてしまいました。といたずらっ子のような笑みを浮かべながら神官が言うと、照れたライエルがゴホンと咳をして誤魔化していた。
「じゃあラウムの村のライト行きまーす」
トテトテと魔法陣に向かって歩いていくライト。彼が魔法陣を踏んだ瞬間、魔法陣はひっそりと紫色に光った。まるで待ち侘びた人物を迎えるかのように。
夜にもう1話投稿します。