幻想
面白おかしい小説を書くはずだった。
吸血鬼が最強である限り、私もまた最強なのである!
その肉は優れた血により成り立ち、その血は優れた土より成り立ち、その土は私によって耕された。
つまり、吸血鬼とは私の手によって耕されたものである。
~強さを求めた狂った獣人による呟き~
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~~獣人の国にて~~
強国である自負がありました。
ザムドは最強の王です。
力強く、りりしく、たくましく。
血色のいい肌に、たっぷりとした筋肉。
鋭い眼光に、千里に届く咆哮。
決して膝を折ることを知らない、その戦いっぷり。
誰もが憧れる、王の中の王。
誰もが認める、最強の中の最強。
世界に覇をもたらさん。
栄光ある獣人の日々。
「・・・反吐が出る、所詮、井の中の蛙であることを知らずにいただけでした。」
吸血鬼の国をご存知でしょうか。
吸血鬼の王、リブ=ツェペッシュの演説を聞いたでしょうか。
即位式の演説です。
下らない演説です。
「前王は弱過ぎた、ゆえに死んだ。余は強く賢い王だ。
戦争だ。世界を手に入れる。皆、余に捧げよ。」
前吸血鬼の王ヴラド=ツェペッシュの娘。
まだ幼いと思われる、たどたどしい言葉遣い。軟弱な声色。
新王に成り代わり、国も混乱している中、このような演説を打つなど。
若いゆえの無知、弱小ゆえの虚勢、見せかけでも威勢を張らなければ、
家臣がついてこないのです。なんと滑稽なことでしょう。
「そう思ってたいたのです。」
・・・あの日までは。
どうしてこうなった。