ハッピー(?)ハロウィン
仲良し4人組のあざみ、さくら、ハヤテ、サクマ。そんな4人がハロウィンパーティーをするお話です!
ハッピー(?)ハロウィン 初雪
ある秋の日の放課後、ほとんどの生徒は部活に行ったり帰宅したりしているため静かな教室。そこでだべっている3人の生徒がいた。
「・・・ヒマ」
そのうちの一人、さくらがポツリとつぶやいた。ショートヘアのやや小柄な女子生徒である。
「同感」
気だるげに同意したのはサクマ。男子にしては長めの髪でやんちゃな顔立ちの生徒である。
「・・・Zz」
「ちょっとハヤテ、起きてよ」
さくらがもう1人の男子生徒を思いっきり揺さぶる。しかし、ハヤテと呼ばれた長身の生徒が起きる気配はない。
「無駄だと思うぞ、さくら。そいつ、一回寝たらなかなか起きないから」
「・・・うん。そだね」
「にしても、ほんとにヒマだな・・・」
サクマがつぶやく。と、廊下をバタバタと走る足音が聞こえてきた。そして、勢いよく教室のドアが開け放たれ・・・なかった。足音は3人のいる教室の前を通り過ぎ、隣の教室のドアが開ける音がした。しかし、すぐにドアを閉め、戻ってくる。と、今度こそ3人のいる教室のドアが開け放たれた。少し顔を赤らめながら入ってきたのはあざみ。長い黒髪で、どこか幼い印象がする女子生徒だ。
「あのね、3人ともきいてー!」
話し出したあざみにサクマが茶々を入れる。
「どうした、あざみ。間違えて隣の教室に入った話か?」
「ち、違うよ!」
「あ、違うの?」
ニヤニヤしながらあざみをおちょくるサクマの頭を軽くはたきながらさくらが言う。
「で、あざちゃん、どうしたの?」
「え?何のこと?」
あざみが聞き返し、さくらとサクマがずっこけた。
「いや、あざちゃんが聞いてって言ったんじゃん」
「そーそー、入ってきた時に『3人とも聞いてー』って」
少し考え込むあざみ。そして何かを思い出したのかポンと手を打つ。
「あー。思い出した」
「うん。で?」
問を発したのはさくらでもサクマでもなく、ハヤテだった。
「あ、ハヤテおはよー。いつ起きたの?」
いつの間にか起きていたハヤテにさくらが聞くと、若干不機嫌そうに答える。
「今。おまえらが騒ぐから寝れない」
「あはは、ごめんごめん」
「もう慣れたから気にすんな。それよりさ、あざみはどうしたんだ?」
「えっとね、さっき友達に聞いたんだけどね?今日はハロウィンなんだってー!」
キラキラした笑顔で嬉しそうに言うあざみ。しかし、3人は微妙な顔をしてだまりこみ、あざみを見つめる。
「え、どしたの3人とも。ハロウィンだよ?」
キョトンとして問いかけるあざみ。そんな彼女に微妙な顔のままハヤテが言う。
「いや、ハロウィンはいいんだけどさ。それがどうしたんだよ?」
「ハロウィンパーティーしよ!つまりは菓子パー!」
「菓子パーって、もはやハロウィン関係ねーじゃん」
サクマが小さく言うと、ハヤテが提案した。
「んじゃ、仮装して菓子パーするか?」
「仮装?それいーじゃん!やろうぜ!」
サクマが賛成する。目がキラキラ輝いている。少し怖い。
「えー・・・。なんかやる気満々だな。俺、冗談で言ったのに」
「は?!何言ってんだよハヤテ!お前、ちょっとこっち来い!」
サクマがハヤテを教室の隅に連れて行き、何かを話し出す。最初はだるそうな顔をしていたハヤテだが、話を聞くうちにだんだんとその目が輝いていく。そして最終的にがっちりと握手を交わした。そんな2人を見てあざみがつぶやく。
「ねー、さーちゃん。仮装、することになりそうだね」
「そだね。やっぱ男子ってバカだよね」
「うん。・・・たぶん黒猫だろうな」
「絶対黒猫だと思う」
そんな会話が女子の間でされているとも知らず、キラキラした笑顔で戻ってくるバカ2人。そして、同時に口を開いた。
「「2人とも、仮装やるぞ!」」
「はいはい」
「やっぱりそうなるんだねー」
やる気満々の2人を見て呆れるさくらとあざみ。
「じゃ、場所はあたしの家でいいよね?」
そう提案したのは4人の中で唯一1人暮らしをしているあざみだ。
「おう、んじゃ、今からあざみの家で仮装だな!」
「いやいや、メインは仮装じゃなくて菓子パーだからね!」
目を輝かせて意気込むサクマにさくらがつっこんだ。
「まーまー、とりあえず行くべ行くべ」
ハヤテが号令をかけ、一同は移動を始めた。
約1時間後。4人はあざみの家でお菓子を広げていた。
「なんか大量だな」
ポツリとさくらがつぶやく。彼女の前には、さっき買ってきたばかりのお菓子が山のように積まれている。
「まあ、ハヤテとサクマがいるからすぐに無くなる気がするな」
あざみが答えた。その手には大きな紙袋を抱えている。それを見て、さくらが問いかける。
「あざちゃん、その袋、何が入ってるのー?」
「えっとね、仮装グッズだってサクマが。着替えといてって言われたー」
「りょーかい。さて、何の仮装かなー?お、黒猫だぁ」
ウキウキとあざみが持っている紙袋を覗き込むさくら。
「さーちゃんまでやる気になってるね?!」
「え、だってどうせやるなら楽しんじゃおって。それにさ、よく考えてみてよ」
そう言ってさくらがあざみに何事かを耳打ちする。と、みるみるその顔が赤くなる。そしてニッコリ笑っていった。
「さーちゃん、あたし頑張ってみるね」
「うん!・・・ところでさ、あの2人は?」
「ああ、向こうの部屋で着替えてもらってる」
「そっか。じゃ、ボクたちも着替えよっか」
「うんー、にしてもさ、2人とも黒猫ってどうなんだろ」
「あはは、確かにね。ま、お揃いってことで」
2人で笑いあいながら着替える。サクマが用意したのは黒色のトレーナーに赤いチェックのミニスカート。そして猫耳カチューシャに赤色のチョーカー、猫のシッポのアクセサリーだった。
仮装した自分を見ながら、あざみが小さくいった。
「今思ったんだけどさ。この服、どこで用意したんだろーね」
「・・・確かに。ま、男子だからね」
と、2人に声がかけられた。
「おーい、そっち着替え終わった?」
さくらが答える。
「終わってるよー。2人は終わったの?」
「おう!ばっちり仮装済み」
「んじゃ、こっち来てー。菓子パー始めよー」
ハヤテとサクマもあざみ達のいる部屋へやって来る。男子の仮装はヴァンパイアで、黒色のズボンに真っ白のシャツ、そして漆黒のマントをはおっている。そんな2人を見てさくらが目を輝かせる。
「おおー!2人ともかっこいい!!」
ハヤテがニヤッとして言う。
「さんきゅー。さくら、黒猫似合ってんじゃん」
「あざまー!2人とも可愛い・・・ってあれ?あざみ何してんの?」
何故かあざみはさくらの後ろに隠れている。それを見て苦笑するサクマとハヤテ。そしてサクマがあざみに声をかける。
「ほら、あざみ出て来いよ。あざみの黒猫も見たいし」
サクマの言葉を聞いて、あざみがぴょこっと顔を出す。しかし、それ以上出て来ようとしない。と、さくらがあざみに何事かを耳打ちする。すると、みるみるあざみの顔が赤くなる。そして、もう、とかさーちゃんひどい、とか言いながら出てきた。
「よし、やっぱ女子は黒猫だな!二人とも可愛い」
「そだなー。あ、そうだ、写真撮ろうぜー」
ハヤテが鞄からケータイを取り出す。
「あはは、絶対言うと思った」
ハヤテがカメラをセットし、4人で並ぶ。カシャっと音がして、写真が撮られる。
「よし、お菓子食べよー!」
はしゃぐあざみにサクマが言う。
「お前、どんだけお菓子好きなんだよ!ハロウィンなんだから何か言うことあるだろ?!」
「え・・・?あ、トリック・オア・トリート!」
「忘れてただろ!考えたよな、今」
「わっ、忘れてないもん!」
「絶対忘れてただろー」
言いながらサクマがあざみのほっぺたを引っ張る。すると、あざみが悲鳴を上げた。
「いひゃい、いひゃい!ひゃふま、ひっははにゃいで・・・!」
「何言ってんのかわかんねーし」
「もう!痛いって言ったの!」
サクマの手から逃れたあざみが軽くむくれながら言う。
放っておくと、あざみが完全にスネてしまいそうだったのでさくらとハヤテが止めに入った。
「ほらほら、2人とも。お菓子食べないの?」
「俺、もう腹減ったぞ」
「あ、お菓子?食べる食べるー」
「あははっ」
一瞬で機嫌が直ったあざみを見てサクマが笑い出す。
「もー、なんで笑うの?」
「い、いや…なんでもない・・・!」
「もう・・・」
口では文句を言いながらも楽しそうなあざみ。笑い合う2人を見ながら、ハヤテがさくらに聞いた。
「なあ、さくら。さっきあざみになんて言ってたんだ?」
「さっきってー?」
「ほら、あざみが恥ずかしがって出てこなかった時」
「ああ、あれね。ハロウィンの魔法、使わなくていいの?って言ったんだ」
「ハロウィンの魔法?なんだよそれ?」
「えっとねー、男子には内緒♪」
「なんでだよ。気になるじゃん」
「あはは、教えなーい。ほら、お菓子無くなっちゃうよ?」
「あ、それは困る」
慌ててお菓子を取りに行くハヤテ。それを追いかけながらさくらが小さくつぶやく。
「この鈍感。ま、仕方ないか」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、何も?」
「そっか?とりあえずお菓子食べようぜ!」
「…うん!」
しかし、お菓子を取りに行った2人が見たものははしゃぎ疲れて寝てしまったあざみと、最後のお菓子を頬張っているサクマの姿だった・・・。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!楽しんでいただけたなら幸いです。
これからもあざみ達のお話を書いていきますので、お楽しみに!