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Log.5 全員集合

 Zzzzz....んっ、室内用のターミナルの呼出音が鳴っているな、ふぅぁぁっ。

誰か来たのか、ああ、藍が応対してる、お客か、客、客....。そうだっ、あと5人も

ここへ来るんだったな、それではちょっとお出かけするか。では、見つからないように、

そーーっと、ペット用通路へと.....。うぐっ、誰かに捕まえられたようだ。


 『あれっ、ミュー君どこへ行くのかなぁ』


 なんだ和美か、ちょっとその手を離してくれないかな。


 『ミャオ』


 『外はもう寒いよ、中にいたらどう?』


 寒いのより、人が多いほうが苦手だ。


 『藍ーっ、ミュー君が外に行きたがってるけど、どうするの』


 『ああっ、ちょっと今からはまずいから、ペット用通路をロックしておいてー』


 『オッケー、へへっ、ミュー君残念だったねぇ』


 しまったぁ、もっと早く出るべきだったか、仕方がない、オーディオラックの下に潜り

込んでいよう。


 『和美ぃ、みんな来たみたいだから、テーブルに並べるの手伝ってねぇ』


 『ほほーい、了解』


 『あとは、見せたくないものはないかな、っと』


 藍はあたりを見回して、色々と押し込めた物の場所が大丈夫かチェックしている。普段

からやっておけばこんな時に焦らなくても済むのに。


 『ねぇ藍、こんな感じでどうかなぁ』


 『へぇ、なかなか巧いじゃないの、飾り付けだけは上手よね』


 『だけ、は余分でしょ、だけ、は』


 『あははっ、怒らない、怒らない、もうすぐ愛しの君のご来訪よ』


 『またぁ、そうやって冷やかすんだからぁ』


 ドアのチャイムが鳴っている。どうやら、今夜の客が来たようだな。しばらくここから

眺めているとするか。


 『来たようね』


 『そうね』


 二人はいそいそと玄関に向かった。


 『こんにちはー』


 『お邪魔しますー』


 『失礼します』


 ワイワイ、ガヤカヤと声がする。色々な声と足音が混ざって、この部屋にやって来る。


 『へぇー、これが藍の部屋なんだー』


 『そうそう、和美のお陰で皆さんにお披露目になっちゃったのよぉ』


 『藍ーっ、そんな言い方ないでしょーっ』


 和美がふくれている。


 『そうそう藍、はいっ、私と里佳からのお花、飾ってね、それから頼まれてたケーキ』


 『わぁっ、サンキュー美央、じゃ直ぐに飾るわ』


 『あぁ、なんかいい匂いがしますねぇ、さすが女性の部屋だなぁ』


 『隆ぃ、お前が嗅いでんのは、あのテーブルの上にあるやつだろ』


 『おいおい、いくら俺が大食いでも、そりゃないだろ』


 アハハハ、フフフッと笑い声が飛び交っている。なるほど、あいつが兵頭隆か、とする

と、いま茶化した浅黒いスポーツマンタイプなのが、和美のお目当ての葛西洋介な訳だな。

ていうことはその横で切れ長の眼をした細身の男が一ノ瀬竜也というわけだ。なるほどね

若武者風という和美の言葉も頷ける、キリッとした感じがする、笑顔も清々しい雰囲気だ、

鎧でも着させたら似合いそうだな。藍が愚痴ってるのはこの男か。


 それで、さっき花を藍に渡したちょっと丸めの顔で髪長いのが立花美央ね、その横で大

きな眼でキョロキョロしてる背の高いひょろっとしたショートカットのが田中里佳という

娘というわけか。おっ、こっちを見たな、じっと見てるよこいつ猫好きのようだな。


 『えっと、コートなんかは向こうの部屋のハンガーに掛けてねぇ』


 『へぇ、結構見晴らしがいいんだなぁ』


 『隆ぃ、何見てるんだ、あまり物色するんじゃねえぞ』


 『うわっ、洋介それはないだろぅ』


 『でも傍から見てると危ない奴みたいだぜ』


 『竜也まで、そういうこと言うのかよぉ、参ったなぁ』


 『きっと、珍しいんだよ、お・ん・な・の・こ、の部屋がさ』


 葛西が散々に兵頭を茶化している


 それにしても、あの兵頭とかいう奴の目つきは気に入らないな、そばに来たら脅かして

やろうか。まあ、それよりも目立たなくして静かに寝てるか。


 『それじゃあ、適当に座ってね、みんな顔見知りだから自己紹介は無しでいいよね』


 藍が司会のようだな。


 『それでは、ただ今より高村和美さんの、ん回目の誕生パーティの開催です』


 『で、何回目なのかなぁ』


 『女性に年齢聞くのは野暮ってもんでしょ』


 兵頭が田中に揶揄されている。


 『じゃあ、和美さんからご挨拶をどうぞ』


 『もう藍ったらぁ』


 全員で拍手している、結構ノリのいい連中だな。


 『ええ、それでは只今御紹介に預かりました、高村和美です、今日は私のために皆さん

に集まって頂いてとても嬉しく思っております。そんなに大したものは用意してありませ

んが、楽しんで頂けたら幸いです。それではゆっくりお楽しみください。それと、今日は

私のために部屋を貸してくださって、料理の準備まで手伝って頂いた風見藍さんにお礼を

述べたいと思います。藍、本当にありがとう。じゃあ始めましょうか。』


 またまた、拍手喝采。藍は照れながら笑っている。


 『和美さん誕生日おめでとう』


 『おめでとう』


 皆が口々にお祝いを言いながら、和美にプレゼントを渡している。和美はもうすっかり

上機嫌でにこにこ顔でお礼を返している。どうやら葛西のプレゼントが最後のようだな。

途端に和美が緊張した面持ちになっている。


 『高村おめでとう、ハイ、プレゼント』


 『あっ、ありがとうございますっ』


 深々とお辞儀をされて葛西はちょっと困っているようだ。


 『おいおい、いつもの高村らしくないなぁ』


 『おーい、らしくないぞぉ』


 藍に茶々を入れられて、和美は顔が真っ赤になってる、可愛いもんだ。


 『へへっ、そうですよね。でもとっても嬉しいです。』


 自分で言ってりゃ世話ないね。みんなにどっと受けている。


 『よおし、じゃあケーキにキャンドル灯そうか、いくついるんだぁ』


 兵頭が言った途端に全員が


 『全然懲りてないなぁ』


 『全くねぇ』


 和美がしみじみと呟いて、またまたうけている。


 『それじゃあ、とりあえず20本ということでいかがかな』


 と、藍が口を挟んで


 『それならOKよ』


 和美の許可が降りたところで、全員でキャンドルを立て始めた。


 『よーし、こんなものでいかがでしょうか、お姫様?』


 『うむ、よきに計らえ』


 『おいおい、それじゃバカ殿だよ』


 男共が声を揃えて返した。


 『あっ、そうか』


 和美はどうやら天然のようだな。相変わらず全員でギャーギャーと喧しい。


 『それじゃ、火を灯すよーっ』


 ケーキのキャンドルに順に火が灯されていく。


 『じゃ、ライト落とすね』


 藍が部屋の灯りの照度を落としていく。キャンドルライトに7人が浮かんでいる。


 『和美、いいわよ』


 『うん』


 ふーっと、長い息を吹き掛けて順に吹き消していく、全部消えたところで拍手が起こっ

ている。


 『おめでとう』


 みんなに祝福されて和美もとても嬉しそうだ。藍が部屋の灯りを元に戻している。


 『それじゃあ、ワインで乾杯といきましょう』


 ワインボトルのコルク栓を開けて、藍が順にワイングラスに注いでいく。


 『みんなグラス持ったわよね、それじゃ葛西さんに乾杯の音頭を取ってもらいましょう』


 『えっ、俺かよ、参ったなぁー、えーっと、それでは高村和美さんの、ん回目の誕生日

を祝しまして、乾杯!』


 『カンパーイ』


 ところで、ワイン、って美味いのか?。


 『ケーキは最後にデザートで出しますから、まずはオードブルからお召し上がり下さい』


 藍がペーパーディッシュを配っている。


 『やったぁ、俺腹ペコペコだったんだ』


 『いやだぁ、兵頭さんたらぁ』


 女性陣には不評のようだが、本人はお構いなしに食べ始めている。


 『変わらねぇなぁ、こいつ、竜也なんか言ってやれよ』


 一ノ瀬はにこにこしながら


 『まっ、それがこいつの良い所だし、悪い所でもあるんだよな、なっ、隆』


 どんっ、と兵頭の背中を叩いた。


 『うへっ』


 兵頭が目を白黒させている。


 『うぐっ、みっ、水っ』


 全員が呆然としている中、藍があわてて、コップにミネラルウォーターを注いでいる。


 『はいっ、大丈夫ですか?』


 兵頭はがぶがぶと水を飲んでから、大きく深呼吸をしている。


 『はぁーっ、竜也ぁっ、ひっでぇなぁっ』


 『悪い悪い、そんなにがっつくからだよ』


 『ふぅーっ、それに引き換え、風見さんは優しいなぁーっ』


 『優しく無くて、悪うござんしたわねぇっ』


 『いやっ、別に高村さんのことを悪く言ったわけでは.....』


 クククッとみんなが笑いをこらえている。


 『おい、誰か助けてくれよーっ』


 アハハハッと大受け状態である。役者には困らない集団だな。


 『これ美味しいわねぇ、ねぇねぇ、これ和美ちゃんが料理したの?』


 と美央が聞いている。


 『うん、上手よねぇ』


 里佳が同調して。


 『あっ、いやっ、その、私はメインを作ったのでぇ、それは藍に頼んだの』


 『へぇーっ、藍ちゃん上手だわねぇ、ねぇねぇ今度私達に教えてくれるぅ』


 『えっ、私?、うん私で良ければいつでもいいわよ』


 『なんで、私じゃだめなの?、ねぇお二人さん』


 『だって、普段から自分で言ってるじゃない、家じゃ全然料理しないってさぁ』


 『私だって、やればできるんだからぁ』


 和美が拗ねている。


 『和美、もっと自信持ちなさいよ、ちゃんと作ったでしょ、自信作』


 藍が横から助け舟を出したところで...


 『じゃあ、高村さんの自信作を楽しみにして、何かして遊ぼうか』


 『遊ぶといっても、うちには大したものは置いて無いわよぉ、大体が一人暮らしでそん

なものは要らないしぃ、えーっと、どこだったかなぁ』


 藍がごそごそと奥のクロゼットを物色している。


 『あぁ、こんなものしか無いわよ、トランプとか、UNOとか、あとは学生の時に流行

ってたゲーム機とそれ用のソフトが.....ああこれなら4人用だからいいかな』


 テーブルの上にトランプ、UNO、そしてメタルカラーのゲームマシンとそのソフトが

並べられた。


 『ああっ、これ懐かしい3年くらい前に流行ったのよねぇ』


 里佳が懐かしそうに言った。


 『そうそう、これ面白かったよなぁ、そうだ、じゃあ2人ずつのチーム分けにしてやら

ない?』


 おいおい、兵頭、それだと誰か一人になるだろ。


 『2人ずつだと、誰か一人になっちまうだろ』


 そうだそうだ、葛西の言う通りだ。


 『まあ、その時はその人が一人で頑張るということでいいんじゃないか』


 気楽な奴だな、一人勝ち残りでも面白いのに。


 『じゃあ、チーム分けのくじ作りましょうか』


 美央の提案に、全員頷いている


 『よし、それで行こう、風見さん紙と筆記具あります?』


 一ノ瀬が藍に聞いている。


 『はーい、ちょっと待ってね、えーっと、これでいいかしら?』


 藍は何故かにこにこ顔で紙とボールペンを一ノ瀬に渡している。藍、顔ちょっと赤いぞ。


 『チームをABCDと4つにして、あみだくじを作るから、おいっ、隆っ、覗くなよ』


 『おいおい、また俺が悪ものかよ』


 『じゃあ、端を見えないように折り曲げて、っと、さあ皆さん選んでください、それで

選んだら、横線を一本書き込んでおいて、で、隆、お前が最初』


 『おっ、おうよっ』


 兵頭がどれを選ぼうか迷っている、それを横から全員が覗きこんでいる。


 『何、迷ってるんだぁ、一番最初だからどれでもいいだろぅ』


 『一番最初だから、迷ってるんだよ、これが運命の分かれ道ってさ』


 『大袈裟なやつだな、ゲーム1つで』


 『よしっ、ここっ、で、次は誰?』


 『じゃあ、俺が』


 葛西がさんざん兵頭を茶化した後で選び始めた。


 『えっと、俺はここでいいや』


 『次は僕が、んー、ここでいいや』


 一ノ瀬の登場か。


 『じゃあ私選んでいい?』


 里佳がペンを持って書き込んでいる。


 『はーい次、私』


 美央の番か。


 『和美ぃ、先に選んだら?』


 『えっ、いいの、あと2つのうちどちらかってわけね、うーん』


 『どっちでもいっしょじゃん』


 『お前が言うな』


 兵頭が葛西と一ノ瀬に同時に突っ込まれている。


 『私はこっち、残ったところに藍の名前書いておくね』


 『あっ、お願い』


 藍はゲーム機のセットをしている。


 『これで、いい筈だけど、ちょっとゲーム機のスイッチ入れてくれない?』


 『はい、入れたよ』


 美央がスイッチを入れたようだ、が、何もディスプレイに映らない


 『あれっ、おかしいなぁ』


 一ノ瀬が立ち上がって藍の傍に行った。


 『僕が見てみましょうか?』


 『はいっ、是非お願いしますっ』


 一ノ瀬が跪いて配線をチェックしている。藍は傍らでなにか機嫌が良さそうにしている。

おいおい、もうちょっとシャキッとしろよ。


 『ああ、これですね、ここのケーブルはここですよ』


 『あっ、そうですね、思い出したわ』


 藍と一ノ瀬は身体を寄せ合って仲良く作業中である。


 『じゃあ、くじを開けてチーム分けを決めるぞ』


 葛西が全員に声を掛けた。


 『はーい』


 『では紙を開いてと、まずは兵頭からだな、こうやって順に追って行ってと、ずーっと

行くと、隆はCだな』


 『よしっ、やった』


 何がやった、のか良く判らないが。


 『で、次は俺か』


 ワイワイガヤガヤとあみだくじを使って順繰りにチーム分けがされていって、その結果。


 『じゃあチーム分けの発表とするか、まずAは高村と風見、なんだ女同士か、でBは俺

と田中、Cは隆、お前一人、最後Dは立花と竜也、ということだ』


 『ありゃー、俺は一人か』


 『和美と一緒かぁ』


 藍は落胆の色を隠せないで言うと。


 『それはお互い様でしょ、それともー......』


 と和美が視線で一ノ瀬を追っている。


 『別に誰でも良かったんだから、いいのっ』


 ほほう、強気の発言だな。


 『じゃあ、まずは最初の対戦と行こうか、それぞれ最初にプレイする奴を決めてくれ』


 葛西が言った後。


 『和美ぃ、先にやってね、ちょっとお菓子と飲み物を用意するからさぁ』


 『ほほーい、さて誰が対戦相手かなぁ、えっみんな男性なの、うわーっ勝てそうもない

なぁ、藍、負けたらごめんねぇ』


 『何、弱気になってるの、らしくないぞーっ』


 藍はグラス類を用意しながら和美にはっぱをかけている。


 『はい、じゃあ飲み物とちょっとしたお菓子を食べながら、ゲーム開始ぃ』


 どうやらゲームが始まったようだ、ディスプレイ上を何やら激しく動いている。いかん

なムズムズしてきた。見ないようにしないと、しばらく寝ていよう。ん、誰かこっちへ来

る。里佳が近づいてきた。


 『君がミュー君ね、ああ本当だ、オッドアイだ、仲良くしてねぇ』


 手が伸びてきて背中やら喉をさすっている。結構心地がいい、丁度いいからこのまま眠

っていよう。だんだんとゲームに夢中になって白熱し始めているようだ。


 『あーん、何やってんのよ和美ぃ、そこっ、後ろから来てるわよっ』


 藍、結構喧しいぞ、もう少し静かにしないと眠れな...い...ぞ......。


つづく 





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