裕福な家庭の桃太郎
昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
二人は無職のくせに遊び放題。
おじいさんは毎年新しいランボルギーニで農道を爆走し、おばあさんは毎日三越の外商さんと世間話をして過ごしていました。
ある日、おばあさんが立ち入り禁止の危険区域にある洞窟へ行くと、ポツンと桃が落ちていました。
二人が持ち帰り叩き割ると、中から元気な男の子が飛び出してきます。
二人は桃があった場所にちなんで、放射性廃棄物太郎と名付けました。
放射性廃棄物太郎は身体の内側から湧き上がる暴走に耐え、数々の試練を乗り越えて強くなりました。
青年になる頃には、肌は緑色、毛は全て抜け落ち、筋肉は隆々。ガイガーカウンターも鳴り響く「いい男」に育ちました。
放射性廃棄物太郎は言います。
「おじいさん、おばあさん。鬼ヶ島に住む邪悪な鬼を退治しに行かなければなりません」
おじいさんは面倒くさがって渋りましたが、おばあさんは外商さんからお土産にもらった吉備団子を持たせてくれました。
道中、犬が飛び出して言いました。
「放射性廃棄物太郎さん、お腰につけた吉備団子、一つ私にくださいな」
犬が一口食べると、目の前に別世界が広がりました。
単なる吉備団子なのに、ほのかな甘みと職人のこだわりを感じる。
(これが銀座三越の一流の土産物……外商の箱を買えるような、良いところの坊ちゃんなんだな)
犬は平伏して言います。
「お供させてください」
同様に、猿、雉が仲間になりました。
三越の土産には、やはり人を従わせる圧倒的な力がある。
鬼ヶ島に着くと、作業着を着た鬼が門の前に立っていました。
太郎を見つけるなり、安全管理のため部外者の立ち入りはできないと武器を構えます。
太郎は「自分の村に放射性廃棄物を捨てる邪悪な鬼を退治しに来た!」と名乗りを上げました。
門番はいぶかしげな顔をしましたが、中から「総務課長」と書かれた名札をつけた鬼が現れ、一行は応接室に通されます。
総務課長は言いました。
「おかしいですね。適切な廃棄を行うということで事業者選定を行い、お宅の村には毎年しっかりと環境対策費をお支払いしていますよ。これがその明細と契約書です」
筋肉隆々の放射性廃棄物太郎は、あいにく計算と事務手続きが大の苦手でした。
パニックになった放射性廃棄物太郎が書類を破り捨て、総務課長の首に手を伸ばした瞬間、ガシッと門番に腕を掴まれます。
放射性廃棄物太郎の規格外の力をもってしても、屈強な警備員の固いガードを振り払うことはできません。
「お帰りはあちらです」
放射性廃棄物太郎はあっけなく門の外へと放り出されました。
ふと見ると、目の前には金銀財宝が積まれた荷車が置かれていました。
総務課長が営業スマイルで言います。
「こちらは、工場見学にお越しいただいたほんのお礼です。お気をつけてお帰りください」
放射性廃棄物太郎一行は、お土産の金銀財宝を抱えて村へ戻り、おじいさん・おばあさんと共にその資金で何不自由なく幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。




