第五章 第二十八話 ミラの選択
◆ Scene 1 庭への来訪者
白い空間の入口に、人影があった。
ミラ・ケステルだった。
「……来たのか」とガルドスが言った。
「来るつもりはありませんでした」とミラは言った。「でも——あなたたちが庭に入ったと分かったとき、考えが変わりました」
セラフィナの光が静かに揺れた。「よく来られました」
「使者に歓迎されるとは思いませんでした」
「あなたの先祖を、私は知っています」とセラフィナは言った。「この庭に一度——来ていました」
(ミラの先祖も、ここに来たことがあるのか)
ミラは少しだけ目を細めた。それだけで何かを了解したように見えた。
◆ Scene 2 ミラの告白
語り神がミラを見て、静かに言った。
「話しますか」
「ここでなら——全部、話せます」
ミラは少し間を置いてから、頷いた。
「私が帝国に仕えたのは、情報のためです。それは本当です。しかし——」
彼女は一度だけ息を吸った。
「情報を集めたかった相手は、帝国ではありません。次の改稿者、でした」
【ミラ・ケステル——真の動機、開示】
帝国への忠誠:形式的なもの。情報収集のための立場として利用
本来の使命:先祖から受け継いだ「改稿者の記録と保護」
先祖はアレン・マスカラード(前の改稿者)の記録を写した人物
ミラが見届けようとしていたもの:「次の改稿者が一人で終わらないこと」
「アレンは孤独に死にました。逃げようとして、一人で失敗して、消えた」
ミラの声は平坦だったが、その平坦さの下に何かが沈んでいた。
「私の先祖はそれを見ていた。何もできなかった。だから——記録を残した」
「私はその記録の、最後の継承者です」
「あなたを監視していた、のは本当だ」とミラは続けた。レンを見て。
「でも監視の目的は——排除ではなく、確認でした。あなたに仲間がいるかどうか。あなたが正しい選択をしているかどうか」
「で、どうだった」とレンは言った。
「合格です」とミラは言った。「情報区分A、開示を許可します」
それはミラの冗談だった——たぶん。ガルドスがわずかに口元を緩めた。
◆ Scene 3 帝国への帰還と、離別
「私はここで失礼します」とミラは言った。「庭に長く留まれるものではありません。用があれば——呼んでください」
「呼び方は」
「情報区分Bで十分です」
彼女は来たときと同じように、静かに入口へ向かった。
「ミラ」とレンは呼んだ。
振り返る。
「ありがとう」
ミラは一秒だけ止まった。それから——
「礼は、全部終わってから。まだ早い」
それだけ言って、白い光の外へ消えた。
【第二十八話 終】
⑪「ミラが帝国側にいる理由」:完全回収
真の動機:先祖から継いだ使命——次の改稿者が孤独に終わらないための記録と保護
次話:語り神との核心対話、⑰完全回収
── 第二十八話「ミラの選択」 了 ──




