第8話: 訓練の実戦適用! 意外な才能の開花
朝の陽が邸宅の庭を照らす頃、俺はすでにエアライフルを構えていた。昨日からの訓練で体は筋肉痛だけど、なんだかワクワクする。ヘタレの俺が、こんなに早く起きるなんて珍しい。
大佐フィギュアが足元で待機。
《司令官、本日の訓練は実戦形式だ。的を動かし、風も考慮。300メートル先の標的を狙え》
庭の端に、歩兵フィギュアたちが木の板を立てて的を作っている。板には赤い円が描かれ、真ん中に小さなリンゴを置いた。リンゴの直径は5センチくらい。300メートル先で当てるなんて、無理ゲーだろ……。
「大佐、本当に当たるかな……」
《疑うな。昨日までの成果を見ろ。司令官の射撃精度は日々向上している》
他のフィギュアも無線で励ます。
《司令官、俺たちが見てるぜ!》
《ナイスショット期待してるよ!》
俺は深呼吸。伏せ撃ち姿勢でスコープを覗く。風が左から吹いている。葉の揺れで風速を推測。心拍を抑え、息を止める。指をゆっくり絞る。
パンッ!
弾が飛ぶ。スコープ越しに、リンゴが弾け飛んだ!
「え……当たった!?」
庭が静まり返る。フィギュアたちが一瞬沈黙した後、無線が爆発。
《命中! 完璧だ、司令官!》
《すげぇ! 300メートルでリンゴ一撃!》
大佐の声が少し興奮気味。
《ふむ……予想以上の精度だ。司令官、君はスナイパーとしての才能を持っている》
俺はスコープから目を離して、呆然とする。ゲームで何度も練習した射撃理論が、異世界で実を結んだのか? それとも、スキルの強化効果?
「俺……本当に上手いのか?」
《偶然ではない。君の集中力と知識の賜物だ。だが、まだ甘い。次は複数標的だ》
訓練はエスカレート。フィギュアたちが的を動かし始める。走る的、飛び跳ねる的、隠れて出てくる的。俺は汗だくで撃ち続ける。
パンッ! パンッ! パンッ!
最初は外れが多い。でも、回を重ねるごとに命中率が上がる。200メートルで8割、300メートルで6割。ヘタレの俺が、こんなに集中できるなんて。
昼過ぎ、休憩中。大佐が近づく。
《司令官、そろそろ実戦を試す時期だ。庭の外で、軽い狩りをしよう》
「狩り?」
《森の端で、弱い魔物を狙う。スナイプの精度を本物の敵で確認する》
ルーナと王女を誘って、邸宅近くの森へ。ルーナが剣を、王女が杖を構える。
「へぇ、勇者が銃持ってるなんて珍しいな。見せてくれよ」
王女が心配そう。
「太郎様、無理はなさらないでくださいね」
森に入ると、すぐに獲物。角ウサギみたいな小型魔物が、数匹跳ねてる。距離150メートル。
「よし、俺がやる」
俺は木陰に伏せてスコープを合わせる。大佐の声が頭に。
《風は右から2メートル毎秒。標的の動きを予測しろ》
息を止め、引き金を引く。
パンッ!
一番手前の角ウサギの頭が弾け飛ぶ。残りの魔物が慌てて逃げる。
パンッ! パンッ!
二匹目、三匹目も連続命中。最後の一匹が茂みに隠れたけど、スコープで影を捉えて撃つ。
パンッ!
全滅。
ルーナが口をあんぐり開ける。
「マジかよ……遠くから一発ずつ、全部ヘッドショットじゃん!」
王女が駆け寄って俺を抱きしめる。
「太郎様、すごいですわ! こんなに正確に……!」
俺は照れくさくて顔を赤らめる。
「え、えっと……大佐の訓練のおかげだよ」
大佐が無線で。
《いや、司令官の才能だ。俺たちはただ導いただけ》
その時、森の奥から異様な気配。ゴブリンの群れが十匹以上、弓を構えて現れた。どうやら角ウサギを追ってたらしい。
「ヤバい、敵だ!」
ルーナが剣を抜く。王女が魔法を準備。
俺は即座に伏せ直す。距離200メートル。ゴブリンの弓兵が矢を放とうとする。
「俺が援護する!」
スコープを覗き、息を止める。風、動き、心拍。全部計算。
パンッ! パンッ! パンッ!
三発連続で、ゴブリンの弓兵三匹の頭を貫く。残りが混乱して散らばる。
ルーナが突っ込んで斬り、王女の魔法で焼き払う。フィギュア軍団も展開して援護。
戦闘は瞬時に終了。
ルーナが俺に駆け寄る。
「勇者……お前、すげぇよ。俺たちより先に敵を半分倒してたじゃん」
王女の目が潤む。
「太郎様……本当に頼もしくなりました」
俺はエアライフルを下ろして、息を吐く。胸が熱い。ヘタレだった俺が、初めて「戦えた」実感。
大佐の声が優しく響く。
《司令官、これが君の始まりだ。俺たちは君の射撃を待つ。共に戦おう》
俺は頷く。
「うん……俺も、みんなと一緒に」
夕陽が森を染める中、俺たちは王都へ戻った。スナイパーとしての才能が、ようやく開花した日だった。
でも、まだこれだけじゃない。もっと強くなって、みんなを守りたい。
(第8話 完)
(つづく)




