2話目
ん、ん〜…
・・あれ?今日いっぱいねれたなぁ
いつもからだおもくてくるしいのに今日はかるい
もしかして…ぼくの病気なおったのかな!
またママとパパとお兄ちゃんといっしょにあそべるんだ!
早く看護師さんよぼう!みんなになおったって早く言わなきゃ!
いつも仲良くしている看護師に両親を呼んでもらうため慣れた様子でナースコールを押そうと思う。だが見当たらない。いや見つけられない。それもそのはず。
そこはベッドの上ではなく星空の真下だったのだから
上を見あげると冬の大三角形と一緒に輝く星々たち儚げでその隣にいる綺麗という言葉がスっと出てきてしまう月の光。
いつもは厚めの布団を被っている冬だと言うのに寒さを感じず空に浮いているという状況
普通は夢だと思ってもハッキリとした意識を持っていればパニックになるかもしれない
だが子供の純粋さというおかげもあるがこの少年にとって初めての外。初めての景色。初めての事を経験しその瞳には希望と活力が溢れていた。
「すっ、すっごぉぉぉぉい!!!これゆめ!?でもぼくゆめっておもってないよ?でもはじめてのおそととってもきれい!」
静かな夜に響く声。その声はいつもなら出せないと思う。
そしてふと1歩ふみだす
いつもは動かなかった足が今日は軽く動く。動けない度に味わった憂鬱な気分と反対の感情が溢れる。
「動ける…!」
少年はどうしよもない喜びと興奮が一緒になり何年も動かしていなかった足が1歩、また1歩と歩き始め遠く遠くへ行こうとする。
瞳には光り輝く星々が反射し少年の心を写しているようだった
「もっと!もっとあの星の近くへ行きたい!」
いつも細い手を伸ばしてもつかめなかった星に届きそうだと思った少年は誰にも止められない様な勢いでスピードを出そうとしたところ
「そんな遠くへ言ったら迷子になりますよ」
鈴のような声がなる
少年は足を止め後ろを振り返る
「きれい…」
思わずそんな言葉を口からこぼす
そこには美しい人がいた
小学生になる前まだ恋愛感情というものがまだ分からないことが多い。そんな小さい子がスっと心の中から綺麗という言葉が出てしまうそのような人が目の前に少年はいつも絵本で読んでいた月の精霊さんと思ったのだ
ただ本来の精霊と違うのは黒いローブに身をまとっている。そして白い髪と月の光を反射したかのような瞳を持っていた。
「遠くへ行ったら天国への道まで行けなくなってしまいますよ」
少年は少し静かになっていたが質問を沢山し始めた
「お姉ちゃん!すごいきれい!どうしてお空とんでるの!あっそれはぼくもおなじだ…!ねえねえ!おねえちゃん絵本のなかのようせいさんなの!?」
送り人は言葉から溢れているエネルギーに少し圧倒されながら返答する
「…私は妖精さんではありません。男でも女でもありませんが……まあ、そうですねお姉ちゃんで大丈夫です。空を飛んでいる理由は簡単です。私は送り人亡くなった方を死後の世界へと送るもの。あなたを天国へ送るものです」
送り人は宙で少年の目の前にしゃがみ目線を合わせる
「てんごく?」
「ええ。あなたは病気で先程亡くなってしまったのです。」
少年は大きく目を見開く。そして何かを察したような顔になる
いつも読んでいた絵本達の中の1冊で出てきた場所。
「そっか…ぼく死んじゃったんだね」
少年はそうぽつりと言うとキラキラしていた瞳に涙が溜まる。子供のぷっくりとした頬ではなく長らくご飯を食べていなかったためやせしまい痩けた頬に沿って涙が流れていく。
送り人はそれを見てポケットに入っていた白いハンカチをとり優しく拭いてあげる
「グス…う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
少年はせ我慢しようとした涙反対に堰を切ったようにあふれでてしまう。
「ママ!パパ!おにいぢゃゃゃん!!うぇぇぇぇぇぇぇん」
声を出し胸の当たりをキュッと握りながらわんわんと泣く
少年は生きている時いつもだったら止めないといけなかった涙をながす。体力が取られ体がどんどん疲れてしまったから。家族に泣いているとこを見せると家族みんな辛そうな顔をしそして励ましてくれていた。
それを見るのが少年自身辛かった
半年前から昏睡状態になり夢を見れていなかった。こんな小さいのに希望も見えていなかった。
でもずっと大丈夫だと病気は治ると信じていた。
信じていたのに
死んでしまったことがとてもとても辛くて
「もっど遊びだがっだー!!ママのご飯だべだがっだ!パパにがだぐまるしてほしがっだ!おにいちゃんとあそびたがっだぁぁぁぁぁぁ」
小さい子特有の言い間違いをしながら本音を叫ぶ
家族からの愛をこれからももっと欲しいと思っていただろうに。
送り人はその声を少し辛そうな顔で聞きながら少年の涙をぬぐっていく。
この声はどれだけ大きくしても生きているものには聞こえない。
だからこそ誰よりも沢山聞き沢山寄り添おうとする。
どれくらい泣いたのだろうか少年はヒックヒックとしゃっくりを混じえながら少しずつ呼吸を整えていく
「うぇ、……けほっ、ぐず」
送り人はたくさん涙を吸ったハンカチをしまいながら「大丈夫ですか?ここだと休めないですね」と言い辺りを見回すそして「あちらで座って少しお話しませんか?」と少年が入院していた病院を指さす
2人は屋上まで行きベンチがあっのでそこに座る
「うえええんやだよぉぉぉみんなとバイバイいえてないよぉおにいちゃんと一緒にあそぶって約束したのにぃぃ」
送り人は優しく背中をさそる
「ふぇ。ぐす。……スン」
「大丈夫ですか?」
「・・・うん」
少年は落ち着いてきたのか先程の大きい泣き声とは違い小さい鼻声になっていた
少年はベンチに腰掛けながら地面につかない足をぶらぶらさせながら送り人と話す。
「…ぼく死んじゃったんだよね?」
「そうですね。あなたと会う少し前に。魂だけ外へ行って遠くへ行こうとしていたので少々驚きました」
送り人がそう言うと元気よくて前に立ち上がり興奮したように笑顔で「だってひさしぶりのおそとだったんだもん!」と少年は楽しそうに言う
「ぼくねびょういんに来るまえはママとパパとお兄ちゃんといっぱい遊んだの!ママはご飯いっぱい作ってくれて全部おいしいってんだ!僕ねハンバーグが大好きだったの!パパはねお仕事から帰ってくるといっつも高い高いしてかたくまるしてくれてお休みの日はずっと遊んでくれたんだ!お兄ちゃんとは喧嘩することもあったけどいろんなことしたんだ!ママに内緒で一緒にアイス食べたりパパにイタズラしたり!寝る時は絵本を読んでくれたりしたの!」
生き生きと話す少年はとても楽しそうであれとこれとそれととどんどん思い出が出てくる
「とても楽しそうですね」
微笑みながら送り人は伝える。その言葉に少年は「うん!」と言ったがそこから笑顔が消える。
「でもね…僕が病気になってからみんな悲しそうな顔をしてたの。僕もみんなと一緒にいたかったの。辛いけどみんなが励ましてくれてて元気になったらママは大好きなハンバーグ作ってくれるって。パパは僕の行きたかったヒーローに会わせてくれるって。お兄ちゃんはサッカー一緒にしようってたくさんたくさんお話したの。」
送り人は静かに話を聞いていた
少年は空を見上げる
「それでね僕ね将来宇宙飛行士になりたかったんだ。楽しい時も辛い時もきれいなおそら見るの好きだったの」
「とてもいい夢ですね」
「でももうできなくなっちゃった…しんじゃったから。」
その言葉を聞いて送り人は少し考えそしてこう言う
「宇宙には行けませんがお空のお散歩しませんか?」
「え?」
送り人は少年の手を取り宙に浮かぶ
そしてふわりふわりと上に上がっていく「わ、ほわ!わあ」
送り人は優しい笑顔で言う
「生きている時にはできなくてもこうなった後でもできることはありますよ」
「おねぇちゃんすごい!」
少年は上を見上げるさっきまで映っていた星々が少しづつ大きくなりやがて雲の近くまで着いた頃には自分の足で空を泳いでいた。
「すごいすごい!こんなに楽しいって思えたの久しぶりだ!」
少年はふわふわとあっち行ったりこっちへ行ったりと楽しそうに飛んでいく。送り人はその様子を見ながら少年に問う
「もっとなにかしたいことはありまか?」
「いいの!?」
「ええ何個でも」
その言葉を聞いて「じゃあ!」と言った少年は色んなところに行った。
遊園地、動物園、水族館、ライブをしているところがあり試しに見たがすぐに飽きてしまった少年だった
他にも食べたかったアイスクリームやひとりじゃできなかった遊具を送り人と遊んだ
「たーのしい!!!!」
ひと通り遊びまくった2人は公園のベンチで休憩をしていた
「良かったです。次にやりたいことはありますか?」
少年はふと静かになると「最後におうちに行きたい」と小さな声で言った。
「分かりました」
2人は一緒に少年の家へ向かう住宅街の中にある少しこじんまりとした一軒家だ。暖かい雰囲気を感じる。本来なら家族は寝ている時間だが今は家に誰もおらずとても静かだった。
「ただいまぁ」
誰もいない部屋に挨拶をし奥へ歩いていく。
家族が寝ていた寝室は誰もおらずぐちゃぐちゃの状態になっていた。
送り人は先程病院から連絡があり急いで向かったのだろうと思った。
少年は寝室からキッチン、リビング、お風呂、小さな庭、玄関
小さな足でゆっくりと回っていく
「大丈夫ですか?」
「うん。」
少年は落ち着いた声でこういった
「ただいまってみんなで言いたかったな」
送り人は少し悲しげな表情になる小さい子供がこんなにも悲しそうなのに言葉が出てこないのだ
「おねえちゃん」
「なんでしょう?」
送り人は少年と顔を合わせる
「ぼくこれからどうなるの?」
「そうですね1度私と少しお話をします。これからあなたが進むべき所への案内をするための確認です。ただすぐ終わると思います。天国へ行くというのはほぼほぼ決まっているので。その後は天国に行き転生ができるのようになると思われます。」
「てんせいって確か生き返るってことだっけ?だったらみんなにまた会えるかな?」
送り人は顎に手を添え少し悩んでいたが
「そう……ですね。少し手続きがありますがあなただったらまた会えるでしょう。」
「じゃあ!また言えるんだ!ただいまって!」
少年は瞳に希望が映り送り人は優しく微笑む
少年は玄関に出て後ろを振り向き
「いってきます!」
そう元気な声でしばらく帰らない家へ挨拶をした。
「ご家族の所へ行きますか?」
「いく!」
2人は元の場所、病院へと戻る。中を見ると家族が少年の周りを囲みながら泣いていた。
「たいよう…たいよう、、」
「ごめんなごめんな太陽」
「いっしょに遊ぼうって一緒に学校行こうって言ったのに…俺守れなかった」
母は手を取り、父は頭を撫で、兄は自分の拳を握りながらそれぞれ泣いていた。
そんな中少年…太陽は入口にたちさけぶ
「またあえる!みんなに会いに来る!だから泣かないで!またね!」
太陽は届かないと思いながら最後のお別れをする。
しかし家族はいっせいにドアの方を見るうっすらと暖かいものが見え気がした
送り人は驚く
「久々に見ましたね。死者の言葉が生者に届くのを。」
太陽はどこか誇らしげに腰に手を当てながら笑う。
その姿は目に見えていないが
「太陽…またな!また俺の弟になれよ!」
「大好きなハンバーグ作って待ってるから!」
「またいっぱい遊ぼう!いっぱい思い出を作ろう!」
太陽に届くそう信じて家族はそう返した。
その後送り人と太陽は送り人の部屋に行く
送り人は太陽を席に座らせココアが入ったマグカップをおき赤とオレンジが混ざったような色の表紙を持つ少し薄い本を持ち読みながら案内をはじめる
「園田太陽さん4人家族の末っ子で母、父、兄と一緒暮らしていました。その後病気になり辛く悲しい時がありましたが家族の支えとあなたの力で最後まで天寿を全うしました
あなたは天国に行き転生すると思われます。もう一度確認ですがまた家族と一緒に過ごしたいそれで大丈夫ですか?」
ココアを飲んでいた太陽は元気に返事をする!
「うん!大丈夫!」
「分かりました」
送り人は持っていた本の一番後ろ真っ白の紙をぺりぺりと取り何かを書く
そして紙にピューっと優しい口笛をふくとそれはひかりやがて綺麗な白い鳥になる。太陽が驚いているとその鳥は死後の世界への白いドアに向かって飛びゆっくりと空いたドアに吸い込まれるように入っていった
「あれなに!?」
「こちらからあちら側への連絡手段です主に特記することがある方そしてあなたのように転生の時にして欲しいことを書いておくのです」
「すごいね!おねぇちゃんありがとう!」
「どういたしまして」
送り人と太陽は笑顔になる
少しの間甘い空気が広がった空間で2人はゆっくりと過ごす
そして
「ぼくそろそろ行かなきゃだね」と太陽は立ち上がる
「そうですがもういいのですか?」
送り人が問いかけると太陽は頷き「うん!早くみんなに会いたいから!」と伝えた。
送り人はそれをきいて「分かりました。」と微笑んだ。席から立ち「少々お待ちください」と太陽に伝え奥の部屋に行く数分後そこから持ってきたのはピンク色のネリネだった
「これをあなたに」送り人は太陽の目線までしゃがみゆっくりと手渡す
「綺麗なお花だ…ありがとう!」
2人は先程鳥が入っていった白いドアの前にいき最後の会話をする
「お元気で」
「ふへへおねぇちゃんも元気でね!」
太陽は花を片手に真っ白の空間に走って向かうその後ろ姿には希望を背負っていた
「きっと会えますあなたなら」
送り人はお辞儀をしながら見送りドアがしまったあと素早く片付ける。そしてチリンとベルがなる。いつもの準備を死者の元へ向かう。そしてこういうのだ。
「私は送り人。あなたをお迎えにあなたをお迎えに上がりました」
ネリネ
花言葉は「輝き」 「幸せな思い出」
そして「また会う日まで」
数年後のお話
あの家族には1人のこどもが来た。1人の赤ちゃんが真っ白のおくるみに包まれている。暖かな家の入口でで家族が言う。
「おかえりはると!」と家族が言うと
「ただいまみんな!」と
そんな元気な声が心から伝わってきた気がした
おしまい




