受容
「ちぇすとぉぉおおおおおお!!!!!」
小娘から振り下ろされた竹刀が俺のヘルメットを掠める。
「!? は?」
軽い衝撃が左頭頂部から左腰に抜ける。
今なにが?
そう思ったのもつかの間に、わずかに崩れた体勢を立て直す間もなく左からの薙ぎ払いがくる。
「ちぇっぁぁぁああああああ!!!!!」
「ちょっ!?ちょっとまて!」
ブンッ
俺はとっさに小娘の意識を俺の位置より手前に引っ張りながら後ろに飛び退き、竹刀が下腹部を掠める。
黒の革ジャンに白線が描かれる。
あっぶね!ぎりぎり避けられた!だがこんな速度何度も避けれるもんじゃない。早くなんとか!
「おい!ちょっと待て!俺はただッ!」
「エグズベリヴァァァァアア“ア”ア“ア”!!!!!!!!!!!!!!!!」
「聞けよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
パァァァアアン!!
本当にごめんなさいワタシ。今までずっと君を閉じ込めて目を逸らしてた。でも、これからはちゃんと向き合うよ。中島君ありがとう。
さっきとは比べ物にならない速さでワタシは左下から杖を右上に振り上げる。その瞬間エントランスで破裂音がコンクリートの壁に反射される。
顎を掠めたのか目の前で加藤が上を向きながら後ろに蹌踉け、尻餅をつく。
ズキンッ
杖を振り上げた瞬間両肘に痛みが走るがすぐに消失する。
大丈夫。ワタシはこれで大丈夫!もう一度!
ワタシは加藤に向けてゆっくり距離を詰める。
!?
今 俺は何をしている?これは、、、天井?
身体を起こし前を向こうとすると学生服の娘が俺に向かってゆっくりと足を進める。
「うわぁぁぁあ“あ”あ“!!!!」
俺は痙攣した手足をなんとかばたつかせて後ろに下がる。
小娘はそれを獲物でも見るかのようにジッと観察しながら距離を詰める。
「まっ待て!お願いだ!俺はただっお前の母親がっ!!?」
「・・・」
娘は俺のそんな声に耳を傾けず竹刀を構える。
「!?」
俺は娘のその反応に絡まった足をなんとか動かし、出口に向かって全力で走る。
ダメだ!話が通じない!ただのガキに成り下がったと思っていたが教会にいたとき以上だ!今は全力で足を動かせ!
娘はその背中が雲の影に入って行く姿を静かに眼で追いかけていた。
「う゛、、、うん?」
僕は硬いベッドの感触を確認しながら薄ら小さな穴が等間隔に空いた天井を眺める。
「ふ~ん、、、」
僕はゆっくり身体を起こすと、、、
「あ!起きた。」
右隣で結衣先輩が顔を覗き込んでくる。
?若干目が開いて顎のラインがスマートになったような?
「ん~?」
「どうしたの?そんなに人の顔をじっと見て。」
先輩は少し両方の眉を寄せながらこちらを突き放す。
「いえ。なんだか顔がきれいになったような?」
「へ?」
先輩は目をぱちくりさせる。
・・・
「いえ。やっぱりなんでもありません。」
「あーうん。そ、、そう。・・・・・。あ、頭の方はどう?」
「頭?・・・。いえなんとも・・・。」
照れ隠しなのか先輩は無理やり話題を切り替える。
「そ、そう。」
「・・・。」
「・・・。」
・・・・・・・・。
『あの、』
先輩と声が重なり、つい言葉を止める。
「あ、さ、先にどうぞ。」
「いえ。先輩なんですからそちらからお願いします。」
「そ、そう。」
先輩は胸を大きく上下させ深呼吸する。
「フーーッハーーーーー、フーーッハーーーー。・・・」
先輩は呼吸を整えて僕の目をジッと見つめる。
・・・・。
「あ、、、。ありがとう。・・・。」
「え。ああ。はい。・・・。」
最初の一音で耐えられなくなったのか目をそっぽ向けながら話し、僕は素っ気ない返答をする。
「はいッ!おわり!次、中島君の番!」
唐突に声を上げ、僕に話題を振る。
「・・・。はい。では。」
しばしの沈黙を破り、僕はまっすぐ先輩の目を見ながら言葉を発する。
「先輩。僕と付き合ってください。」




