怨嗟
「はあ。まったく。なんでこの俺がガキの観察なんざ…。」
蒸れた手袋をはためかせながら、オレンジの薄暗い道を進んでいく。
7年前、俺は聖女と言われた女とガキをつくった。当時落ちこぼれだった俺には女とヤレて、しかも金も貰えるって話に夢のような話に思えた。ただそれが間違いだった。
当時も利用されていることを頭の奥では理解していたが、その当時は親の作った借金を返済するのに手一杯でそれを断り切ることができなかった。悪くなかった。俺はその程度で満足していたんだ。奴らの手のひらの上で踊らされているだけだと気付かずに…。
ふと右側が暗くなったかと思うと右横から大型トラックが迫ってくる。
「っと…っぶねぇなぁ!!」
アクセルを全開にしてサイドミラーのギリギリのところをすり抜ける。
「この野郎!!俺に喧嘩売るとはいい度胸じゃねえか!?」
俺はトラックとの距離を30mほどの距離を保ちながら走り続ける。その間トラックは車間距離を開けようと速度を落としたり、逆に追い越し車線に移動したりするがそれも車体で妨害する。
「対象 後方約30m。目標は……。ハッ、ちょうどいい!」
俺は前方200mほど先に定刻まで待っているのか路肩停車しているバスを発見する。
だんだんとヘルメットの下で口角が上がっていくのがわかる。
俺は周囲の空間へとだんだん意識を溶け込ませ、30m後方にある意識の糸を掴む。それを引っ張り込み200m先の左側に固定し強固に結び付ける。
「ハッ!ほら!ビリヤードだ!」
ヘルメットの下でそう口にするとミラー越しに後ろのトラックが徐々に左に逸れていき……。
ガシャァァァアアアアアアン!!!
けたたましい衝突音が円柱状の壁に乱反射する。
「っ!!うっせえなあ!!死ぬときぐらい静かに死ね!!」
轟音はトンネルを抜け、晴れ渡った空に響いていく。
数日後・・・・・・
クソッ
カレー屋の近くで一度見つけたが見失った。気付いて逃げられたか?しかし、あいつはこっちに来たばかりで土地勘はあまりないはずだ。『占い師』の言っていたことは間違いだったのか?
………。
いや。もし仮にそうだったとしてもそれしか情報がねえんだからやるしかねえ。しかし、あの女ァ!!出て行くときにとんでもねえもん盗んで行きやがって!!お前のせいでこんな面倒なことする羽目に…。
見てろよ?
お前のツケは必ずお前のガキに払わせてやるからな?




