洗脳的なアレ
1-3の合唱が終わった。感想を一言で言うと伴奏の中島君がめっちゃ暴れてた。最初のお辞儀の音からふざけてるなとは思ってたけど、そこから前奏で謎のメドレーを奏でたと思ったらだんだんとAメロに入ったと思ったらめっちゃアレンジしてた。途中で演奏がなくなったり音の強弱を強調したり、最後にはワンテンポ遅らせて演奏したり・・・。おかげでめっちゃ盛り上がってたけど練習大変だったんだろうな・・・。大変だね、あのクラス。
で、ボクは今何してるかというと中島君と合流してちょっとあれしちゃおうと思ってね。いや…変なことではないと思うよ?うん。ちょーっと中島君の頭の中をいじくるだけだからね!ただの健全な手助けだよ、うん。え?なに?それ洗脳と一緒やって?まあ中島君、自分でそれ解いちゃったし…大丈夫っしょ!
っと合唱を終えた生徒がガヤガヤと騒ぎ立てながら通路の奥から歩いてくる。かなり盛り上がっているようだ。熱気がボクの横を何度か通り過ぎ、やっとボクに視界に奥の方で男子生徒に絡まれているメカニックにテカテカしたものが映り込む。ボクはそれに近づいた。
「オーイ!中島クーン!」
ボクは一度声をかけても届かなかった様なのでもう一度声を出そうとすると、それに気が付いたのかおかもっちゃんが中島君を呼びに行ってくれた。
それで中島君もこちらに気がついたのかクラスメイトを引き離してこちらに近づいてきた。
「先輩。どうしたんですか?」
中島君はさっきのクラスの熱気もまるでなかったかのように冷静に質問する。
「ああ、うん。ひとまず大分盛り上がってたね!おめでとう!」
「あ、ありがとうございます。」
中島君は呆気にとられたかのように返事をした。
「で、だね。ちょっと2人で話せる?」
「2人でですか?」
中島君は顎に右手を当てながら少し考え込む。そして…
「分かりました。じゃあそこの階段裏がいいんじゃないでしょうか?」
「いいね!そうしよう!」
ボクと中島君はホール内へ繋がる階段の裏のスペースに向かった。
「それで…話ってなんですか?加藤に関することですか?」
階段の裏につくと中島君は声を押さえながらボクに話しかける。
「いや。それとは別のことだよ。」
「?それじゃあ何か紗良先輩のことで気になることでも?」
それに対してもボクは首を横に振る。
「いや。違うよ!名探偵でしょ?当ててみて?」
ボクはいたずらっぽく笑いかけるそばから中島君は顎に手を当てて考え込んでいる。
「じゃあ3年の先輩たちのことですか?」
「それとも違うよ。ほら!頑張って!」
ボクは煽るように応援する。
「それじゃあ残ったのは一つしかないですね?」
「お?やっとたどり着いたかな?」
ボクは口角を上げ、悪役っぽく答える。
「僕に何かするんですね?」
「その通り!」
ボクは両手をわざとらしく叩きながらそう返した。
「それで?何するんです?加藤を見えるようにするとかですか?」
「いや…それができたらいいんだけどまだはっきりしないからね。」
「そうですか。じゃあシンプルにパワーアップ系ですか。」
「うん。そうだね。」
ボクは肯定する。
「簡単に言うと中島君がイメージした一番強いキャラに憑依して貰うの。」
「ああ。なるほど。つまり僕は[強いキャラ]をイメージして、そのキャラクターを演じるように僕の脳に強制するっていう訳ですね?」
「………。」
中島君の予想のあまりの正確さについ冷や汗が首筋に流れる。
何で知ってんの?いや推理したんだろうけど、それにしても正確すぎない?
「じゃあ早くやってしまいましょうか。今からイメージするのでいつでもどうぞ。」
中島君はノリノリで目を閉じ、呼吸を整える。
え?いや。人格が変わっちゃうんだよ?もうちょっと抵抗とかあってもいいんじゃないの?
「えっと…。じゃあいくよ?」
「どうぞ。」
ボクは惑いながら中島君の両手に軽く触れた。
「終わったよ。」
ボクは中島君の手を離す。
「そうでごわすか。」
中島君はそれに返答する。
うん?
「?それで…どう?何か変化ある?」
「そうでごわすね~。あ!おいどんの身体が軽くなったでごわす。」
身体が軽くなったのか、じゃあ成功だな…じゃなくて。………。なに?ごわすって?
「ねえ中島君。」
「何でごわすか?」
「一応聞くんだけどさ…。」
「うむ。」
……。
「何イメージしたの?」
ボクはこれまでになく真剣に質問した。そして返答も真面目なトーンで返ってきた。
「薩摩藩の西郷隆盛にごわす。」
「なんでそれ選んだんだよ!!!!」
ボクのお腹から人生で一番の大声が出た。




