魔法の杖(長さ120cm程度)
文化祭当日。ボクと紗良は音楽ホールに向かっていた。演劇の準備をするためだ。ボク達の通う真黒高校の文化祭は2日間に渡って行われる。1日目は音楽ホールでの各学年、部活での演し物、2日目は学校敷地内での屋台、部活の演し物、演奏などを行う。
ちなみに2-4、ボクのクラスは1日目は人魚姫の劇、2日目は教室でのレクリエーションをする予定だ。そして残念なことにボクらはほとんどそれに参加できない。なので、せめて準備くらい少し手伝おうと予定よりも20分くらい早く集合場所に向かっている。
公園沿いの人気のない道をひたすら進んでいると川の法面から見覚えのある男の子が上がって来るのが見える。
「おーい!中島くーん!」
向こうも気が付いたようで右手を振り替えしてくる。
よく見ると左頬が少し赤黒く腫れ上がっていた。
「先輩。おはようございます。」
「おはよう、だけど・・・そのほっぺたどうしたの?」
中島君が何でもないように挨拶すると紗良が二番目に気になってる質問をしてくれた。
「ええ。ちょっと兄貴に気合いを入れて貰っただけです。」
「えっそうなんだ・・・。」
予想に反し中島君が満足げに答えたので少し紗良が引き気味になっている。
「それよりも先輩方はこんなに早くどこに行くんですか?」
「そりゃあ文化祭の準備でしょ!ほら!ボク達全然手伝えれてないからさ!」
「ああ。そういうことですか。そういうことなら僕に付いてきてください。近道知ってますから。」
中島君はそういうと自転車に跨がる。
「・・・。中島君。その前に一つ質問していい?」
「なんですか?」
ボクは中島君の背中に背負っている円柱状の細長いケースを指さす。
「その背負ってるものなに?」
その質問に対し、待ってました!と言わんばかりに自信満々に答える。
「これは杖です!」
「・・・は?杖?」
ボクと紗良は一緒に首を傾げる。
「はい!杖です!」
中島君は同じ答えを繰り返した。
「えっと…。杖なのは分かったから。それって何につか「護身用です。」
中島君は食い気味に答える。
「いやまじめ「護身用です。」
「えっと「護身用です。」
………。どうやら護身用の杖ということで乗り切るつもりらしい…。
いや。杖にしては長すぎるだろ!大体120cmくらいあるよ!?絶対何かの凶器だろ!
「先輩。これは魔法の杖です。失神の魔法が使えます。護身用です。」
「………。うん。あっはい。わかった。それは杖なんだね………。」
「はい。魔法の杖です。」
「………。それじゃあ行きましょうか。」
おぼろ雲の漂う中、ボク達は眩しい朝日を背に音楽ホールに向かって自転車をこぎ始めた。




