アナ
「え?それって…。」
その場が混乱に包まれる中、最初に口を開いたのは紗良だった。
「そう。紗良は知ってるんだけど、先週の土曜日。中島君がその男に盗聴器を仕掛けられてたの。」
ボクは必死に考えた。紗良をこれ以上不安にさせず、この場の全員に違和感を持たれることなく協力を得られる方法を。ボクは考えた。
そして、誰かにピエロになってもらわないとそれができないという結論に至った。ただそのピエロ役が問題だった。候補としてはボク、紗良、蒼、中島君だ。この中から選択するとして最初に排除するべきは紗良と蒼だ。どちらが関わったとしても余計に紗良の不安を増強させ、状況がさらに悪化することは目に見えている。ボクを選んだ場合も同様だ。ゆえに中島君を選択した訳だけれども……。
『……。』
「え…えっと?ちょっと考えさせてくれ…。」
男子メンバーが完全に困惑している。それもそのはずだ。だって……
「えっとつまりは、だ。その中年男に中島がストーカーされてるってことでいいんだよな?」
それはつまり男同士ってことを連想しちゃうからね…。
いや…。わざとじゃないよ?ほんとだよ?ボクこんなことして喜んでないし…。むしろ悲しいくらいだし…。なんでこんなことになっちゃったんだろう…。ぐすんっ
「……うん。状況は…ある程度理解した。それで…どうすればいい?」
藤原部長は平静を装いながら続けるように促す。
「うん。結論から言うとその中年男が文化祭に中島君を狙って突撃してくると思うから、見張っていて欲しいの。」
ブフッ
……。男子メンバーが吹き出した。
一体何を想像したんでしょうね~。健全なボクには分からないな~。
「………。おっおう。後輩の背中を守るのは先輩の役目だからな!うん。」
「ケツだけに?」
先輩ヅラをする小川先輩に藤原部長が突っかかる。
「ちっちがう!余計なこと言うんじゃねえ!」
小川先輩が動揺している横で紗良は顔を赤くして伏せていた。
「それで?そのうちの中島君のケツを狙う奴の検討はついてるのかな?」
藤原部長は冷静にケツを引っ張り続ける。
「ちょっと!あんまりいじるとかわいそうだよ!真剣なんだから!」
「わかったわかった。で?誰なんだい?そいつは?」
ボクは深呼吸をしてから声を低くて答える。
「私の弟の父親です。」
そう答えた瞬間、場の空気が一気に凍り付くのを感じた。
それを無視してボクは続ける。
「先週の土曜日にボクは中島君からそれの相談を受けてたんだけど、鞄に盗聴器を仕掛けられてることに気付いたの。これがその盗聴器。」
ボクは穴の開いた焼け焦げている電卓を机の上に置いた。
真剣に悩んでいること、そして被害の状況を伝えた。これでみんなも真剣に協力してくれるはず!それに、これで紗良も中島君への認識を改めてくれる。
「みんな手伝ってくれる?」
ボクは再び部員に協力を求め、全員が首を縦に振った。
その後クラスの合唱の練習を終えた中島君が他の部員から哀れむような目で見られたのは言うまでもない。




