ティンホイル・ハット
ボク達は加藤の目から逃れるため少し国道から離れた道を通ることにした。紗良は特に何も言うことなくボクに着いてくる。よほど疲れているのか特に違和感を持たれていないようだ。
この様子だとひとまず学校までは大丈夫そうだな。なんとか朝礼には間に合いそうだ。
「ふー。うん?」
問題が解決しそうだと言う安心感を得た直後、ボクは理解不能なものを目撃した。
ボク達の反対車線にペラペラの銀色のヘルメットを頭に着けた学生服の男子が自転車で走っていた。
………。
ボクは何も見なかった。そう何も見なかった。そんなことをする知り合いなんていない。そう、ボクはこの人とは無関係だ。知らない人です、はい。
「あ!結衣先輩おはようございます。紗良先輩も…。うん?」
ギャー!?声かけて来んな!こっちまで変な人に思われるじゃんか!!無視しよ無視。
「うん。おはよ、ブッックククッ」
紗良が変態の挨拶に答え、直後に何かに気付いたように笑い始めた。
紗良。今のでこの変態の知り合いってことがばれたよ。どうやって乗り切ろうか。
「フッう゛っう゛ん。おはよッ。さあいこうか。」
ボクは必死に平静を装いながらスルーしようとする。
こういうときは無視が一番だよ。
そう考えて先に進もうとするとその変態に呼び止められる。
「紗良先輩。クマができてますよ?大丈夫ですか?」
ダー!?話しかけて来んな!
「いやッそれよりッ中島君ックッククッ。そのへッッヘルメット?ッなに?ッ」
ブフッ
紗良がこらえきれずに吹き出してしまった。ボクも釣られて吹き出してしまう。
「これは…アレですよ。頭を電磁波から守ろうかと思いまして…。」
「ヒッッいやッ逸れ完全に変な新興宗教に汚染された人だからッ!」
中島君が真面目な顔をして説明するせいでだんだん笑いがこらえきれなくなってくる。紗良は道路の隅で体を丸めて笑い始めた。
大丈夫かなこれ…。
「先輩もつけます?いくつか作ってきましたよ?」
「いらないから!ッヒッっていうかそれッはッ外してくれる?そっそれと頭のとんがってるの何とかして!」
中島君が鞄からもう一つアルミホイルで作ったヘルメットを取り出し、ボクに手渡そうとする。ボクは当然それを拒否した。これ以上変態を増やしてたまるか!
「え?なんでですか?「何でですかじゃなくて!こっちが恥ずかしいからッヒッヒッとッとにかく外して!」
中島君はボクの要望通りにアルミヘルメットを外した。しかしその頭にはラップが巻かれていた。
ブハッ
ボクは再び吹き出してしまった。
「なッなんで下にラップ巻いてんのさ!!」
「いや。形が崩れるといけないかと思って。」
もっもうダメだわ。お腹がお腹がやばい。これだけで腹筋割れそう。
ボクがお腹を押さえてなんとか深呼吸をして落ち着こうとしているすぐ隣で紗良は陸に打ち上げられた魚みたいにけいれんと制止を繰り返しながら地面に転がっていた。
ボクは深呼吸をしながら悟る。
ああ。絶対今日大遅刻だわ。




