適応
「よっこいしょっと。」
ボクはパパと蒼が朝ごはんを食べているところを通り過ぎながら、洗濯物をベランダまで運びハンガーに掛けて干していく。
あれ?このパンダ靴下懐かしいなー。紗良が昔これきっかけで中学の男子にからかわれてたっけ?
実は紗良が朝に弱くなったのはこっちに引っ越してきてしばらくしてからのことだ。
紗良とボクは中学校時代からの友達でそのきっかけは委員会が一緒になったときだろうか。
確かその時は面倒だからってクラスの男子が図書委員の仕事をほっぽり出して遊びに行ってたんだっけ?
それで1人黙々と本の確認をしているところに紗良が合流して手伝ってくれたんだよね。
懐かしいなー。
そうそう紗良が朝に弱くなったことだったね。
多分だけどきっかけはK市での事件だよね。
だってカウンセラーの先生が言ってたもん。
心的外傷はそれが起こってしばらく経ってから問題になるケースも多いって。
正確な時期は忘れたけど電車の脱線事故のときの話だ。それが起きた直後はショックを受けながらもある程度生活できるんだけど、しばらくして仕事に復帰し始めたときにふとしたタイミングでそれを思い出してパニック発作が起こる。そんな事例が相次いだって言ってた。それからそういった事故が合った後の対応がもっと慎重にとられるようになったとか…。
その延長線上にあるのが紗良が毎週水曜日に受けているカウンセリングなんだけど…。
っていうかボクは大丈夫だしなんともなんだけど一緒に受けさせられている。
何というか時間の無駄というか…。全然平気だし。
「ハー。」
まあそれでもちょっとでも紗良の力になれてるんだったら嬉しいな。
それだったら何時間でも付き合っちゃう。
だって友達っていうか家族になったんだし。
とにかく、紗良が安心して眠れる日が来るように今日も頑張ろう!
まあその前に加藤をどうにかしないといけないんだけどね…。
ボクはふとスカートの右ポケットの中に手を入れながらショッピングセンターでの会話を思い出す。
中島君曰く、盗聴器を無効化する方法は主に2つ。
1つは電源を外すこと。
簡単に言えばコンセントから引っこ抜く。これだけで機械に電気が行かなくなるからね~。簡単だね~。
2つめは電波を遮断する方法だ。
具体的にはお菓子の缶に入れるとかで、とにかく金属が表面を覆う形になればいいみたい。中島君はアルミホイルをおすすめしてた。
理由はなんかいろいろ言われたけど要するにアルミは特に電波を遮断しやすいらしい。
この中でボクがポケットに入れているのは30cm四方のアルミホイルを折りたたんだものだ。これがあれば盗聴器は大丈夫でしょう。
っていうか中島君なんで物理で殴ったし!他になんかあったでしょ!危うく火事になりかけたんだけど!
そんなことを考えていると紗良が部屋から洗面所に向かうのが見えた。
大丈夫かな?
時間結構ギリギリだよ?




