第0章 - プロローグ
俺の名前は橘京。
十六歳。
ほんの数か月前まで、徳島出身で模試の点がちょっとだけ良い、ただの普通の高校生だった。
友達もいたし、部活でバスケもやってたし、目立たないのが得意。
平和で悪くない毎日だったんだ。
――東京の名門インターナショナル高校の奨学金をもらうまでは。
クラス2―K。
ただのホームルームじゃない。
「グローバル・インテグレーション・プログラム」っていう社会実験みたいなやつで、世界中から生徒を集めて“地球規模の友情”とか作ろうとしてるらしい。
俺にとっては……ただの騒がしい教室だった。
朝のチャイムの前、少なくとも四つの言語が同時に飛び交ってる。
「キョウ! 危ないっ!」
顔を上げた瞬間、消しゴムが飛んできて、なんとかキャッチ。
投げたのはルーカス・コンドー。
イスを二本足でバランス取りながら、気の抜けた笑み。
「悪ぃ! タクミに投げたつもりだった!」
窓際のタクミがちらっと振り向く。
オーストラリア育ちの帰国子女(?)で、日本語は教科書みたいに完璧だけど、ちょっと固い。英語はオージー訛り。
無表情で笑って、また窓の外を見た。
ルーカスはそういう奴だ。
カリスマを人型にしたみたいな男。
ハーフの日系ブラジル人で、うるさいけど嫌味じゃない。
存在感がある。近くにいるだけで守られてる気がする。
双子の妹ベラは対照的。
兄が焚き火なら、妹は静かな蝋燭。スケッチブックに夢中で、ペンが踊ってる。
「エマ、それはただの小テストでしょ。命がかかってるわけじゃないよ」
鋭いブリティッシュアクセント。オリヴィアだ。スマホをいじりながらぼそっと。
「準備を怠るのは、教育へのリスペクトを欠くことなの!」
エマ――アメリカ大使館の偉い人の娘――が腰に手を当てる。
「それはただの健康的なワークライフバランスって言うのよ」
オリヴィアの返し。
仲良すぎて、理由が謎な親友コンビ。
教室の隅にはもう一組。
韓国から来たハナと、その彼氏のチェン・ユー。
ハナは元アイドル候補って噂で、仕草が全部きれい。
チェンは上海のテック富豪の息子で、運動神経バケモノ級。
二人でイヤホンを分け合って、まるで別世界。
近くの机ではアドヴィクが、机を指で叩いてリズムを刻んでる。
彼だけ別の曲を聴いてるみたいだ。
――そんな感じの毎日。
天才とか外交官の子供とかアーティストとか、いろんな奴が集まるクラスで、
俺は田舎出身の「普通代表」。
で、その日。
何の前触れもなく、起きた。
……痛み。
最初はこめかみの奥の鈍い痛み。
それが一瞬で全身を駆け抜けた。
耳の奥で高音が鳴って、蛍光灯の光が――曲がった。
世界の端が滲み出して、色が溶け合う。
誰かが叫んだ。たぶん俺だ。
皮膚が剥がされていくような感覚。
神経の一本一本が弦楽器みたいに弾かれてる。
天井が割れるのが見えて、ルーカスが反射的にベラを庇う。
肩に石片が直撃しても、歯を食いしばって押し返した。
背中から一瞬、金色の光が弾けた気がした。
次の瞬間、世界は光の渦に呑まれた。
――潰されるような感覚。
宇宙の隙間に押し込まれるみたいに。
そして、静寂。
気づいたら、冷たい石の上に倒れてた。
金属と古い埃の匂いが肺に入る。
全身が痛い。
でも、生きてる。
クラスのみんなも周りに倒れていた。
東京じゃない。
ここは……どこだ?
俺たちを囲むように、フード付きの人物たちが立っていた。
壁一面に描かれた巨大な壁画――
黒髪で白い肌の戦士たちが、光の剣を振るって魔物を倒している。
古の英雄。
その中の一人、長い白髭の老人が前に出る。
壁画を見て、次に俺たちを見て、
その目が大きく開いた。
「……犠牲は捧げられた。儀式も完璧だった。だが……お前たちは誰だ?」
震える声で言いながら、老人は俺たちを指さす。
ルーカスの褐色の肌、エマの金髪、色とりどりの顔。
「お前たちは……すべて日本ではない……!」
その瞬間、目の前に淡い光が揺れた。
半透明の青いパネルが空中に浮かぶ。
文字が浮かび上がる。
他の奴らも、みんな同じように目を見開いていた。
俺の画面には、冷たい文字。
【職業:???】
【ステータス:未登録】
【エラー:異常を検出】
何の意味も分からないうちに、
床が――割れた。
召喚陣の中心から、石が裂け、空気が悲鳴を上げる。
空間そのものが崩れていく。
老人が顔面蒼白になり、震える声を漏らした。
「まさか……石が壊れた……! 召喚石が……! もう戻れぬ……!」
――そして俺たちは、
壊れた世界の始まりに立っていた。
ここまで読んでくれたなら、初めてのプロジェクトをチェックしてくれて本当にありがとうございます。これは、高校生活のカオスと壮大なファンタジーのスリルへのラブレターです。この物語を現実にするために全力を注ぎました。2-Kクラスの旅が、あなたの心を掴むことを願っています。冒険は始まったばかりです!




