6.二度と来るなですわ
「ごめんねログちゃん!やっぱりエニケーちゃんと仲良くするのは無理かも」
「ああ。うん。そうですわよね」
「本当にごめんね!せっかくアドバイスとかたくさんくれたのに…………」
「気にしないで下さいまし」
それよりも、もっと大事なことがありますわ。
なんで、また推定主人公ちゃんが私のところに来てるんですのぉぉぉぉ!!!?????
私、ちょっと前にもう推定主人公ちゃんから話しかけられることもないとか考えたはずなんですけど!?なんでまたこの子が私の部屋に来てるんでして!?おかしいですわよ!絶対に何かおかしいですわ!
「それで?エニケー嬢とのことを私に報告するために来たんですの?私はかなり前から失敗したことは分かってましたし、もうどうしようもないと思ってましたけど」
「え?…………ずっと前、から?」
私の言葉に心底驚いたとばかりに目を見開いて反応する推定主人公ちゃん。
何ともおまぬけな顔ですわね。今まで、というか、直近まで気付かれていなかったとでも思っていたのでしょう。愚かですわ~!
「ずっと前から、ですわよ。あなたもてっきり気づいてると思ってましたけど。…………あなたがエニケー嬢を調べるだけでなくストーキングまでしているというのは、相談に来てから2日もしない間に教室中で噂になっていましたわよ。もちろん、エニケー嬢自身もそれに気づいている様子でしたわ」
「そ、そんな…………」
私の話を聞いてみるみる顔を青くしていく推定主人公ちゃん。自分が大きな失態をしたということに気づいたわけですわね。一度ではなく二度までも私の注意したことを守れなかったのですから、堪えているのかもしれません。
ちなみに、本来ならば別の部分で青くなるはずなのですけど、
「逆に、なんであなたは気づかなかったんですの?エニケー嬢なんて、ストーキングを気持ち悪がって学園での活動を最低限にしてたんですのよ?乗馬をやめたり剣術の練習をやめたり、不自然なことが多かったではないですの。エニケー嬢は気が気でなかったと思いますわよ。それこそ、最近はストレスもあって相当気が立っている様子でしたし」
「う、嘘…………」
「嘘ではなくってよ。化粧で頑張ってごまかしてはいるようでしたが、最近は熊もひどくなってきていて見ているだけで辛くなりましたわ」
気づいていなかったのでさらに顔を青くする要因になりましたわ。
正直避けられ始めたあたりから気づいてよかったと思うんですけど、どうしてその可能性すら考えなかったのかが不思議でなりませんわね。
しかし、ここまで伝えられれば十分でしょう。
推定主人公ちゃんの行動がエニケーちゃんの不調や怒りを引き出したと考えれば、行動に多少の変化が出るはず。謝罪などされたら困ったことになりますが、メンタルに支障をきたして欠席が増えたり友人関係が上手くいかなくなり出したら最高ですわ。
その不調はきっと推定主人公ちゃんのことをよく観察しているであろうイケメンたちに気づかれるでしょうから。
不調に気づいた彼らは、一体その原因を何だと思うのでしょうね?きっと、推定主人公ちゃんが行なったことに対する罪の意識で弱っているなんていうことは考えないはず。それよりも、
「これから先、あなたへのいじめなどがないと良いのですけど」
いじめ。こちらの可能性を考えるはずですわ。いじめやそれに近い嫌がらせなんて貴族の常套手段ですもの。
推定主人公ちゃんもそうしたいじめが貴族に関わると行われる可能性があることは把握しているようで、
「いじめ!?…………そっか。そうだよね。でも、それはきっとケヌ君たちが守ってくれるはず」
思うところがあるようですわ。ただ、そうなった場合はイケメンたちが守ってくれると油断しているようですけど。
本当ならその油断は禁物ですし忠告したほうがいいところではあるのですが、特に私は推定主人公ちゃんがひどい目に遭っても気にならないので口を噤んでおきましょう。どちらかと言えば、ひどい目に合って欲しいくらいですからね。
ということで忠告をしないなら話題を変える必要があり、
「しかし、エニケー嬢と仲を改善しないとなると殿下たちとの関係も危うくなるのではなくて?今はまだ一緒に居られるでしょうけど、将来的に婚約者たちの許可が得られず引きはがされるなんて言うこともあり得るんですのよ」
「そうなの!?ど、どうしよう…………どうにかならないかな、ログちゃん!」
話題を変えた先は、将来のこと。今は学園の中であり、しかもまだ王子たちも家を受け継いでいないということで許されていますが、卒業した後も推定主人公ちゃんがイケメンたちと一緒に居られるとはとても思えない。
そこをつついてみれば、また私に助けを求めてきましたわ。相談とかやめてほしいと思ってましたけど、もしかして私はまた失敗をしてしまったのでしょうか?
いや、まだそうと決まったわけではありませんわね。
この相談の回答次第ではこれから先、私に都合がいいように状況が動くことも十分考えられますわ。ここは覚悟を決めて、徹底的に推定主人公ちゃんを誘導してやりましょう。
と言っても、私がやらせたいことを推定主人公ちゃんにさせるには言葉の選択肢などほとんどなく、
「難しい事を言いますわね。婚約者であり将来的な正室である以上、納得させないことには簡単に会うことも難しいと思いますけど」
「そっか。婚約者だと難しい…………ん?婚約者だと、難しい?」
私の言葉を受けて、推定主人公ちゃんはしばらく沈黙した後カッと目を見開く。何かを思いついた様子ですわね。私の意図している物と同じものであればいいのですけど。
「ありがとうログちゃん!私、何をすればいいか分かったよ!」
「そう。それは良かったですわ。頑張ってくださいまし…………しかし、これが最後の会話だと思うと寂しいところがありますわね」
「え?最後の、会話?」
覚悟が固まってやる気を見せていた推定主人公ちゃんでしたが、その表情は一転。私の言葉によって困惑を含んだものになりましたわ。
ここから私の口から発せられる言葉は、「君は良い友人だった。しかし、君のお父上が悪いのだよ?」などという物…………では当然なく、
「当たり前ですわ。あなたはエニケー嬢と仲良くならない、というか、ほとんど敵対を確実にする様子。私個人としてというより、我が家の者としてもう関わることはできないのですわ。つまり、今回があなたとこうしてお話しできる最後のタイミングというわけです…………まあ、将来のことは分かりませんけどね。オ~ホホホホッ!」
「っ!…………そっか。そうだよね。ログちゃんだって、家の事があるもんね。今までも言ってくれてたのに相談には乗ってくれたからずっとこの先も大丈夫なんだと思ってた」
この先の相談お断り宣言!
これで私は完璧に推定主人公ちゃんとの関わりを断って、推定主人公ちゃんを部屋に招くなんていう特大のリスクを冒さずによくなるわけですわ。
勝ちましたわね。風呂入ってきますわ。
「分かった。じゃあ私、まだログちゃんとお話しできるようにしてみせるから。待っててログちゃん!私、絶対にやり遂げて見せるから!」
「あぁ~…………うん。頑張ってくださいまし」
いや、二度と来るなですわ~。




