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最初の闘い

 草原に飛ばされた俺は、いつの間にか簡易的な防具と片手で持つには重い剣を装備させられていた。


「な、なんだよ、コレ」


戸惑う俺の前に、禍々しいオーラを放つ魔物が現れた。


「そいつはゴブリンです。今のアナタなら四十パーセントの確率で勝利できる魔物です」

「四十?! まぁまぁ負けない?!」

「ほら、来ますよ!」


俺の背後に隠れていた女神が、こちらに向かってきている魔物に向かって俺を突き出す。


「うあああ、嘘だろ! 来るなぁ!」


ギエェという叫び声とともにゴブリンが空高く飛び上がる。剣を横向きに振ろうとしていた俺は完全に意表を疲れた形になる。


「あ、やば、死ぬ」


死を確信したそのとき、唐突に俺の右手が輝きを放つ。


「来ましたね。それがあなたの能力---」


光に導かれるように、俺の脳内に『魔法の使い方』が流れ込んできた。


「(これは…? 炎の魔法? そうか、こうやって魔法を覚えて強くなっていくんだな!)」


俺は右手に現れた小さな火種を握りしめる。

 昔遊んだことがあるテレビゲームのように、いろんな魔法を少しずつ覚えていって段々と迫力のある魔法に育っていくのだろう。唐突に異世界転生させられて、わけもわからないまま戦闘に駆り出された俺だが、さすがにこの展開はワクワクせざるを得ない。


「くらえ! 炎の魔法!」


俺は輝いていた右手を眼の前まで落ちてきているゴブリンにかざす。すると、ゴブリンの鼻先に手のひらが触れるか触れないかのタイミングで、目の前が真っ赤になる。


ドゴォン


あまりの威力に、俺は女神がいる位置よりも数十メートルは後ろに身体が吹き飛ばされた。


「…は?」


身体を起こして辺りを見渡すと、ゴブリンはおろか、平原ごと消し炭に変わっていた。

 ぽかんとしている俺のもとに女神が小走りでやってくる。


「おー、さすがの威力ですね『エンシェント・ファイア』。この世界最強の古代魔法の一つですが、早速使えるようになりましたね!」

「待て待て待て待て」

「はい?」

「なんでいきなりそんな規格外の魔法が使えるんだよ、俺は!」


女神の両肩をつかみ大きく揺さぶる。


「あぁあぁぁぁ、揺さぶらないでくださああいい」


俺が動きを止めると、女神はヘナヘナと膝をつく。


「…三半規管がぶっ壊れました」


ぐったりとする女神。あぁ、こいつアレだ、運動能力が全くないやつだ。魔法やら女神の能力やらに全振りして、倫理観やら運動能力やら大事なものを捨て去ったやつだ。


「はやく説明しないともっと揺さぶるぞ」

「うぅ…わかりました…」


女神はさっきとは打って変わって弱った声で説明を始める。


「ユウタ様、あなたが与えられた能力は『()()()()()()()』です」

「ちょ、超・主人公補正…」

「はい。王道なピンチに陥ると、ご都合主義な展開が確実に発生するという能力です。さっきのゴブリン戦でも、『初の戦闘』『美少女を守らなければいけない状況』『殺される寸前』という、冒険モノ作品の主人公が第一話で陥るような王道展開になったことで発動しました」

「美少女をどうのこうのって部分にはもうツッコまないとして…王道展開ってのはわかるけど、どう考えても与えられすぎな魔法が発動したんだが…」


俺が知っているような普通の王道展開なら、とりあえずゴブリンは倒せる程度の能力が与えられて、そこからは山あり谷ありでラスボスを倒していくような展開だ。先程俺が放った魔法はどう考えても、物語終盤で会得するようなものであった。


「その点が『超』がつく所以ですね。とにかくたくさんの世界を救ってほしいので、手っ取り早く最強になれるようにしました。ちなみに、能力の開花だけではなく、さまざまなイベントも王道展開であれば色々手っ取り早く進むようになっています」

「…いや、つまんねぇだろそんなの!」

「そうですかね? 最近は主人公が最強な方が流行ると聞いていましたが。あ、ちなみにですが、もう今のあなたならこの世界の魔王も倒せますよ」


…こうして俺は魔王討伐に向かうことになった。

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