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最初の村

「…きろ!」


「お…き…ろ!」


「…ん、ん…?」


「おい! 起きろ!」


図太い男の声に揺さぶられ、俺は目を覚ました。


「あんたは? というか、ここは…?」


重い上半身を起こし、あたりを見渡すが、全く見覚えの無い景色---正確には、《《実際に見たことはなかったが映画やアニメでは観たことがある景色》》が広がっている。


「おい、あんた大丈夫か?」

「え、あ、はい…」


俺を目覚めさせた図太い声の持ち主は、俺の方を掴みそう言った。男は肩幅が広くガタイの良い坊主頭の黒人で、不思議そうに俺の顔を覗き込んでいた。


「お、おれは、一体なんでこんなところに…?」

「はぁ? 知るかよ。急に現れたかと思ったら、すぐにぶっ倒れたんだ。人の店の前でな」


男の視線が地面へとゆっくり移動する。俺もその視線を恐る恐る追って行くと、果物や野菜が載せられていたであろう荷車が、俺の下敷きになっていることに気づく。


「あんたさっき、『大丈夫』って言ったよな?」


男は不敵な笑みを浮かべる。


「あー、どうだろう、なんか身体中痛くなってきたような…」


俺の肩を掴む男の力がグッと強まる。


「弁償、するよな?」

「あ、はは…」


俺は強い力で引き寄せられ、男の顔が鼻先まで近づく。絶賛混乱中で混沌としていた俺の思考は『この人に弁償するために働いて、とにかく生き延びよう』という思考に統一されていく。


「あー! ちょっとちょっと!」

「あん?」


人集りの中から少女の声が響き渡り、俺と男は声の聞こえる方に首を向ける。すると、群衆をかき分けて身長一四〇センチくらいの長髪の美少女が現れた。


「ユウタ様ってば、もうヒロインポジの相手まで見つけたんですか? 抜かりないですねぇ」

「はい?」


少女の言葉に疑問を抱いた俺と男が目を合わせる。そして、俺たちはキス寸前の距離感になっていたことに気づく。


「ば、バカ! 俺たちはそんなんじゃ!」


男が頬を赤らめて俺を突き放す。


「あーツンデレ属性ですか。しかも俺娘オレっこ。どんだけ歪んだ性癖なんですか」

「おま、話を聞け!」


男は強く言い返すが、ツンデレと言われたせいで釈明すればするほど、怪しい雰囲気になる。群衆の視線に耐えられなくなった男は「絶対弁償させてやるんだから!」と言って走り去った。


 完全に置いてけぼりの俺はぼーっと走り去る男の背中を見ていた。


「あれ、ユウタ様。追いかけなくて良いんですか? ()()()()()()あなたのヒロイン枠では?」

「あのなぁ…。というか、なんで俺の名前を知ってるんだ? ってかここどこ? なんで俺はここに…」

「あー、そっか。異世界転生すると直前の記憶も吹っ飛んじゃうんでしたね」


はぁっと少女はため息を付いてから俺の前に正座する。


「いいですか。この物語は一万文字くらいしかないので端的にそしてシンプルに説明しますね。質問も基本はナシで」

「え、一万、なに?!」

「質問は基本ナシで」


少女は俺をにらみつける。


「こほん。えー、あなたは通学中に不慮の事故で亡くなりました。素行も別に悪くないですし、単純に運が悪かっただけです。なので女神である私があなたを転生させることに決めました。なので、あなたは転生させてあげた私のためにたくさん世界を救ってもらいます。質より量。たくさんです」


少女が話し終わったかどうか判断するために顔色を伺っていると、「質問どうぞ」と言ってくれた。


「あの、正直一個も理解できなかったんだけど、なんで俺が選ばれて、なんで世界を救わなきゃいけないんだ? それに、俺は事故で死んだって…」

「あー、そこらへんのシステムは詳細に説明している暇はないですね。アニメとか見ない人ですか? カクヨムとかなろうとかは? 年頃の男の子なら少しくらい見たことありますよね? とりあえず、そんな感じです」

「どんな感じ?! 一個も説明されてなかったんだけど!」

「よく理解いただけだと思いますので、次の村に行きますよ!」

「おい!」


女神を自称する少女は俺の身体を不思議な光で立ち上がらせる。


「さぁ! 初回戦闘イベントをクリアしに行きますよ! そこであなた自身の能力を理解してもらう必要があります」

「ちょっと待て、ってえええぇえぇぇぇぇ!!!」


少女と俺の身体が宙に浮き、西洋風の村から草原の方に瞬間移動させられた。

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