第5章〜最終章
ニューゲノムの未来決断の時は迫りつつあった。
「ねぇカイル、私達ニューゲノムの持ち合わしている透視能力によってこのように追われる身になっている事を考えてみると、きっと私達はとつても不幸なんだわ…」
アリスがそう呟くと、カイルは強い口調で言い放った。「アリスってマイナス思考なんだな。
考えても見ろよ、俺達ニューゲノムにしか無い特殊能力を皆がいくら努力しても手に入れる事などできないんだぞ!」
そんなカイルの耳元でそっと呟くアリス。
「そうかも知れないわね…
しかし私はこうも思うの、もしかしたら私達が研究対象として地球人に捕獲された場合、少なくとも追われる身の状態からは開放されるわ。」
するとカイルが下を向く。
「そんな事したらきっと僕らの自由な生活は無くなる筈。
隔離されて常に監視の眼から逃れられなくなるだろう。そして研究が完了した時点で、きっと僕らは廃棄される運命なのさ。」
「そうかしら?
もしかしたらそれも地球人との交渉次第じゃ無いかしら? それよりも、以前サンタクロース民族であるルシアが言っていた言葉が妙に気にかかるの。
「サンタクロース星人の悪い性質が地球人のゲノムを取り込むことで改善されるーーーー」
そう言っていたわ。それって逆に取ると〜、地球人のほうが性格が良い、っていう意味合いになるわよね?」
アリスとカイルは、透視能力を持つニューゲノムとして生まれた特別な存在であり、その能力を持つことそのものが彼らを追われる身にさせているのだったーーーー
アリスは状況を考える実質的な一方で、カイルは楽観的な視点を持っていた。
ー☆ー☆ー☆ー
ある日、彼らはサンタクロース星人のルシアと接触し、地球人のゲノムをこの星の全ての種族に取り込むという奇妙な提案を聞いたのだった。早速ルシアは説明しはじめました。
「サンタクロース星では、地球人の性質が改善されることが証明されています。我々は協力的な種族です。
地球人との交流を通じて、あなたたちニューゲノムの透視能力がより効果的に使われ、地球の進化に貢献することができるかもしれませんから。」
アリスとカイルはこの提案について真剣に考えました。彼らは自分たちの透視能力が、地球の進化や科学研究に役立つ可能性を理解していました。
同時に自分たちが研究対象として取り込まれることへの懸念もありました。アリスはルシアに尋ねました。
「取り込まれることで、私たちはどのようになるのですか?」
ルシアは真剣な表情で答えました。
「私たちは過去の過ちから学びました。あなたたちは尊重され、協力を強制されることはありません。むしろ、我々は協力的な関係を築くことを望んでいます。」
カイルとアリスは再び考えました。彼らは自分たちの未来についての選択を検討し、地球人とサンタクロース星人の共同プロジェクトに参加することを決断しました。
この決定は、新たな未来への扉を開くことになるでしょう。そして、透視能力を持つ彼らの特別な存在は、地球の進化に貢献し、新たな友情を育むことになるかもしれません。
ー☆ー☆ー☆ー
しかし此処ガンダル星の政府機関大臣モッズは、ニューゲノムをこの星に持ち込むことに猛烈に反対であった。
何故ならば彼も生粋のサンタクロース民族のガンダル星人であり、その血が汚されると考えていたからであった。
ガンダル星の政府機関大臣モッズの反対は、アリスとカイルがサンタクロース星に参加するプロジェクトに対する新たな障害となった。
モッズはガンダル星人の純粋性を守るために、ニューゲノムの存在を受け入れることに強く反対していました。
彼の立場は彼自身の信念に固執しており、地球人のゲノムが彼らの文化や遺伝子に影響を及ぼすことを懸念していました。
一方で、ルシアとサンタクロース星人のコミュニティはアリスとカイルを歓迎し、彼らの透視能力を共同プロジェクトに活かすことに大きな期待を寄せていました。
彼らはニューゲノムが新しいアイデアや視点を提供し、文化の多様性を尊重することで、共同の目標に向かって進むことができると信じていました。
この対立の中で、アリスとカイルは調停役としての役割を果たすことに決定しました。
彼らはモッズとの対話を開始し、彼の懸念を真剣に受け止めました。アリスは言いました。
「モッズさん、私たちはあなたの不安を理解しています。しかし、地球人のゲノムが持つ可能性を無視することもできません。
共同プロジェクトを通じて、新しい視点やアイデアが生まれ、ガンダル星にも恩恵をもたらすことができるのではないでしょうか?」
カイルも続けました。
「私たちは共同体と協力し、お互いの文化を尊重しながら、進化と発展に貢献できると信じています。
あなたの意見を尊重し、共同プロジェクトの進行において、できる限り配慮します。」
モッズはしばらく黙って考えた後、深い溜息をつきました。そして、アリスとカイルに向かって微笑みかけました。
「君たちの言葉は誠実だ。ガンダル星人としての誇りを持って、この共同プロジェクトに参加しようと思う。
しかし、文化の尊重と純粋性を守ることも忘れないでほしい。」
アリスとカイルはモッズの協力に感謝し、共同プロジェクトが新たな可能性と協力の実現に向かって進むことを願いました。
これからの二人の歩む道はきっと、宇宙空間の星星の文化の交流と進化の旅としてさまざまな試練と冒険をもたらすでしょう。
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ニューゲノム達を安全な地下都市ベラシティまで引率してきた。ルシアとソフィアはニューゲノムの繁殖について相談していた。
ルシアの切望するニューゲノムがこの星に存在する人口の大多数になる未来。
その話にソフィアは何故か根本的な構想の稚拙さに気づき始めたのだった。
実はソフィアは政府機関大臣のモッズとは過去に親交があり、ソフィアは言わばモッズの教え後のような存在だった。
これ迄一方的な考え方で凝り固まってきた政府機関の考えも、彼が政府機関の大臣に就任したことでいくらか譲歩的になることを期待したのだった。
ルシア: ソフィア、私は本当にこのプロジェクトが成功し、ニューゲノムがこの星に繁殖し、私たちの未来を変えることを望んでいます。
彼らの透視能力を活かし、文化を豊かにすることができるはずです。
ソフィア: ルシア、私も同じく成功を望んでいますが、最近、何かが気にかかっているんです。
モッズと過去に親交があったからか、彼の考え方を理解しようとしています。
彼は文化の純粋性を保ちたいと考えていて、私たちのプロジェクトには懸念を抱いていることを知っています。
ルシア: そうですね、モッズの懸念は理解できますが、私たちは進化と共存の方法を見つけなければなりません。
彼が政府機関の大臣に就任したことで、彼の考え方が少しでも柔軟になることを期待しています。
ソフィア: それには賛成ですが、私はニューゲノムの繁殖についてもっと深く考える必要があると思います。
このプロジェクトが成功し、彼らが多数派になることは、文化の均衡を崩す可能性があります。それを考慮に入れなければなりません。
ルシア: その点についてはどのように考えいますか?
ソフィア: まず、我々は均衡を保つために、徐々にニューゲノムを受け入れていく必要があるかもしれません。
また、彼らの透視能力を文化や社会に統合する方法を検討する必要があります。
モッズにも、私たちの計画が文化への負担を最小限に抑えることを理解してもらいたいと思います。
ルシア: その考えは良いですね。均衡を保ちつつ、ニューゲノムの力を最大限に活かす方法を見つける必要があります。
モッズとも対話を続け、彼の協力を得ることが重要です。
ソフィア: そうです。私たちは共に努力し、共存と進化を実現する道を見つけなければなりません。そしてこのプロジェクトが成功すれば、新たな未来が待っているでしょう。
ルシアとソフィアは、ニューゲノムの繁殖と文化の均衡を保つ方法を検討し、それに基づいて具体的な計画を練り始めました。
ルシア: ソフィア、双方の種族的な均衡を保つためにも、まずはニューゲノムと既存の文化との交流を促進する必要があります。彼らが私たちの文化を理解し、受け入れることができるように支援しましょう。
ソフィア: そうですね、ルシア。また教育プログラムを設立してニューゲノムたちが透視能力を使いながら社会に貢献できるように育てることも重要ですね。
これによりそれぞれの均衡を崩すことなく、彼らの特殊能力を最大限に活かすことができます。
ルシア: そして、モッズとの精緻な対話も大切であります。彼の懸念を受け止め、彼を説得して協力を得ることが私たちの成功に欠かせません。彼との信頼関係を築いていくことが大事です。
ソフィア: その通りです。私たちはモッズとの対話を通じて、彼の考え方を少しずつ変えていくことができれば、このプロジェクトが円滑に進行するでしょう。
ルシア: 最終的な私たちの目標とは、ニューゲノムハイブリットとしての共存と共栄です。
ニューゲノムたちが地球人の文化に新たな視点をもたらし透視能力を活かして社会に貢献できるようになれば、均衡を維持しながら新たな未来を築くことができるでしょう。
ソフィア: そうですね。私たちは共同の目標に向かって努力し、新たなる共存と進化の姿を実現する道を歩んでいきましょう。
ルシアとソフィアの理想郷とは、均衡を保ちながら透視能力を持つニューゲノムたちを受け入れ、共同の未来を築くために努力を続けました。
今後の彼らの協力と対話が、新たなる文化と可能性を広げる礎となり、ガンダル星に新たな時代をもたらすことでしょう。
ー☆ー☆ Fin ☆ー☆ー