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積極的なお誘い


「尋、少し買い物に付き合って欲しいんだけど。」


 私の隣を歩きながら來摩ちゃんは言った。


 古舘が來摩ちゃんとバーで遭遇し、中学の頃と変わらないような応酬で敗北した古舘が帰宅していった後も、私たちはしばらくバーに残っていた。

 現在はその帰りで、この場にいるのは私と來摩ちゃんと、商店街の路地裏から目を光らせている野良猫くらいだ。


「うん分かった。いつどこに行くつもりなの?」


「明日、隣町のショッピングモールよ。」


 隣町のショッピングモールと言えば、浮や古舘と一緒にグロホラー映画を見に行った場所だ。行ったこともある場所だし、そこならもはや何の問題もない。


「分かった。でも土曜日なら古舘とか浮とかも予定空いてると思うし、誘ってみてもいい?」


「あの二人?加萩さんはともかく、古舘さんはどうかしら……」


「気が進まない気持ちは分かるけどね。」


 確かに、古舘の気に入らないところを上げていけばキリがない。うるさいし、しつこいし、オマケに馴れ馴れしい。

 それでも私は、理屈も無しに古舘を呼びたいと思った。


「多分、友達だって私が思ってるからだと思う。……ちょっとだけ、一緒にいるのも悪くないなぁ、って思ってさ。」


「……ふぅん。」


 闇夜のどこかで猫が鳴く。夜風が吹きすさんで薄ら寒い空気を運んでいった。


「尋に任せるわ。」


「う、うん。ありがとう。」


「えぇ、楽しみにしているわ。」


 商店街を抜けて街灯のある道路へと出ると、三日月が空高く上り、その影を地上に落としていた。


 ◇◇◇


「……で、なんでこうなったのかしら?」


 來摩ちゃんは、私が集合場所である駅前に連れてきた今回のメンバーを見渡しながら、その笑顔を引きつらせた。


「ふ、古舘と浮はちょうど予定が入ってるってことだったから……」


 昨晩家に帰ってから二人に連絡を取ってみたものの、そのどちらからもNGが出るのは完全に予想外のことだった。


『最近ずっとおじいちゃんがお出かけしてるから、お留守番してないとダメなんだよぉ。』

 

『実は明日から原田にぃがウチ来んのよ。それで色々ゴタゴタしててさ。』


 原田にぃというのは確か、大阪旅行のときの天神祭で会った古舘母の秘書的な人だったか。いったい何しにこんなところまで来るんだろうか。

 そういうわけで古舘からは断られ、代わりに呼ぶように提案されたのが今ここにいるメンツだ。


「戸国、随分と積極的にお誘いしてくれたであるなぁ?」


「いや別にそんなですけど。」


「あァ!?俺ァ新しい楽譜本買いに行きてぇから着いて来てやっただけだからなァ!?」


「いや別に聞いてないですけど。」


「ほ、ホントにうちの二人がすみません……」


「いや別に良いですけど。」


 まぁ正確に言えばここにいる神谷、与損、ラテ

と、あと一人。

 予め集合するために決めていた時刻を超過し、千晃は未だに姿を見せていなかった。


「……んォ?千晃から連絡来たぜェ?」


「ほ、本当!?」


「えっとなァ……『寝坊しました。みんなには母の妹の子供の叔母の娘が峠だから午後から行く、って伝えといて』、だとよ。」


 か、カスだ……

 あとよくわかんない言い方してるけど母の妹の子供の叔母の娘って、それお前のことだろ……


「あ、あと『風香にはバレないように頼んだ、怒ると怖いから』だと。」


「ふふふふふふふふふ」


 うわ、すっごい怒ってる。

 黒い炎が体に立ち上っているかのようなオーラをまといながら、神谷さんはギリギリと頬を吊り上げていた。


「今度のクリスマスパーティー、ちぃちゃんの分だけ無しにしようね。」


「さ、流石にそれはやりすぎじゃァねぇですかィ……?」


「え??」


 高圧的な神谷さんに、与損さんもすっかり萎縮してしまった。視線を泳がせながら革ジャンのポッケに手を入れ口笛を吹いている。


「い、行きましょうか……」


「そうだね。昼から合流って言ってるし。」


 そうして私たちは微妙な空気のまま、鬱々と出発することになったのだった。


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