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久し振り


「……つまり、今まで人と距離を置いてたんは横道とそう約束しとったからで、急にキツい態度になったんはそのことを思い出したからってこと?」


「まぁ……大体そういう感じ。」


 昨日の再会のことを大まかに話し終えると、古舘はらしくもなく、乱暴な手つきで頭をガシガシと掻いた。


「古舘?」


「んや、なんでもあらへん……良かったな、もっかい会えて。」


「う、うん……」


 古舘は來摩ちゃんとあまり仲良くはなかったため、おそらくは面白くないのだろう。いつも事ある毎に口喧嘩していたような印象だ。

 しかしそれでも、私に気を遣って一応はこう言ってくれている。ありがたいことだ。


「そうだ、今日バー行かない?浮にも直接会って話しないといけないし。」


「そっかそっか、別に構へんで。」


「ありがと、ちょっと心強いかも。」


 なんだかんだ古舘は、いつも私の隣に立っていた。

 私が拒絶しようと、馬鹿にしようと、いつも笑って私の席にまでやって来て、下らない話題を振ってこようとしていた。

 ……いつからだろうか。そんな下らない時間が無いと寂しい、と感じてしまうようになったのは。


「……はよ席座り。もうすぐチャイム鳴るで。」


「あ、そうだね。じゃあそういうことで。」


 気づけば時計の長針は刻限に迫っており、私は踵を返して自分の座席へと戻った。

 千晃にも謝らなければならないのだが、彼女はよく大手を振って遅刻をしてくる。それも結構な頻度で。

 そのため朝は不在のことが多く、それについては二時間目あたりの小休憩までお預けとなることだろう。


 ◇◇◇


 ドアベルがチリンと、鳴った。



「いらっしゃ……え?」


「ども……」


 カウンターから浮が身を乗り出して私と目を合わせると、理解が追いつかないような顔で硬直する。

 それもそうだろう。浮にとっては訳も分からない理由で訳の分からない別れをした相手が、今になってノコノコと戻ってきたのだ。

 私は早速、ここに来た理由と謝罪を伝えようと口を開いた。

 

「あら、やっと来たのね。」


「え?く、來摩ちゃん?なんでここに……?」


 いつも私が座っていた席に、先客がいた。

 來摩ちゃんは黒い髪を耳にかけながらこちらを振り返って妖美な笑みを浮かべる。


「あれよあれ、田中さんに教えてもらったの。尋が行きつけにしてるお店があるって言うから。」


「そ、そうなんだ。」


「えぇ。初めこそ尋に会えるかもって下心で来てたんだけど、ここのバーメイドさんがなかなか良い子だったから、つい足を運ぶようになっちゃって。まぁとりあえず、ここ座りなさい。」


 私は言われるがままに來摩ちゃんの隣の席へと着く。


「横道……」


「あら古舘さん。久し振りね。」


「……ふっ。せやなぁ。」


 古舘と來摩ちゃんの間に、目に見えんばかりの物々しい雰囲気が現れる。私の隣にどっかりと座り込んだ古舘は、私を挟んで來摩ちゃんへ嫌悪感の入り交じった眼差しを無遠慮に向け続けた。


「長い間連絡も取れんかったけど、いったいどこおったんや?」


「保護施設にちょっとね。家庭環境が色々複雑だから。」


「それはまぁ、随分と大変そうやなぁ。」


 お互い笑ってない笑顔を突きつけあい、相手を威嚇するように「ふふふ」と笑い合う。

 間に挟まれる私はたまったもんじゃない。


「二人とも仲良しなんだねぇ。」


「そう見えるのか……」


 浮は相変わらず、人の悪意に疎いようだった。

 ……あ、てか早く言っとかなきゃ。


「そうだ浮。この前はその……ごめ――」


「良いよ!」


「早くない?」


 まだちゃんと言い切らない内に許してもらえてしまった。私は思わぬ肩透かしに気が抜けてしまう。


「えへへ、だって尋ちゃんが来てくれないと私寂しいし。むしろこっちからお願いして仲直りしたいなーって思ってたところだったしね!」


「い、いやいや!浮が謝ることなんて……」


「それに、來摩ちゃんから教えてもらってたから。」


 來摩ちゃんに?

 私は隣の席に座って見たこともないカクテルを飲んでいる來摩ちゃんに目を向けた。

 來摩ちゃんはその私の視線に気がつくと、グラスを置いてほおずえをついた。


「浮ちゃんから尋とのことを聞いたのよ。悩んでたみたいだから言ってあげたの。『尋は良い子だから、きっとその内自分から謝りに来るわよ』ってね。」


「そしたら本当に来てくれたから、私も嬉しかったんだぁー。」


「そ、そっか……」


 なんだか安心したような、気恥しいような……

 複雑な心境にやきもきしていると、反対側の隣にいる古舘はイライラした様子で私の服の袖をクイッと引っ張ってきた。


「なに?どうしたの古舘。」


「別に……話も終わったんやったらウチらもなんか頼もうや。」


 そう言うと古舘もほおずえを着いて面白くなさそうにしつつ、「いつもの頼むわ」と浮に生意気な注文をした。


「バージンメアリーで合ってるよね?」


「合うてる合うてる。腕により掛けて作ってなー。」


「オッケー!任せて!」


 明るく心強い返事を返した浮は早速シェーカーを出して、しばらく考えた後にそれをしまって、そしてまた取り出した。


「久し振りに来てくれるの、嬉しかったけど緊張しちゃって……どうやって作るんだったっけ……?」


「……」


 大丈夫だろうか、このバーメイド……

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