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我はメイドであるぞ!(別視点あり)

突然の新キャラ登場です


「ふはははは!待たせたな!これが注文承った『メイドさんの推しリンゴタルト(ピーチ風味)』だ!」


「ちょいとラテ、もう少し言葉遣いは丁寧にしなよ。」



 アカネに口うるさく戒められた我は、不満をあらわにプクリと頬を膨らませた。



「そんなあざとい顔してもダメだよ。アタイたちはメイドなんだから、ご主人様にはちゃんと敬語を使わないと。」


「むぅ……別に良いであろうが。のぅ?」


「はいぃ……」


「我っ子魔王口調娘最高……」



 ふふん、そうであろうそうであろう。

 なんせ我は秋葉原本店でも人気トップを数ヶ月間維持したキングオブメイドであるからな!向かうところは敵無しよ!



「そういう問題じゃないよ。ご主人様には敬意を払う、当然のことじゃないかい。」


「満足する接客があってこその敬意よ。ステレオタイプのメイド像では満足なぞさせれぬであろう?」


「なら毎回頼まれた料理をつまみ食いすることも、型破りなメイドには必須の接客って訳かい?」


「なっ、何故それを!!」



 ば、バレていたのか!我の秘め事をこうも容易く暴くとは……こやつ、なかなか出来るな!



「口の横にタルトの欠片、付いてるよ。」


「あっ……」



 手で触れると確かに欠片が一つ、口元にくっついている。ラッキーである!食べきったと思ってたのに!



「んー、ピーチタルトはやはり美味であるな。」


「リンゴタルトなのにピーチ風味とは、いったいどういうことなのかねぇ……」


「メイドさんの推しリンゴタルトであろう?なら普通にメイドさんのおし――」


「ラテさんアカネさーん、一番テーブルお願いしまーす!」



 む、呼ばれたからには行かねばなるまいな。



「ふはははは!愛情は省略させてもらうぞ!さらば!」


「それ一番大事なところじゃないかい!?」



 我はこの店の人気を担うトップメイド!チンタラしている暇など露ほども無いのだ!



「さぁさぁ!我が来てやったぞ!主よ、どのような品がお望みか?」


「おーおー、こりゃまた威勢が良いのが来たな。」


「エスプレッソコーヒーをお願いします。」



 ……な、なんじゃこいつら。いい歳こいたオッサン二人が何故このような場所に?



「なぁ、やっぱ微妙な顔してんぜ。」


「仕方ないだろう。雰囲気が明らかに場違いだ。」


「いや自覚あるのであるか?」


「こらラテ。」



 アカネに肘で小突かれ、我は咳払いをして誤魔化す。

 兎にも角にも、結局は注文をとって裏に伝えれば良いだけよ。今まで対応してきた客層とは全然違うから下手な百合営業は避けた方が良いか。



「『メイドさん抽出のコーヒー』一杯で良いかい?」


「なぁなんか名前ちょっと卑猥な気が済んだけど。」


「そうか?別に普通だと思うが。」


「おいおい仮にも俺教職員だぜ?こんなん生徒に見られたら死ぬんだけど。」



 教職員がなんちゅーところに来ているのだ。生徒に見られて鉄槌を下されてしまえ。



「あー、じゃあ俺はオムラ……いやこれ名前マジでヤバいな。これだ、この……フライドポテトくれ。」


「『ホクホクフライドポテト』一つで良いか?」


「それでいい!むしろそれ以外がマズい!」


「あいわかった!注文はこれで終わりか?」



 歳も歳だし、そこまで多くの物は胃がもたれて食えないであろう。ここらで打ち止めか。

 我はそう思って二人に伺った。



「あとこれ、スマイルくれ。」


「……」



 こいつ……見た目は歳食ったジジイなのにノリが完全に小中学生なのだ……



「あいよ!ほら、ラテも。」


「わ、分かってるのだ!ほれ、受け取れぃ!」



 見せる相手が意外であるとはいえ、我はこの道のプロとして誇りを持っておる。どのような笑顔が魅力的に見えるかなど、普段から計算しつくしておるのだ。これだけは誰にも負けたりなぞせん!

 どうであるか!きっと今頃二人もイチコロに……



「……」


「おぉ、可愛いー。」



 は、反応が微妙!!我のスマイルが通じていないとでもいうのか!?



「んじゃ、注文は以上で。頼んだぞー。」


「あいよ、ご主人様も寛いでってくれよ?」



 渾身の笑顔が効かなかったことに茫然自失の我は、快活に笑うアカネに担がれる。

 な、なんたる屈辱か……!この恨み、晴らさでおくべきか!



「あ、そうそう。このお店に戸国って子と加萩って子いる?」


「ん?あー、確か単発でそんな子いた気がするねぇ。それがどうかしたのかい?」



 ふと思い出したかのように、教職員の方のジジイがアカネに質問をする。察するにこやつらは、店の者との知り合いということか?



「料理はその子たちに持って来させてよ。片方は俺の教え子で、もう片方はこいつの孫なんだよねー。」


「ま、孫ぉ!?孫ってアンタ……」


「はっはっは、私はどうやら祖父馬鹿とでも言うらしい。」



 貫禄ある笑いで、店の者とこやつらとの接点が明かされる。

 なるほど、目的は身内との接触か。



「そういうことならば我の笑顔が負けても仕方ないな!アカネ、戻るぞー!」


「意識戻ったんなら自分で歩きな。ご主人様のご要望、確かに承ったよ!それじゃあ少しの間待ってなね。」



 こうして我らは裏へと戻って、注文と指名を伝えるのだった。



 ◇◇◇


「戸国さん加萩さーん!一番テーブルにこれお願ーい!」


「はーい!ほら行こ尋ちゃん!」



 浮は初めての体験を心から楽しんでいるようで、公演を前にした犬のように目を輝かせていた。対する私はと言うと……



「ま、待って……あと十分……」


「もー……大丈夫?」



 立ち仕事というのは世間で思われているよりも何倍も体力がいる。少なくとも私はこの仕事を舐めていた、と言うより他はないだろう。

 まさか、こんな早く体が悲鳴をあげるだなんて……



「尋ちゃんって、結構体力無いよね。」


「じ、自覚がある分心に刺さる……」



 それにしたって浮の体力は異常だとも思うが。



「他の人たちは凄いな……見て、あそこに人なんか朝からずっとあんな調子。」



 裏の扉から覗き見える景色に、金髪の少女と銀髪の少女がそれぞれ仲良さげに働いているところが見える。



「確かラテさんとアカネさん、だったよね。ラテさんはこの道で結構有名な人だって厨房の人から聞いたよ。」


「メイドカフェに道とかあるの……?」


「でもアカネさんは私たちと同じ単発バイトで入ったらしった新人なんだって。それであの客捌き……あれは是非ともうちの店にも欲しい人材だね。」


「給金不足で雇えないけどね。」


「それはそう……」



 お互い財政は厳しい状況なのだ。ここは一念発起して頑張らねば。



「よっと……じゃあさすがに行こっか。」


「だね!ここからお昼休憩まで突っ走るよー!」


「え、それはちょっと聞いてな――」



 私が言い切る前に、浮は私の腕を掴んで表へと引っ張り向かった。

 まっ、せめてもう少し休憩を……



「……あれ?おじいちゃんに中出さん?」


「え?」



 グルグルする視界を整えて顔を上げると、そこには確かに二人の顔が並んでいる。間違いなく、バーテンダーさんと中出さんだ。



「よぉ戸国ぃ。随分可愛い格好してんじゃねぇの。」


「もしもし警察ですか?」


「客!俺客!」


「自分のさっきのセリフ、もう一回聞き返してみたらどうです?」


「……確かに犯罪者だわ俺!」


「自首するなら早い方が良いですよ。」


「申し訳ありませんでした……」



 調子づいた先生を適当に成敗しつつ、浮は持っていた料理をテーブルに並べていた。



「えーっと……コーヒーとポテトですっ!」


「先生こんな名前のコーヒー頼んで恥ずかしくないんですか?」


「なんで確定なんだよ。俺が頼んだのはポテトだっつーの。」


「私がコーヒーですね。ありがとうございます。」


「……あ、いや。コーヒーブラックで飲めるなんて、さすがですね。」


「対応違くない?」


「お黙りくださいご主人様。」


「やめて!?生徒にご主人様って言わせるとかホントに危ういから!」



 こういうとこだけ生真面目なのなんなんだ……



「浮、愛情を込めてくれるかな。」


「美味しくなぁれっ!萌え萌えきゅんっ!」


「……美味しい。」



 なんか、温かい団欒に見えなくもない……けど。



「戸国、愛情を込めてくれるかな。」


「もしもし教育委員会ですか?」


「ダメダメそれガチな方!」



 全く……なんでこんなふざけたこの人が教師なんて続けれてるんだ……



「そうそう、これを貰ってくれ。戸国さんと二人で食べるんだよ。」


「え、差し入れ?いいの?」


「あぁ。仕事、頑張りなさい。」



 浮の頭にその手を乗せ、眩しそうに目を細めるバーテンダーさん。その光景は間違いなく祖父と孫のそれだった。



「……うん!頑張る!ありがとっ!」



 浮は元気よく頷くと、とびきりの笑顔でお礼を言った。それを二人も微笑みながら受け取る。



「やっぱ笑顔で浮ちゃんを上回るやつはいねぇなぁ。なぁ言さんよ。」


「……自慢の孫娘だからな。」



 そんな会話を交わしているのを耳で拾いながら、私たちは昼休憩までの残りの時間を休憩無しで突っ走るのだった。



 ◇◇◇


「……あ、アリガトウゴザイマス。」


「……」



 我が萌えキュンしたときの反応と言えば、大抵が「可愛いー!」だの「ラテ様ー!」だのと黄色い声が大半だったのであるが、事ここにおいてそれ以外の反応が返ってくるなど予想外のことであった。



「……いやまぁ可愛いんですけど。なんか、計算された笑顔みたいで裏見えちゃってます。」


「え!?」



 な、な、なんということであるか!我のこのパーフェクトスマイルを不完全だと申すのか!?おのれ二四番テーブルの分際で生意気なっ……



「こ、この笑顔ではなく、どのような笑顔が完全だというのだ!!申せ!申してみよ!」


「ちょ、肩揺すらないで、今アーマー運んだばっかで疲れて……」


「ちょいと落ち着きなよラテ。」


「フーッ……フーッ……」



 認めぬ……我は認めぬぞ!我以上の笑顔を生む人の子の存在など……!



「あれです、あのー……あ、加萩浮っていう子の笑顔が可愛いですよ。」


「加萩?……加萩浮!?」


「あれ、ご存知なんですか。まぁここで働いてますしね。どうです?裏表がなくて純粋な子でしょう?何よりあの子はよく笑うんですけど、そのときの無垢な表情と言ったらもう可愛いくって可愛くって……!」



 そういえばさっきのジジイ客も、我の笑顔にうんともすんとも言わなかったであるな。それはひとえに年代の違いによる物だと考えておったが、どうやらそれだけとは言えないらしい。



「ふふふ、そういうことならば……」



 良かろう。我直々に、その小娘に教えてやろうではないか。我がトップのメイドであること、そして……



「――我の笑顔が、一番可愛いっ!」



 我こそが、最強のメイドであることをっ!

面白ければぜひ


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